日本財団 図書館


IV 回転翼機による油分散剤散布に関する調査研究
IV-1 概要
 平成14年度「自己撹拌型油分散剤の効果的な使用方法及び散布装置に関する調査研究」事業における、航空機用自己撹拌型油分散剤散布装置に関する調査研究は、航空機用農薬散布装置(Simplex Model 5100)を使用して自己撹拌型油分散剤(S-7)の屋内基礎散布実験を行った。その結果、S-7を空中散布するノズルとしてフラットスプレータイプノズルが適していること、また、農薬散布装置は分散剤の散布装置として十分に利用できることが分かった。
 今年度は、野外において回転翼機による空中散布実験を行い、昨年度実施した屋内基礎散布実験の結果の検証を行うとともに、気象、散布速度、飛行速度、散布圧力、散布ノズル数、散布流量等に必要となる散布基礎データを得るとともに、散布幅、散布粒径等を調査することとした。
 野外実験は小型の飛行場を使用するため、滑走路面に対するS-7に使用されている溶剤(石油系)の影響について調査した。滑走路面の調査は、海上災害防止センター防災訓練所の敷地内のアスファルト面及びコンクリート面にS-7を粒状散布し、痕跡、溶解等の状況について調査を行った。
IV-2 自己撹拌型油分散剤(S-7)の散布実験に関する調査
IV-2-1 S-7の痕跡調査
1 環境条件
(1)実験場所 海上災害防止センター防災訓練所(横須賀)
(2)天候 曇のち晴
(3)風向・風速 北北東の風 2m/s
(4)外気温 25.8℃
2 試験方法と調査内容
 S-7を噴霧器を使用してコンクリート面及びアスファルト面に粒状に散布し、散布後の蒸発の状況、S-7の消滅までに要する時間、コンクリート面の浸透等の痕跡について目視により観測した。
3 使用資機材
・自己撹拌型油分散剤(S-7)
・噴霧器(手動)
4 実験結果
(1)コンクリート面
 散布したS-7は時間の経過とともに一部蒸発するが、コンクリート面への痕跡は次第に濃くなり、1時間経過後も痕跡がはっきりと残っているのが観測された。これは、多孔質でできたコンクリート内部にS-7が浸透し容易に蒸発しないことが要因であると思われる。
 散布直後と散布1時間後のコンクリート面の状況を写真IV-2.1abに示す。
 散布直後は未だコンクリートの多孔質部に浸透していないが、1時間後は上述したようにコンクリートの多孔質内にS-7が浸透し、コンクリート面が濃い色になっている。
(2)アスファルト面
 散布したS-7の痕跡はコンクリート面と同様に時間の経過とともに次第に濃くなっていく。これは、S-7の溶剤がアスファルトに浸透し、アスファルトの表面が若干溶解したことが要因である。
 散布直後と散布1時間後のアスファルト面の状況を写真IV-2.2abに示す。
 上述したように痕跡は、散布1時間後の方が濃くなっているのが分かる。
5 まとめ
 S-7の粒状散布によるコンクリート面及びアスファルト面の痕跡調査結果、数時間経過後もコンクリート面及びアスファルト面に痕跡が残っていた。このことは上述したようにS-7の溶剤による影響が大きいことが分かった。
 以上のことから、陸上における飛行場の滑走路面にS-7を散布することは痕跡を残したり、アスファルトを溶解し滑走路面を損傷することが分かり、適当ではないことが分かった。
 このことから、回転翼機による散布試験は水を使用することとした。
 
写真IV-2.1a コンクリート面散布直後
 
写真IV-2.2a アスファルト面散布直後
 
写真IV-2.1b コンクリート面散布1時間後
 
写真IV-2.2b アスファルト面散布1時間後







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION