IV-3 回転翼機による散布実験
昨年度、航空機用農薬散布装置を使用してS-7の屋内散布実験を行った結果、S-7を空中散布するノズルとして、フラットスプレータイプのノズルが適していることが分かった。
今年度は、このフラットスプレータイプノズルを使用して陸上試験によりノズル数と散布圧力、散布流量の調査を行い、この結果に基づいて回転翼機により空中散布実験を行い、最も効果的、効率的(散布幅、粒径等)な散布条件(高度、速度、ノズル数等)を調査することとした。
なお、油分散剤はアスファルトに溶剤による溶解現象が発生し悪影響を及ぼすことが分かり、公共施設である滑走路面に散布することは適当ではないことから、散布実験は水を使用することとした。
IV-3-1 陸上におけるノズル−圧力−流量試験
陸上試験は回転翼機に農薬散布装置及び開発したフラットスプレーノズルを装着して、散布装置の起動スイッチを入としてから水散布が定常状態となるまでの所用時間、最大散布圧力、ノズル流量を計測し、ノズル−圧力−流量の関係を求めた。
なお、陸上試験は阪急航空株式会社の八尾運航所内で実施して空中水散布実験の水散布条件を決定した。
1 陸上におけるノズル−圧力−流量の試験方法
(1)散布定常状態時間の調査
1)散布装置のタンクを満水にし、散布管装置の両舷にノズルを図IV-3.3に示す位置に4個取り付けた。
2)散布装置の起動スイッチを入とした後、全てのノズルから水が均一に散布する状態を定常状態として、その時間を計測した。
なお、試験は3回行い、その平均値を散布定常状態の時間とした。
3)ノズル数をそれぞれ8、16個に増やして上記と同様の試験を行い、定常状態になる時間を調査した。(図IV-3.4及び3.5 参照)
(2)散布圧力の計測
1)散布装置のタンクを満水にし、散布管装置の両舷にノズルをそれぞれ4個、8個、16個取付けた。
2)散布圧力計測は、散布管装置のNo.11の位置に圧力計を取付けた。
3)散布装置の起動スイッチを入として、ノズルからの水散布が定常状態となった時点の散布圧力を計測した。散布圧力試験は3回行い、その平均値を散布圧力とした。
(3)ノズル流量の計測
1)散布装置のタンクを満水にし、散布管装置の両舷にノズルをそれぞれ4個、8個、16個取付けた。
2)散布装置の起動スイッチを入とし、ノズルからの水散布が定常状態となった時点で任意のノズル1個の直下に計量容器を置き、ノズルからの散布水を受けた。
3)計量容器は60秒後にノズル直下から取り除き、計量容器に溜まった水量を計測した。流量試験は3回行い、その平均値をノズルの水流量とした。
ノズル流量の計測状況を写真IV-3.1に示す。
写真IV-3.1 ノズル流量の計測状況
2 試験結果
ノズル−圧力−流量の試験結果を、表IV-3.1に示す。
表IV-3.1 ノズル−圧力−流量の試験結果
試験番号 |
ノズル数 |
定常状態と なる所要時間 (sec) |
最大散布圧力 (Mpa) |
1個当たりノズル流量 (l/min) |
ノズル数による全流量 (l/min) |
1 |
4 |
0.1 |
0.26 |
7.0 |
48.0 |
2 |
4 |
0.1 |
0.26 |
7.0 |
48.0 |
3 |
4 |
0.1 |
0.26 |
7.1 |
48.0 |
4 |
8 |
0.1 |
0.26 |
6.8 |
54.4 |
5 |
8 |
0.1 |
0.26 |
6.8 |
54.4 |
6 |
8 |
0.1 |
0.26 |
6.8 |
54.4 |
7 |
16 |
0.1 |
0.26 |
6.5 |
104.0 |
8 |
16 |
0.1 |
0.26 |
6.5 |
104.0 |
9 |
16 |
0.1 |
0.26 |
6.5 |
104.0 |
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3 考察
(1)水散布が定常状態となるまでの所用時間は、計測上は散布装置の起動スイッチを入としてから0.1秒であった。実際はスイッチ入とほぼ同時のタイミングでノズルから水が散布され、ノズル個数が多くなってもタイムラグはほとんどなかった。
(2)散布圧力については、ノズル数が増加しても一定であった。
(3)ノズル流量については、ノズル数が増加するにつれて1個あたりの流量は減少する傾向が見られた。
IV-3-2 空中散布実験
空中散布実験は、岡山県笠岡市の笠岡地区農道離着陸場でダウンウオッシュの影響及び水散布による粒子径及び散布幅(散布速度−散布高度)について実機実験を2回にわたって実施した。
1 実験場所
笠岡地区農道離着陸場
滑走路 幅25m×長さ800m
着陸帯 幅17.5m×長さ920m
エプロン 幅40m×長さ50m
誘導路 幅9.0m×長さ37.5m
縦断勾配 1.025%〜0.1%
横断勾配 1.5%〜2.5%
舗装その他(アスファルト4cm、砕石10cm、クラッシャーラン10cm)
標識等一式
管理棟 鉄骨プレハブ造り一部2階建
笠岡地区農道離着陸場全体図を図IV-3.1に、滑走路等の状況を写真IV-3.2, 3に示す。
図IV-3.1 笠岡地区農道離着陸場全体図
写真IV-3.2 笠岡地区農道離着陸場正門
写真IV-3.3 滑走路
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