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3. 外出行動の実態とその問題点
 ここでは住民アンケートの結果から、瀬戸内町における移動の実態や、海上交通を利用した移動における問題点を県内離島全域と比較することにより、瀬戸内町における移動の特徴を明らかにする。
 
(1)瀬戸内町における外出行動の実態
(1)外出頻度
 瀬戸内町における外出頻度をみると「ほぼ毎日」が35.9%で最も多く、「週に3〜4回」、「週に1〜2回」、「月に数回程度」がそれぞれ14.1%ずつとなっている。週に1回以上外出をする人は約65%であり、瀬戸内町における外出頻度は離島全域と比べるとやや低い。
 一方、島外への外出頻度は「年に数回」が29.7%で最も多いが、「月に数回程度」や「月に1回程度」「週に1〜2回」もそれぞれ20.3%、18.8%、15.6%あり、離島全域より外出頻度が高くなっている。これは、瀬戸内町のうち、加計呂麻島、請島、与路島から奄美大島への外出頻度が相対的に高いためであり、その意味で海上輸送の重要性が高い地域と言える。
 
図6-3-1 外出頻度
 
図6-3-2 島外への外出頻度
 
 外出の頻度を年齢別にみると、瀬戸内町では75歳以上で「ほぼ毎日」が50%となっており、後期高齢者においても外出が頻繁に行われている。
 一方、島外への外出頻度は年齢が高くなるほど減少する傾向がみられる。
 
図6-3-3 外出頻度(年齢別)
 
図6-3-4 島外への外出頻度(年齢別)
 
(2)外出の目的と目的地
 島外への外出の目的地は「名瀬市」が40.6%で最も多く、次いで「その他」が35.9%、「鹿児島市」が10.9%となっている。「その他」では「古仁屋」が19件あり、全体の29.7%を占めていることから、加計呂麻島、請島、与路島からの外出は名瀬市や古仁屋など奄美大島内を目的地とすることが多く、一方、奄美大島からの外出は鹿児島市を目的地とすることが多いことがわかる。
 島外への外出目的は「買い物」が37.5%で最も多く、次いで「病院への通院」が26.6%となっている。加計呂麻島、請島、与路島においては島内の商業施設が充実していないことや、各島には医療機関が診療所しかなく、皮膚科などの専門医にかかるには奄美大島へ行く必要があることから、買い物や通院で名瀬や古仁屋など、奄美大島へ外出することが多くなっている。
 また、島外へ外出する際は、一人で外出する人と、家族と外出する人の割合がほぼ半数ずつとなっている。
 
図6-3-5 島外の目的地
 
図6-3-6 外出の目的
 
(3)島外外出時の交通手段
 島外へ外出する時の交通手段は「ほとんど船を利用する」が約80%を占めている。加計呂麻島、請島、与路島では飛行機がないため島外への外出には船を利用することとなるが、奄美大島では飛行機を利用する人も多く、「ほとんど飛行機を使う」の割合は全体で6.3%となっている。
 船を利用するときは、「定期船」を利用する人が82.8%を占めているが、「海上タクシー」も9.4%あり、離島全域に比べ「海上タクシー」の利用が多い。
 
図6-3-7 島外へ外出時の交通手段
 
図6-3-8 主に利用する船の種類
 
(4)自宅から港までの交通手段
 自宅から港までの交通手段としては、「自家用車(自分で運転)」が29.7%で最も多く、次いで「徒歩」が23.4%、「バス」が18.8%、「自転車・バイク」が12.5%を占めている。離島全域と比較して、バス、徒歩、自転車・バイクの利用率が高いことが特徴である。
 「バス」を利用する人の割合を年齢別にみると、64歳以下では1割に満たないが、65歳〜74歳では27.8%、75歳以上では18.2%と、高齢者の利用が多い。一方、「自家用車(自分で運転)」については、64歳以下では約6割を占めるが、65歳以上ではその割合は大きく減少する。また、障害のある人は、障害のない人に比べて「自家用車(自分で運転)」を利用する割合が低く、「タクシー」を利用する人の割合が高くなっている。
 バスについては、バスの運行されていない請島と与路島を除き、奄美大島と加計呂麻島のみでみると、約30%の人がバスを利用している。特に加計呂麻島では全てのフェリーとバスが接続しており、高齢者は自家用車の運転が困難であることや島内面積が広いこと等からも、バスが港までのアクセス手段として重要な役割を担っている。
 
図6-3-9 自宅から港までの交通手段
 
図6-3-10 自宅から港までの交通手段(年齢別)
 
(5)港から目的地までの交通手段
 港から目的地までの交通手段をみると「タクシー」と「徒歩」が26.6%ずつ、次いで「バス・電車」が17.2%となっている。離島全域と比べると「タクシー」を利用する人は約15ポイント少なく、一方「徒歩」による人は20ポイント以上多くなっている。加計呂麻島、請島、与路島から奄美大島への外出では、古仁屋港に到着後、商業施設や医療施設など目的とする施設まで歩くか、バスを利用する人が多いためと考えられる。
 一方、奄美大島から鹿児島市への船による外出では、鹿児島〜那覇航路の利用者が多いが、鹿児島新港から鹿児島市内へのアクセス手段が自家用車かタクシーしかないため、「タクシー」を利用する人が半数以上を占めている。
 また、年齢別にみると、「自家用車(自分で運転)」の割合は年齢が高くなるほど減少するが、逆に「タクシー」や「バス」は年齢が高くなるほど増加する傾向にある。同様に障害のある人では「自家用車(自分で運転)」はほとんど利用されず、「タクシー」の利用が多くなる傾向にある。
 
図6-3-11 港から目的地までの交通手段
 
図6-3-12 港から目的地までの交通手段(年齢別)







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