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6 まとめ
 空中散布実験の結果より得た散布速度と散布高度との関係を図IV-3.10に示す。同図に用いた○、△、×の記号は次の定義による。
 
○印:回転翼機がバットの上空を通過後、バット水面に変化がなく、オーバーフローがないケースをダウンウオッシュなしとした。
△印:回転翼機がバットの上空を通過した際、バットにダウンウオッシュの風の到達よりも水粒子の落下が先にあった場合とした。
×印:回転翼機がバットの上空を通過した際、バットに水粒子の落下よりもダウンウオッシュによる風の到達が先にあった場合又は水粒子の落下とダウンウオッシュによる風の到達が同時にあった場合をダウンウオッシュありとした。
 
・ダウンウオッシュ影響調査において、14m−10ノットの散布条件は、バットへの水粒子の付着とダウンウオッシュによる風の到達が同時である結果となったが、今回の空中散布実験において14m−10ノットの散布条件をノズル数を変えて3回行ったところ、そのうち2回がバットの水に対して水粒子が落下するよりも先にダウンウオッシュによる風の到達があった。
 このため、14m−10ノットの散布条件は、ダウンウオッシュによる影響が大きいため、油分散剤の散布に用いることはできないことが分かった。
・ダウンウオッシュの影響を受けずに海上流出油に油分散剤を散布するためには、図IV-3.10の斜線で示した範囲の高度と速度の組合せで油分散剤を散布することとなる。
・図IV-3.10で△印となっている散布条件であっても、対象油の油層厚が厚かったり、油の粘度が高い場合は、散布された油分散剤の粒子が油層に浸透する十分な時間がないため、分散効果はかなり低下すると思われる。
・散布高度が高すぎると油分散剤の粒子の落下までに時間がかかり、その間に風等の外力により油分散剤が空中で拡散し、海上の流出油面に到達しないことが予想される。このため、散布高度はできるだけ低くする必要があり、図IV-3.10に示す20ノットから30ノットの範囲を実用的な散布速度とするのが適当である。
 
図IV-3.10 散布高度−散布速度とダウンウオッシュの関係
 
(拡大画面:36KB)
※1 調査ラインの前後50m(距離100m)の間の飛行時間
※2 調査ラインの前後50m(距離100m)の間にノズルから散布した水量(陸上試験の結果から計算)
※3 左側については左15mの水バットへの水粒子の落下状況により、右側については調査紙への水粒子の落下状況により計測
※4 回転翼機が調査ラインに到達した時点から水粒子がバット及び調査紙へ落下するまでの時間
※5 回転翼機が調査ラインを通過した際のバットの水のオーバーフローの有無
※6 回転翼機が調査ラインを通過した後のバットの挙動・水位の減少量
 
IV-3-2-3 調査紙の解析結果
 各試験で記録した調査紙は、社団法人農林水産航空協会、技術センターで水粒子の平均粒子径及び痕跡の分布をCCDカラービデオカメラにより撮影を行った後、画像解析プロセッサーに入力して計測及び解析が行われた。また、小雨の影響を受けた調査紙については、画像処理時に補正を行った。
 調査紙への水粒子の付着状況の一例を写真IV-3.17、18に、調査紙の解析等の状況を写真IV-3.19〜22に示す。
 
1 平均粒子径(実測値)の計測
 水粒子の平均粒子径は、調査紙に記録された水粒子の痕跡から測定した被覆面積率及び単位面積あたりの痕跡数の値から計算した。
 ここで、それぞれの用語の定義を次に示す。
 
・被覆面積率S: 調査紙の測定対象面積に占める散布粒子の痕跡の総面積を百分率で表したもの
・痕跡数n: 調査紙1cm2当たりの痕跡数(粒子数)
 
 平均粒子径をRとすると、Rは被覆面積率を痕跡数で割って求めた面積を円の面積とみなした時の直径であることから、次のような関係となる。
 各調査紙の被覆面積率、単位面積あたりの痕跡数及び平均粒子径(実測値)の計測結果を表IV-3.4a〜eに示す。
 
写真IV-3.19 CCDカメラによる撮影
 
写真IV-3.20 画像プロセッサーへの入力
 
写真IV-3.21 調査紙原画像
 
写真IV-3.22 画像補正後の状況







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