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(2)瀬戸内町内〜鹿児島市内(鹿児島〜喜界〜知名航路、鹿児島〜那覇航路)
(1)奄美大島における陸上アクセス
■名瀬港では、鹿児島〜那覇航路にのみバスが接続
 名瀬港においては、鹿児島〜那覇航路の鹿児島方面向けで、上り便(名瀬港を21時頃に出港)・下り便(名瀬港に5時頃入港)とも、奄美交通のバスと接続している。表6-4-1に示すとおり、各2便ずつ接続ダイヤが設けられている。一方、鹿児島〜喜界〜知名航路は、名瀬港、古仁屋港とも利用客が少ないことなどから、路線バスと航路の接続はない。
 
表6-4-1 名瀬港で船に接続するバスの時刻表
<上り便との接続>
古仁屋 名瀬
(バスセンター)
名瀬新港
17:30 18:53 18:57
18:35 19:58 20:02
 
<下り便との接続>
名瀬新港 名瀬
(バスセンター)
古仁屋
5:00 5:04 6:27
8:00 8:04 9:32
 
■バス車両は離島共通の課題として低床化の遅れ
 島内のバス車両は、ほぼすべてが中古車である。前述のとおり、低床化等のバリアフリー対応の車両改造は費用面からみて困難であるほか、道路の路面の関係で低床車だと走行に問題をきたす場所もあることから、バスの低床化は難しい。
 
(2)名瀬港のターミナル
■名瀬港のターミナルビルはバリアフリー化対応済み
 名瀬港のターミナルビルは、乗船券販売所等の施設が2階部分にあるが、エレベーターが設置されているほか、身障者用トイレ、視覚障害者用の点字ブロックの敷設等のバリアフリー化対応がなされている。
名瀬港では身体障害者協会等によりバリアフリーウォッチングが年1〜2回実施されており、乗船券販売所の窓口や記入台が車いすでは利用しにくいことが指摘されている。鹿児島県港湾課では、予定している耐震補強工事の実施に併せて改良することとしている。
 
点状ブロックの敷設
 
待合所にエレベーターを設置
 
(3)名瀬港での乗下船
■鹿児島〜那覇航路ではボーディングブリッジを使用
 名瀬港にはボーディングブリッジが設置されており、鹿児島〜那覇航路の乗下船に使用されている。ボーディングブリッジの使用により、風雨を除けることができるほか、ターミナルビル2階にある待合室から上下移動なくそのまま乗下船することができ、車いす使用者等にも利用しやすくなっている。
 
名瀬港のボーディングブリッジ
 
船とボーディングブリッジの接続部分
 
■鹿児島〜喜界〜知名航路は名瀬港でもタラップを使用
 鹿児島〜喜界〜知名航路では、名瀬港でもボーディングブリッジを使用せず、タラップでの乗下船となっている。最大の理由は、利用客数に対して、施設使用料(6,300円/回)の負担が大きいことである。
 なお、奄美大島(名瀬港、古仁屋港)以外の離島各港は外海に直面しており、接岸時に船が安定しないため、ボーディングブリッジの設置自体が困難とされている。
 
乗下船に使用されるタラップ
 
■身障者の乗下船には係員が対応
 鹿児島〜喜界〜知名航路を運航する奄美海運では、車いす使用者や歩行障害者が利用する場合、申し出により優先乗船を行っている。介助者がいるときはまず介助者に確認し、おぶってタラップを上るか、車で船の2階まで乗り込み客室に入るか、いずれかの方法をとっている。また介助を必要とする旅客については、乗組員および陸上係員が乗下船時の介助を行っている。
 
(4)船内
■「フェリーなみのうえ」では船内にエレベーターを設置
 大島運輸の「フェリーなみのうえ」にはエレベーターが設置されており、各階の上下移動の負担が軽減されている。
 
■その他の一部船舶では身障者優先室と身障者用トイレを近接して設置
 マリックスラインの「クイーンコーラル8」や奄美海運の「フェリーきかい」では、出入口と同一フロアに、身障者等が優先して使用できる船室(福祉優先室)と身障者用トイレを近接して設置し、出入口からは上下移動なしで客席とトイレに行けるように配慮されている。
 
上)身障者優先室
下)身障者用トイレ
(いずれも「フェリーきかい」)
どちらも入り口に段差のない
つくりになっている
 
 
■身障者優先室と、売店・食堂のフロア移動には階段を使用
 上記の身障者優先室は、同一フロアに身障者用トイレが設置されているものの、売店や食堂は階上にあり、階段による移動となる。また、「フェリーきかい」の場合、食堂入口に段差はなく、車いす等でも使いやすい構造になっているが、客室等から食堂まで移動する経路に、階段や扉などの障害物が多い。
 
「フェリーきかい」の階段
 
■船内の段差解消は図られていない
 1999年に就航した「クイーンコーラル8」では、建造中に段差解消の必要性が認識され、船室入口にスロープを設置する等の対応を行ったが、船内にはなお段差が残されている。それ以前に建造された各船舶では、段差解消への特段の配慮は行われていない。
 
■係員に、船内における身障者への応対について、バリアフリー化教育を実施
 各事業者ではバリアフリー化対応の特別の教育・研修等は行っていないが、さまざまな従業員教育の場を通じて、身障者が単独で乗船している際は必要なものがないか声をかけるなど、特に気を配り、旅客の要望に応えられるように指導を行っているとしている。
 
(5)鹿児島港での乗下船
■本港(北ふ頭)、新港ともボーディングブリッジは未設置
 鹿児島港のうち、鹿児島〜喜界〜知名航路の発着する本港(北ふ頭)、鹿児島〜那覇航路の発着する新港とも、ボーディングブリッジは設置されていない。北ふ頭旅客ターミナルビルは、ボーディングブリッジの設置可能な構造となっているが、設置にあたっては利用者(事業者)と港湾管理者の間で、費用負担の合意が得られることが条件となる。
 
■乗下船には急勾配のタラップが使用されている
 両航路の各船舶とも、乗下船にはタラップを使用するが、船型の大きな鹿児島〜那覇航路、特に大島運輸の船舶では、使用するタラップが長く、勾配も急なため、上り下りしにくくなっている。タラップの角度は潮の干満によって変わり、満潮時は特に角度が急になる。
 
勾配が急で長い乗下船用のタラップ
 
■マリックスラインでは、車いす使用者等の乗下船に自動車を使用
 マリックスラインでは、名瀬港を除く各寄港地ではタラップによる乗下船となるため、車いすを使用している人や足が不自由な人に対しては、2階の車両甲板まで自動車で上がり、船に備え付けの車いすで福祉優先室まで案内している。自動車は鹿児島港では自社、離島の各港では代理店が営業車等を用意している。ただし、利用にあたっては、貨物の積み卸し作業との兼ね合いもあり、窓口で事前に利用希望を申し出る必要がある。
 
■荷役車両と乗下船客の輻輳(ふくそう)による危険性
 タラップによる乗下船を行う場合、乗下船客の歩行経路と荷役を行うトレーラーやトラック、フォークリフト等の車両の輻輳が問題となるが、特に鹿児島新港は、待合所と岸壁間のエプロンの幅が約20mしかないため、その危険性が指摘されている。
 こうした問題のほか、ボーディングブリッジの未設置など、新港には改良が求められる点があるが、今後、鹿児島〜那覇航路は北ふ頭への移転が計画されていることから、新港に大規模な改良計画はない。移転にあたっては、北ふ頭の用地が貨物の取り扱いには狭隘であることや、近接する水族館の来館者など歩行者との輻輳が課題とされている。
 
(6)鹿児島港のターミナル
■鹿児島本港の北ふ頭旅客ターミナルビルはバリアフリー化対応済み
 鹿児島本港の北ふ頭旅客ターミナルビルは、点字ブロックの敷設や乗船券販売所のカウンターの車いす対応などバリアフリー化に対応した設備を備えている。待合所は2階にあるが、エレベーターとエスカレーターが設置されている。利用者から管理者への要望として、駐車場の身障者用スペースの場所がわかりにくいことが指摘されている。
 
■鹿児島新港の乗船券販売所は、車いすでの利用には未対応
 鹿児島新港は、乗船券販売所や待合室、トイレ等が1階にあり上下移動は不要であるが、乗船券販売所の窓口や記入台は、車いすの利用に適した構造になっていない。
 
鹿児島新港の乗船券販売所の記入台
 
(7)鹿児島市内における陸上アクセス
■新港〜市内中心部は自家用車かタクシーを利用
 鹿児島新港は市内中心部からやや離れた位置にあり、以前は通っていたバス路線も廃止されているため、自家用車を利用する人以外はタクシーを利用することとなる。事業者がタクシー会社に入港予定時刻を連絡するため、船の入港時間に合わせてタクシーが待機している。
 
■本港(北ふ頭)〜市内中心部の路線バスは利便性低下の可能性
 現在、北ふ頭には路線バスが乗り入れており、鹿児島〜喜界〜知名航路の利用客が市内中心部との移動手段として活用できる。ただし、このバス路線は鹿児島〜種子・屋久航路の超高速船の利用客を主に対象としている。今後、同航路は南ふ頭への移転が予定されていることから、路線バスが減便ないし廃止され、鹿児島〜喜界〜知名航路の利用客にとって利便性の低下が懸念されている。







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