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海洋白書 2004創刊号 日本の動き 世界の動き

 事業名 海洋シンクタンク事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


3 最近の新たな動き
 そのような中で漁業分野では, 2001年(平成13年)に水産資源の持続的利用の確保等を目的とする水産基本法が制定された。また, 同基本法の示す施策にしたがって, 漁業法, 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律, 漁港法等の主要な水産関係法令の改正が行われた。これらは, 水産資源の適切な管理と持続的な利用を図り, 水域の環境や生態系の保全にも配慮して水産に関する施策を総合的かつ計画的に実施しようとするものであり, 国連海洋法条約の的確な実施に向けた取組みとして評価される。
 
図1-1-13 大陸棚の要件と限界
(海上保安庁資料をもとに作成)
 
 しかし, 広大なわが国の管轄海域の調査, 排他的経済水域・大陸棚の境界や外縁の画定, 管轄海域や拠点となる遠隔離島の管理, これらの海域及び資源の開発利用, 海洋環境の保護・保全, 沿岸域の統合管理などの問題に対する取り組みは依然としてはかばかしく進展せず(第2章第5章参照), 全体的, 統合的アプローチが必要な海洋問題の取組みの中で漁業分野の取組みのみが先行するという状態が依然続いている。
 国連海洋法条約により最大350海里まで沿岸国のものとして認められる大陸棚の200海里を越える部分についてわが国の権利を主張するためには, 2009年5月までに陸地からの連続性を示す地形, 地質データを大陸棚限界委員会に提出しなければならない。しかし, 現状ではその調査が間に合いそうもなく, 関係省庁の協力と民間委託を加えた大陸棚調査体制の抜本的拡充が必要になっている。このような事態に対処するため2002年6月関係省庁連絡会議が設置されたが, やはり縦割りの制約が強く効果的な対応ができていない。このため2003年7月には扇国土交通大臣が閣議後の閣僚懇談会で改めて総理主導の国家プロジェクトとしての取組みを要請する事態となっている。
 一方, 経済活動や開発, 人口増加などによる環境悪化が指摘されている沿岸域の統合管理には近年ようやく動きが出てきた。1998年に閣議決定された全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」は「沿岸域圏を自然の系として適切にとらえ, 地方公共団体が主体となり, 沿岸域圏の総合的な管理計画を策定し, 各種事業, 施策, 利用等を総合的, 計画的に推進する『沿岸域圏管理』に取り組む。」(注3)としている。これを受けて2000年2月に, 関係地方公共団体を中心にして多様な関係者の参加のもとに沿岸域圏の管理を進めるためのガイドラインとして, 「沿岸域圏総合管理計画策定のための指針」が定められた。(第3章, 第3部5.参照
 これに先立つ1997年には「河川環境の整備と保全」を目的に追加する河川法の改正, また, 1999年には, これまでの海岸防護の視点に加えて海岸環境の整備と保全及び適正な利用の視点から海岸保全を行う「海岸法」の改正, さらに2000年には「環境保全に配慮しつつ」港湾の整備を図る港湾法の改正が行われた。これらはいずれも「環境」という視点を法目的に加えたものであるが, 「総合的な管理」という意味で前述のガイドラインの実施を制度的に支えるものではない。その点で, 2003年3月発表された国土交通省沿岸域総合管理研究会提言が, 「沿岸域を総合的に管理する新たな法制度の制定」を将来の目標に取り上げているのが注目される。(同提言については第3部8.参照
 
図1-1-14 国土交通省が沿岸域の総合的管理の基本理念で示した沿岸域圏のイメージ
(拡大画面:71KB)
(出典:「沿岸域の総合的管理に向けて」, 国土交通省)
 
 沿岸域の管理には様々な行政主体がかかわっており, また, 市民を含む多様な利害関係者間の調整を必要とするので, 統合管理への道のりは平坦ではないが, 最近の沿岸域の問題に対する地域的な取組みの盛り上がりと2001年に行われた中央省庁統廃合のメリットなどを活かして統合沿岸域管理の取組みの前進が期待される。(沿岸域管理については第3章, 海の健康問題と診断手法の開発については第4章参照
 さらに, 最近, 自然再生や水産資源回復のために各省の枠を超えて連携して計画的な取組みを指向する動きがいくつか具体化した。全体的, 統合的アプローチに向けたワン・ステップとして今後の進展が注目される。即ち, 2002年11月には, 海域の環境悪化と漁業生産の減少が続いている有明海及び八代海の海域の環境保全及び改善並びに水産資源の回復等による漁業の振興を総合的かつ計画的に推進するため, 「有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律」が公布施行された。また, 2002年12月には過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的とした「自然再生推進法」が成立し, 2003年1月施行された。後者は, 海洋のみを対象としたものではないが, 地元の多様な主体の参加により, 干潟, 藻場, サンゴ礁などを含む自然環境の保全, 再生, 創出, または維持管理を求めている。
 
4 民間部門の動き
 海洋をめぐる新しい潮流の中でわが国の海洋政策の策定を求める民間部門の動きが活発になってきている。2000年6月, 経済団体連合会は, 海洋についても国家的政策が必要不可欠であり, 海洋関連産業の活性化のためにも国家プロジェクトが求められているとの認識に基づき意見書「21世紀の海洋のグランドデザイン」を発表した。日本の200海里水域の各海域に拠点となる構造物を配置して, 水産資源の持続的開発, 各種資源エネルギーの有効利用, 海域の科学研究の推進を提言している。また, 日本沿岸域学会は, 同年, 沿岸域を次世代により良い状態で引継ぐために沿岸域の統合管理を求める2000年アピールを発表した。
 
図1-1-15 21世紀の海洋のグランドデザインの概念図
(経済団体連合会の資料をもとに作成)
 
 さらに, 2002年3月には日本財団が「21世紀におけるわが国の海洋政策に関する提言」を発表した。同提言は, 海洋関係の有識者からなる「海洋管理研究会」での調査研究や討論ならびにわが国の政治, 行政関係者及び海洋関係の研究者, 実務者, 企業等に対して行った「海洋政策アンケート調査」結果を参考にして取りまとめられたものである。海洋政策アンケート調査では, 「わが国の海洋管理の理念及び政策大綱を明確に表明する必要があると思いますか」という問いに対して実に96, 6%の人々が積極的な回答をしている。(「日本財団提言」, 「海洋政策アンケート調査結果要約」については第3部参照
 
図1-1-16 
日本財団の海洋政策アンケート調査「海洋政策は必要か」
わが国の海洋管理の理念および政策大綱を明確にする必要があると思いますか
 
 同提言は, わが国の海洋政策について, 総合的な海洋政策の策定と海洋基本法の制定, 海洋政策の策定・実行のための行政機構の整備, 統合沿岸域管理の法制整備, 排他的経済水域及び大陸棚の総合的管理の具体化など6項目及びその細目延べ23項目にわたる提言を行っている。本提言は, 政府, 国会議員を始めとして, 地方公共団体, 各界の海洋関係者, メディア等に説明・配布されるとともに, 折から12年ぶりにわが国の海洋政策を審議中の科学技術・学術審議会海洋開発分科会にも提出され, その審議の参考に供された。
 

大陸棚限界委員会
 国連海洋法条約によれば, 沿岸国が基線から200海里を超えて大陸棚を主張できる場合があるが, その条件が整っている場合, 沿岸国はその範囲についての申請を, 海底の詳細な科学的調査データとともに大陸棚限界委員会に提出しなければならない。委員会は, 条約の締約国会議において個人の資格で選出される21人の専門家からなり, 各国の申請を審査し, その適否について勧告する任務を与えられている。同申請は条約の批准後一定の期間内(わが国は2009年5月まで)に行う必要がある。
 
注3 「21世紀の国土のグランドデザイン」第2部第1章第4節海洋沿岸域の保全と利用(第3部4.)
 
沿岸域圏総合管理計画策定のための指針
 第3章(32頁)参照







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