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4 計測項目
(1)散布速度
(2)散布圧力
(3)散布時間
(4)散布水量
(5)散布幅
(6)各バット内に張った水の水面の挙動・変位及びオーバーフローの有無
(7)気象(天候、風向、風速、温度、湿度)
 
5 試験結果
 実験条件及び実験結果を表IV-3.2に、回転翼機の散水状況等を写真IV-3.1112に示す。
(1)散布速度2ノット及び5ノットの場合、回転翼機が調査ラインを通過直後に地上に強い風が吹き、調査ライン上に設置した調査紙が4枚飛ばされ、バットの中の水が激しく吹きこぼれ、ダウンウオッシュが観察された。
(2)散布速度10ノットの場合、高度9m及び14mではバットの水の挙動、水粒子の落下及びダウンウオッシュによる風の到達が同時にあった。高度19mでは水粒子の落下後にダウンウオッシュによる風の到達があった。
(3)散布速度20ノット以上の場合、回転翼機が調査ラインを通過しても各バット内に張った水の挙動及びオーバーフローはなく、ダウンウオッシュは観察されなかった。
(4)機体前面ガラスへの散布水粒子の付着は、パイロットの報告によればいずれの飛行条件とも認められなかった。
(5)飛行番号8-2(19m−20ノット)、9(14m−30ノット)及び10-1(9m−30ノット)の散布水粒子は、北西の風により滑走路の左側に流された。
(6)(5)項の飛行番号を除く各飛行条件では、滑走路センターラインの左右10mに設置したバットに水粒子が落下したことが観察され、散布範囲は全幅20m以上であることが分かった。
 
6 まとめ
(1)散布速度5ノット以下の場合、上空から散布された水滴が地面のバットに到達する前に、バットの水がダウンウオッシュにより激しくかく乱された。
(2)散布速度10ノットの場合、高度9m及び14mではバットへの水粒子の落下と同時にダウンウオッシュがあった。高度19mでは水粒子の落下後にダウンウオッシュがあった。
 このため、散布速度10ノット以下で油分散剤を海上流出油に散布した場合、海上の油層に油分散剤の粒子が到達する前に油層が激しくかく乱され、油層が流されてしまうことから、散布速度10ノット以下では油分散剤を散布することができないことが分かった。
(3)飛行番号8-2(19m−20ノット)、9(14m−30ノット)、10-1(9m−30ノット)の飛行条件においては、滑走路センターラインの右側10m(風上側)に設置したバットの中の水への水滴の落下は確認できなかった。これは回転翼機が北北東の方向(滑走路センターライン)に飛行していたのに対して、右斜め前方からの風の影響を受け、水滴が左側(風下側)に流されたことによる。
 
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※1 他の実験条件の実験結果から、ダウンウオッシュが有ることが判明し、実験を省略した。
※2 調査ラインの前後50m(距離100m)の間の飛行時間
※3 調査ラインの前後50m(距離100m)の間にノズルから散布した水量(陸上試験の計測値から計算)
※4 調査ライン上に設置したバット及び調査紙への水粒子の落下状況により計測
※5 回転翼機が調査ラインを通過した際のバットの水のオーバーフローの有無
※6 回転翼機が調査ラインを通過した後のバットの挙動・水位の減少量
 
IV-3-2-2 粒子径及び散布幅の調査(散布速度−高度の関係)
 ダウンウオッシュの調査結果、海上流出油に散布する際の散布速度は、10ノット以下で油分散剤を散布するのが不適当であることが分かった。
 このことにより、ダウンウオッシュが発生しない実験条件を中心にノズル数を変化させて散布実験を行い、粒子径及び散布幅の調査を行うこととした。
 
1 試験条件
(1)試験場所 笠岡地区農道離着陸場
(2)天候 曇り時々雨
(3)風向・風速 北東〜東北東、風速最大3.6m/s
(4)外気温 15〜16℃
(5)湿度 87〜89%
 
2 使用資機材
 使用資機材はIV-3-2-1のダウンウオッシュの影響調査に用いたものと同じである。
 
3 試験要領
(1)調査ラインは図IV-3.6に示す滑走路上に設置し、調査ライン上に調査紙及びバットを設置した。
 なお、調査紙は自然風及び回転翼機からの風で移動を防止するため、アクリル板に固定し、調査ライン上に1m間隔で21枚置いた。
(2)バットは滑走路センターライン上及びセンターラインから飛行方向左側(風下側)10mの2箇所に設置した。
 当日の風向・風速の観測結果から、滑走路センターラインから飛行方向右側10mの位置に設置していたバットを風下側である飛行方向左側15mの位置に配置換えした。調査紙及びバットの配置を図IV-3.8に示す。
(3)各バットには上部まで水を張った。
(4)表IV-3.3に示した各実験条件に基づき、回転翼機は滑走路のセンターライン上を飛行して水を散布した。
(5)水の散布は調査ラインの50m手前の位置で開始し、調査ラインから50m通過した位置で終了した。
(6)粒径と散布幅の計測は、(1)で述べた調査ライン上で実施した。
(7)計測は回転翼機が調査ラインに到達した時点から水粒子がバット及び調査紙へ落下するまでの時間を計測した。
(8)計測は回転翼航空機が調査ラインの上空を通過した時に各バット内に張った水のオーバーフローの有無及び水面の挙動・変位を目視で観測するとともに、滑走路センターラインの左側15mに設置したバットの水粒子の落下状況をビデオ撮影した。
(9)計測員は散布終了後、調査紙の回収を行った。
 
図IV-3.8 調査紙及びバットの配置図(当初)
 
4 計測項目
(1)散布速度
(2)散布圧力
(3)散布時間
(4)散布水量
(5)散布幅
(6)水粒子到達時間(回転翼機が調査ラインに到達した時点から水粒子がバット及び調査紙へ落下するまでの時間)
(7)各バット内に張った水の水面の挙動・変位及びオーバーフローの有無
(8)気象(天候、風向、風速、温度、湿度)
 
5 試験結果
 試験結果を表IV-3.3に示す。
(1)空中散布実験は、飛行番号7の実施時期から小雨が降り始めたため、調査紙を地面に置く方法から調査ライン上に7名の計測員が調査紙を手で持ち、回転翼機が上空を通過した時に上方に向けて水粒子を受ける方法に変更した。
 変更した調査紙の配置図を図IV-3.9に、配置の状況を写真IV-3.16に示す。小雨による変更に伴い、1回あたりの調査紙の使用枚数を21枚から14枚とした。
(2)高度14m、速度10ノットの条件でノズル数(飛行番号1、7及び13)を変えた実験のうち、2回がバットの水に水粒子が落下する前にダウンウオッシュによる風の到達があり、1回がバットへの水粒子の落下とダウンウオッシュによる風の到達が同時にあった。また、調査ライン上に設置した調査紙が4枚飛ばされた。このことにより、高度14m、速度10ノットは図IV-3.10に示すように散布不可能範囲である。
(3)高度9m、速度20ノットの場合、ノズル数に関係なくバットへの水粒子の落下後にダウンウオッシュによる風の到達が見られた。
(4)高度19m、速度10ノットの場合、ダウンウオッシュがなく散布可能範囲内にある。
(5)滑走路左(風下側)15mに設置したバットに水粒子が落下したことが観察されたことから、水粒子の落下範囲は全幅25m以上あることが分かった。
 
図IV-3.9 調査紙及びバットの配置図(変更後)
 
写真IV-3.16 飛行番号7以降の調査紙の配置の状況







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