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私はこう考える【天皇制について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/01/13 読売新聞朝刊
[天皇をみつめる世界](6)ソ連 慎重な「崩御」報道(連載)
 
 「新天皇の美点は言いつくせないほど多い」−−ソ連政府機関紙「イズベスチヤ」(七日付)は、東京特派員電で「平成」時代の天皇に即位されたばかりの明仁殿下の「美点」を並べ上げた。
 新天皇は「日本の伝統的な教育とともにアメリカ人の女性教師エリザベス・バイニング夫人にも教えを受け、テニスコートで知り合った実業家の子女と結婚された」と紹介したあと、二年前には車でご旅行中に「運転手に交通法規をきちんと守って走ること、特に赤信号では必ず止まることを申し渡された」とのエピソードまで披露した。
◆日本世論の刺激避ける◆
 こうした新天皇への好感と並んで目立つのは、昭和天皇崩御への慎重な対応ぶりだ。
 「イズベスチヤ」紙の記事は、一昨年以来のご闘病の経過や元号問題を詳しく伝えながら、太平洋戦争については、六十二年に及ぶ昭和の「波乱の時代」の説明の中でサラリと触れたに過ぎない。党機関紙「プラウダ」をはじめ他のマスコミは、崩御の事実を短く伝えただけで、天皇とその時代に対する評価やコメントはほとんど加えなかった。
 その背景には、今年春の宇野外相の訪ソを控え、また太平洋戦争の結果として生じた北方領土問題が日ソ関係進展への最大の懸案となっている中で、ソ連が日本の世論、国民感情をいたずらに刺激したくないと、神経を使っていることがうかがえる。
 「イズベスチヤ」紙東京支局長をつとめたユーリー・バンドゥーラ「モスクワ・ニュース」紙副編集長は、「天皇が日本国民の中でどんな位置を占めているのかは、われわれには結論の出せない問題だ。日本の国内でも論争にケリがついていないのだから、外の人間が言うのは差し控えた方がいいだろう」と、話しにくそうに言う。また、科学アカデミー東洋学研究所のサルキーソフ日本部長も、「デリケートな問題なので、よく知らない人がコメントすると、日ソ関係への影響ばかりでなく、いろいろな問題が起こるということだろう。それを避けたいというのが、われわれの一般的な考えだ」とソ連マスコミの“沈黙”の理由を推察した後、「ただ、日本専門家としては、新しい天皇のもとで、日本の情勢、政治がどう変わるかに大いに興味を持っている」とだけ付け加えた。
 その新天皇時代の日ソ関係を占ううえで、当面の注目の的は、二月の「大喪の礼」にソ連からだれが出席するかである。
 九日、モスクワの日本大使公邸に弔問記帳に訪れたイーゴリ・ロガチョフ外務次官は、「十分高い地位にある者が行くことになる。(米国からブッシュ新大統領が出席することも)われわれは考慮する」と語った。日本問題の専門家の間では、ゴルバチョフ党書記長の出席も一つの選択肢として検討されたという。
 しかし、サルキーソフ日本部長は、「私個人の考えでは、書記長が行く可能性があるとは思えない。一つの目安となるのは、中国からだれが出席するかだろう」としながらも、「昨年十二月のシェワルナゼ外相の訪日後、ソ連外交の中で日本の占める位置は高くなっており、学者として言えば、大喪の礼にもなるべく高いポストの指導者が行く方がよいと思う」と言う。
 ゴルバチョフ政権下では、アルメニア大地震のため延期された昨年十二月の書記長訪英では、エリザベス女王との会談が予定されていたなど、王室・皇室に対しても従来と違う現実的アプローチが目立っている。
 それは、「階級的観点」を外交の第一義から引き降ろした「新思考外交」の一つの表れでもある。ただその現実主義には一面で、「実質優先、儀礼軽視」の冷淡な顔があるのも事実で、大使公邸の弔問記帳には慣例の枠内で、輪番の最高会議幹部会副議長が差し向けられたに過ぎなかった。
 「新思考」と「儀礼軽視」の間でどんなバランスが図られるのか−−「大喪の礼」への代表団の顔ぶれは、「ソ連外交に占める日本の地位」をはっきり表す指標ともなるだろう。
(モスクワ・布施特派員)
 
 
 
 
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