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海洋白書 2004創刊号 日本の動き 世界の動き

 事業名 海洋シンクタンク事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


第3節 世界各国の動き
 近年, 世界各国が海洋に関心を向け, 熱心に海洋及び沿岸域の総合的管理に取り組んでいるのは, 上記のような国際的な動きと表裏一体のものである。その主な動きは次のとおりである。
 世界最大の管轄海域(=領海+排他的経済水域)を有するアメリカは, 既に1960年代末から海洋政策の策定, 沿岸域管理法の制定, 海洋保護区, 海洋研究助成制度(シー・グラント)の制定, 海洋大気庁(NOAA)の設置などを行ってきたが, 1999年には大統領の要請に応えて行政各部が共同で海洋・沿岸政策に関する包括的な報告書を取りまとめた。さらに2000年には, 新しい国家海洋政策を策定するための手続法として海洋法2000が議会を通過し, これに基づき設置された海洋政策審議会が目下米国の新しい総合的海洋政策を審議中である。審議は既に最終段階に入っており, 2004年はじめに米国の海洋政策に関する最終報告書が議会と大統領に提出される見込みである。大統領は報告を受けてから90日以内に, その勧告を実施するため, 総合的・長期的「国家海洋政策」の提案を議会に付託することになっている。
 米国に次ぐ広大な管轄海域を持つオーストラリアは, 1998年末にオーストラリア海洋政策を策定し, 海洋政策の意思決定機関として, 環境大臣を議長とする環境, 産業・科学・資源, 観光, 漁業, 運輸の5大臣からなる国家海洋閣僚会議を組織し, 事務局として国家海洋局を設置して, 生態学的に持続可能な海洋利用のための施策を着実に進めている。カナダも, 水産・環境・海上交通・沿岸警察関係行政をあわせて担当する漁業海洋省を設けて海洋問題を総括する機能を持たせ, 1997年には海洋法を制定した。これに基いて2002年, カナダ漁業海洋省は, 海洋管理と政府内の政策・計画の調整の統合的アプローチ並びに生態系アプローチを遂行するための「カナダ海洋戦略」を策定・発表して海洋の管理に取り組んでいる。
 総じて広大な管轄海域を有する国々が, 海洋政策に熱心に取り組んでいるのは当然である(表1-1参照)が, 内陸国を含めてその他の国にとっても海洋の開発利用と海洋環境の保護は重要な課題であり, 各国ともに熱心に取り組んでいる。アジア各国を見ても, 海洋政策や海洋基本法を策定(中国:中国海洋アジェンダ21, 海域使用管理法, 韓国:海洋コリア21, 海洋水産発展基本法)し, 海洋主管省庁を設置(韓国海洋水産部, インドネシア海洋漁業省, 中国国家海洋局等)するなど, 海洋の管理に積極的に取り組んでいる。中でも, 韓国の取り組みは目覚しく, 2002年の「海洋と海洋法に関する国連事務総長報告」が, 横断的な海洋問題に対しては統合的な海洋管理が重要であるとして取り上げた際には, 統合という観点から見て最も先進的に海洋管理に取り組んでいる3つの国のひとつとして韓国を取り上げているほどである。(注2)
 このほか, ニュージーランド, ロシア, 南アフリカ等々多くの国が海洋と沿岸域の総合管理に取り組んでおり, 既に42%の国が海洋・沿岸域に関する省庁間調整メカニズムを設置している。
 
表1-1 世界の200海里管轄海域面積ランキング
順位 国名 面積(単位:万km2
1
2
3
4
5
6
7
8
9
アメリカ
オーストラリア
インドネシア
ニユージーランド
カナダ
日本
(旧ソ連)
ブラジル
メキシコ
762
701
541
483
470
447
(449)
317
285
 日本以外は1972年のアメリカ国務省資料「Limits in the Seas-Theoretical Areal Allocations of Seabed to Coastal States」(全訳「海洋産業研究資料」, 通巻第59号, 1975)に基づくデータ。旧ソ連については, その後独立したバルト海・黒海・カスピ海に面している共和国分が含まれているほか, 米国務省データにはロシアの実効支配を理由に日本領土である北方四島の周辺海域分も含まれている。したがって, 現ロシアの管轄海域面積は日本よりも小さくなると判断した。なお, 日本の管轄海域面積は「長井俊夫(1996), 新しい領海関係法と水路部のかかわり(水路, 99, 2-14)」による。
 
第4節 海洋国日本の動きと対応
1 国連海洋法条約への対応
 わが国は, 第3次国連海洋法会議の審議に積極的に参加し, 深海底開発をめぐる対立でアメリカなど先進国の多くが反対・棄権にまわった国連海洋法条約の採択の時にもこれに賛成している。しかしながら, 残念なことに同条約が採択されてから発効するまでの12年間の歳月が, 同条約審議の過程でわが国国内に盛り上がった海洋問題への総合的な取組みのモメンタムを失わせてしまった。
 国連海洋法条約発効の2年後の1996年(平成8年)7月20日, わが国はこの条約を批准した。条約の批准に当たっては通常, 関連国内法を整備する。特に, 本条約では広大な海洋が法的性格の異なるいくつかの海域に区分され, 沿岸国は自国の管轄海域を条約の定める権利義務にしたがって管理することが求められている。わが国としては, 本条約で創設された排他的経済水域やわが国としては初めての大陸棚などに関するわが国の制度を施行するため国内法の整備が当然必要となる。
 ちなみにこのとき, 本条約の批准にあたってわが国が行った関連国内法の整備は, (1)「領海法」の一部改正(2)「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」の新規立法(3)「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律」及び「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」の新規立法並びに「水産資源保護法」の一部改正(4)「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」ほか2法の一部改正(5)「海上保安庁法」の一部改正である。
 しかし, 国内法整備の根幹となる肝心の「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」は, わが国の排他的経済水域及び大陸棚を設定し(図1-1-12参照), これらの水域へわが国の法令を適用する旨を一般的に述べるだけの全部でわずか4条の法律であり, わが国の制度を内外に具体的に示すという国内法整備のニーズを満たしているとは言いがたい。
 
図1-1-12 海上保安庁が作成した日本の領海等の概念図
(出典:海上保安庁資料)
 
 もっとも, 好意的見方をすれば, 内外の新しい情勢に適切に対応するためのわが国の海洋政策の確立と国内法制の立案や制度の具体的適用の検討にはかなりの時間と労力を要することは確かであり, 本条約の批准を迅速に行うためにこの段階ではとりあえずこのような簡単な国内法整備で間に合わせたというのであれば, そのことは理解できよう。しかし, その後の推移を見ても本条約の関連国内法を本格的に整備する動きは依然として見られず, 諸外国の取組みと比較するとそこに大きな差が生じている。(表1-2参照)
 これより約20年前の1977年(昭和52年), わが国は, アメリカ, ロシアその他の諸国がその前年に200海里漁業水域を設定したのを受けて, 200海里の「漁業水域暫定措置法」を制定した。これらの動きは, 当時未だ第3次国連海洋法会議で審議中だった排他的経済水域制度を漁業関係について各国が先取りしたものだったが, これがきっかけとなってその後わが国では, 排他的経済水域が天然資源に関する主権的権利と海洋環境や科学的調査等に関する管轄権からなるもっと包括的な制度であるにもかかわらず, その一部の漁業資源を対象とする漁業水域とほとんど同一視されるようになっていった観がある。現に本条約の批准にあたって整備された関連国内法を見ても, 新規立法は, 前述の「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」以外は全て漁業に関するものである。
 
表1-2 各国の海洋政策
(拡大画面:186KB)
 
2 地球サミット及びWSSDへの対応
 リオ地球サミットで採択されたアジェンダ21の対応を見ても同様のことが言える。わが国は, 1993年12月に日本政府版の「アジェンダ21行動計画」を決定して国連に提出している。しかし, その海洋・沿岸域に関する部分を見ると, ほとんどが各省が自らの所掌の範囲内で実施してきた取組みの延長であり, アジェンダ21が求めている「海洋・沿岸域の統合管理と持続可能な開発のための調整メカニズムの設置」のような統合的対応を要する課題は積み残したままである。このような状況は昨年のWSSDにいたるまでほとんど変っていない。昨年のWSSDにおいても海洋に関してはわが国の積極的な取組みは見られなかった。
 

海洋と海洋法に関する国連事務総長報告
 毎年国連事務局の海洋問題・海洋法部が中心になって, 国連の関係諸機関からのインプットも加えて, 海洋問題と海洋法に関する過去一年間のおもな動きや法的進展についてまとめ, 総会に提出する包括的報告書。以前には秋の総会会期中に出されていたが, 総会での「海洋及び海洋法」議題の討議時間が極めて限られていることから, 近年は春に数日間同議題についての非公式協議(UNICPO)が開かれることになり, 事務総長報告もそれに間に合うよう3月頃に配布されている。なお, 総会での審議の直前には, 同報告の追補が出される。
 
注2 国連事務総長報告
 X. Cross-cutting issues C. Integrated ocean management 652.658-660







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