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(2)対象地域における交通網の概要
(1)航路
 対象3航路の概要を表6-2-6に示す。鹿児島〜喜界〜知名航路、鹿児島〜那覇航路には大型フェリーが、瀬相〜古仁屋〜生間航路には小型フェリーが就航している。また、与路〜古仁屋航路には交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準に適合した旅客船「せとなみ」が就航している。このほか、町内各島間では海上タクシーも運航されている。
 
表6-2-6 対象航路の概要
航路名 事業社名 船名 総トン数
(t)
航海速力
(ノット)
旅客定員
(人)
車両台数
(台)
就航年
鹿児島〜喜界〜
知名
奄美海運(株) フェリーあまみ 2,980 20.0 213 69 1989
フェリーきかい 2,878 20.0 200 74 1995
鹿児島〜那覇 マリックスライン(株) クイーンコーラル8 4,945 22.0 300 66 1999
クイーンコーラル 4,924 20.2 500 66 1993
大島運輸(株) ニューあかつき 6,412 22.0 800 169 1992
フェリーなみのうえ 6,586 21.0 804 240 1994
瀬相〜古仁屋〜
生間
瀬戸内町 フェリーかけろま 194 12.0 160 乗用車4
大型バス2
1994
与路〜古仁屋 瀬戸内町 せとなみ 90 19.0 60 - 2003
注)2004年1月現在
資料)国土交通省九州運輸局鹿児島運輸支局資料ほかよりUFJ総合研究所作成資料
 
1)鹿児島〜喜界〜知名航路
 鹿児島〜喜界〜知名航路は、鹿児島本港・湾港(喜界島)・名瀬新港・古仁屋港・平土野港(徳之島)・知名港(沖永良部島)を結ぶ航路であり、奄美海運によってフェリー2隻で5往復/週運航されている。所要時間は鹿児島港から知名港まで約21時間50分である。喜界島に寄港する唯一の航路であることから、2003年の航路全体の旅客輸送実績(約4.3万人)のうち、名瀬〜喜界間(約1.8万人)と鹿児島〜喜界間(約1.5万人)が8割近くを占める。また、当航路は国庫補助航路に指定されており、国・県からの補助を受けている。
 奄美大島と鹿児島市の間を船で移動する場合、鹿児島〜那覇航路を利用すると名瀬新港から鹿児島本港までの所要時間が約11時間(表6-2-8)であるのに対し、鹿児島〜喜界〜知名航路では同区間が13.5〜14.5時間(表6-2-7)と3時間程度長くかかる。このため、奄美大島と鹿児島市の間の移動では主に鹿児島〜那覇航路が利用され、2003年における鹿児島〜喜界〜知名航路の鹿児島〜名瀬間の旅客輸送実績は約2千人にとどまっている。また、古仁屋港から名瀬港までの所要時間は船で約2時間40分であるが、奄美大島内の道路整備に伴い、バスでも名瀬から古仁屋まで約1時間30分で行けることから、鹿児島〜古仁屋間の船の利用客はほとんどない。
 古仁屋港では旅客利用が少なく貨物の取り扱いが中心となっているが、旅客輸送では主に徳之島との移動に利用されている。2003年の古仁屋港の乗降客数(鹿児島〜喜界〜知名航路のみ)5,583人のうち、その約85%にあたる4,773人を古仁屋〜平土野(徳之島)間が占める。事業者によると、同区間の利用客は十数年前から増加傾向にある。
 
表6-2-7 「フェリーあまみ/きかい」運航ダイヤ
<上り>
  知名 平土野 古仁屋 名瀬 喜界 鹿児島 (本港)
水・金 出16:00 入18:10 - 入21:40 入00:05 入11:30
  出18:20 - 出21:55 出00:20  
火・木・土 - 出13:25 入15:40 入18:20 入20:50 入09:00
  出16:00 出18:40 出21:10
 
<下り>
  鹿児島 (本港) 喜界 名瀬 古仁屋 平土野 知名
火・木 出17:50 入05:00 入07:40 入10:30 入13:05 入15:40
出05:30 出08:10 出10:50 出13:30
月・水・金 出17:50 入05:00 入07:40 入10:30 入13:05 -
出05:30 出08:10 出10:50
注)1)2004年1月現在
注)2)上段:着時刻、下段:発時刻
資料)A"LINEホームページよりUFJ総合研究所作成
 
フェリーあまみ
 
フェリーきかい
 
2)鹿児島〜那覇航路
 鹿児島〜那覇航路は、鹿児島新港・名瀬港・亀徳港(徳之島)・和泊港(沖永良部島)・与論港・本部港・那覇港を結ぶ航路であり、マリックスラインによって「クイーンコーラル」と「クイーンコーラル8」が、大島運輸によって「フェリーあかつき」と「フェリーなみのうえ」が運航されている。所要時間は、鹿児島新港から那覇港まで約24時間となっている。2社間で協調ダイヤが組まれており、運航回数は合わせて1往復/日である。
 
フェリーなみのうえ
 
フェリーあかつき
 
表6-2-8 鹿児島〜那覇航路・運航ダイヤ
<上り>
  那覇 本部 与論 和泊 亀徳 名瀬 鹿児島
クイーンコーラル8 出08:00 入09:50 入12:40 入14:40 入17:00 入20:50 入08:00
出10:10 出13:00 出15:10 出17:30 出21:20
クイーンコーラル 出07:00 入08:55 入11:50 入14:00 入16:30 入20:40 入08:30
出09:10 出12:10 出14:30 出17:00 出21:20
フェリーなみのうえ・
フェリーあかつき
出08:00 入09:50 入12:40 入14:40 入17:00 入20:50 入08:30
出10:10 出13:00 出15:10 出17:30 出21:20
 
<下り>
  鹿児島 名瀬 亀徳 和泊 与論 本部 那覇
クイーンコーラル8 出18:00 入05:00 入09:10 入11:30 入13:40 入16:30 入18:40
出05:50 出09:40 出12:00 出14:00 出16:50
クイーンコーラル 出18:01 入05:20 入09:30 入12:00 入14:20 入17:20 入19:30
出05:50 出10:10 出12:40 出14:40 出17:35
フェリーなみのうえ・
フェリーあかつき
出18:00 入05:00 入09:10 入11:30 入13:40 入16:30 入18:40
出05:50 出09:40 出12:00 出14:00 出16:50
注)2004年1月現在
資料)マリックスラインホームページ、A"LINEホームページよりUFJ総合研究所作成
 
3)瀬相〜古仁屋〜生間航路
 瀬相〜古仁屋〜生間航路は、瀬相港・生間港(加計呂麻島)と古仁屋港を結ぶ航路であり、瀬戸内町によって「フェリーかけろま」が運航されている。所要時間は、瀬相港・古仁屋港間が25分、生間港・古仁屋港間が20分となっている。運航回数は瀬相港・古仁屋港間が4往復/日、生間港・古仁屋港間が3往復/日で、計7往復/日である。
 2002年の旅客輸送実績は、両区間合計で約15.2万人であり、2000年まで減少傾向にあった輸送実績は、わずかながら増加に転じている。ただし、最大の収入源である自動車航送の台数はほぼ横ばいであり、それまで微増だった貨物輸送量は逆に減少に転じたため、運航収入総額はほぼ横ばいとなっている。当航路は県の補助航路に指定されており、県・町からの補助を受けている。
 
フェリーかけろま
 
表6-2-9 「フェリーかけろま」運航ダイヤ
古仁屋〜瀬相 瀬相〜古仁屋 古仁屋〜生間 生間〜古仁屋
7:00 7:25 7:35 8:00 8:10 8:30 8:40 9:00
10:20 10:45 10:55 11:20 11:40 12:00 12:15 12:35
14:00 14:25 14:35 15:00 15:25 15:45 15:55 16:15
17:30 17:55 18:05 18:30        
注)2004年1月現在
資料)瀬戸内町ホームページよりUFJ総合研究所作成
 
4)与路〜古仁屋航路
 与路〜古仁屋航路は、与路港(与路島)、池地港、請阿室港(ともに請島)、古仁屋港を結ぶ航路であり、瀬戸内町によって旅客船「せとなみ」が運航されている。「せとなみ」は2003年4月に当航路に就航した船舶であり、2002年に施行された交通バリアフリー法の移動円滑化基準に適合したバリアフリー船となっている。所要時間は、古仁屋港から与路港まで1時間17分、古仁屋港から池地港まで約51分、古仁屋港から請阿室港まで35分である。運航回数は、月曜日〜土曜日が1往復/日、日曜日のみ2往復/日となっている。
 旅客輸送実績は一貫して減少基調にあり、2002年は航路全体で約9.8千人であったが、最新の統計では若干増加に転じており、2002年4月に新造船が就航した効果が現れている可能性がある。当航路は国庫補助航路に指定され、国・県・町からの補助を受けている。
 
表6-2-10 「せとなみ」運航ダイヤ
  与路港 池地港 請阿室港 古仁屋港
日曜 (2航海) 与路港 発7:00 着7:16 発7:26 着7:32 発7:42 着8:17
(1便) 着11:17 発11:01 着10:51 発10:45 着10:35 発10:00
与路港 発14:00 着14:16 発14:26 着14:32 発14:42 着15:17
(2便) 着17:17 発17:01 着16:51 発16:45 着16:35 発16:00
月・火・水 木・金・土 (1航海) 与路港 発7:00 着7:16 発7:26 着7:32 発7:42 着8:17
着16:17 発16:01 着15:51 発15:45 着15:35 発15:00
注)2004年1月現在
資料)瀬戸内町ホームページよりUFJ総合研究所作成
 
せとなみ
 
(2)バス路線
1)奄美大島
 奄美大島では、奄美交通と岩崎バスが路線バスを運行しているが、瀬戸内町内には奄美交通が路線を展開している。その系統数は、路線バスが3系統、廃止路線代替バス注)が7系統で、1日10往復運行される古仁屋と名瀬市を結ぶ路線が幹線となっている。中型5台(代替バス3台を含む)、小型5台(代替バス3台を含む)が投入され、年間約6万1千人(代替バス4千人を含む)が利用している。事業者によるとバスの利用客は、ほとんどが通勤・通学など地元住民による利用であり、貸切バスを使うことが多い観光客は、路線バスをあまり使わない。
 航路とバスの接続状況をみると、鹿児島〜喜界〜知名航路については、名瀬港、古仁屋港ともバスは接続されていない。一方、鹿児島〜那覇航路については、名瀬港発・鹿児島行き(上り便)に合わせて古仁屋から名瀬港へ乗船客を運ぶバスが2便、鹿児島港発・名瀬港着(下り便)に合わせて名瀬港から古仁屋へ下船客を運ぶバスが2便接続している。
 2004年1月、奄美交通の親会社であるいわさきコーポレーションは、赤字経営が続き今後も利用者増が見込めないことから、県や地元自治体の増資を条件に受け皿会社にバス事業の経営権を移譲し、2004年9月末で奄美交通を清算する方針を固めた。奄美大島では2社が路線バスを運行しているが、市町村間を結ぶ路線など主要路線の大半は奄美交通が担っており、奄美交通のバスが廃止になれば買い物や病院通いをバスに依存している高齢者ら住民やバス通学の高校生に深刻な影響が出る。奄美交通撤退後のバス路線の確保等については、県や地元自治体等により協議されることとなる。
注)廃止路線代替バス:路線バス事業者が運行する路線が廃止された際に、市町村が路線を引き継ぎ、市町村自ら、もしくは市町村の依頼を受けたバス事業者が運行する路線のこと。
 
2)加計呂麻島
 加計呂麻島一円では、加計呂麻バスが路線バスを運行している。路線は島内7路線あり、フェリーの発着する瀬相と生間を起点に運行されているが、どこで乗ってもどこで降りてもよいというフリー乗降制度がとられている。車両は小型29人乗りが8台投入されている。同社も年間4千万円程度の赤字経営が続いており、町への経営移譲か全路線廃止かが検討されていたが、島のバスはフェリーと一体化した生活路線であるとの考えから、2002年9月に10人のバス運転手が自ら経営を引き継ぎ、バスの運行を維持している。
 船とバスの接続については、古仁屋〜瀬相航路と古仁屋〜生間航路とも接続が図られており、フェリーが加計呂麻島側の港に到着すると各路線のバスが各集落に向けて一斉に発車するとともに、各集落から港へのバスもフェリーの出港時間に間に合うように運行される。
 請島、与路島ではバスは運行されていない。







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