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(6)バリアフリー化に関するソフト面での対応
■乗船時の人的介助とターミナルへの車いす配置が中心
 ソフト面での対応として、乗船時に、船員やターミナル職員による介助を行っていると回答があったのは、3市町村であった(下甑村、西之表市、屋久町)。また、ターミナルに車いすを設置しているとの回答があったのは、2市町村であった(屋久町、和泊町)。
 これらの他に、「車いす使用者が船を利用する際には、車で車両甲板より移送する」(天城町)との回答があった。
 
(7)バリアフリー化に関する問題点
(1)利用者のニーズの把握
■利用者ニーズ把握のための手段を講じているのは、全体の1/4
 全体の約1/4にあたる5市町村が、利用者のニーズを把握するために何らかの手段を講じている(上甑村、屋久町、喜界町、徳之島町、与論町)。
 「その他」と回答した市町村におけるニーズ把握の方法は、「役場にて村長への要望箱を設置」(上甑村)、「県事務所等への直接の意見等に対応」(喜界町)があげられた。
 
図4-2-6 利用者ニーズを把握するために講じている手段(複数回答 n=19)
 
(2)バリアフリー化に関する問題点
1)利用者側から指摘される問題点
 対象港湾のバリアフリー化に関して、利用者から改善が要望されている問題点としては、移動経路の円滑化や、ターミナル・待合所等の施設周辺も含めたバリアフリー化があげられた。
 
・ターミナル2階で乗船券を購入後、1階へ降り接岸場所へ行き、さらに数十段の階段を上って乗船することとなるため、非常に不便である。(和泊町)
・岸壁面の平坦化、歩道の安全確保。(与論町)
・ターミナル・待合所等の利便が図られてもその施設周辺のバリアフリー化を最充足させることを検討してほしい。(屋久町)
 
2)その他の問題点
 ターミナルビルの新設について、意見があった。
 
・与論港の茶花地区には、岸壁上への旅客ターミナルが必要である。 (与論町)
 
(8)今後のバリアフリー化への対応
(1)今後の整備計画
 「対象港湾」における港湾施設や旅客施設(旅客船ターミナル、待合室等)の整備計画として、以下のものがあげられた。
 
・西之表港の整備計画の中で、県がターミナルビルを建設する可能性がある。現時点では、計画に含まれていないが、将来的にバリアフリーを取り入れた計画案が示される可能性がある。既存の施設については、身障者用トイレに非常通報装置、通路の確保と誘導用ブロックの整備が計画されている。(西之表市)
・平成16年までにトイレ新設の計画があり、昼夜の使用が可能となる。 (南種子町)
・ジェットフォイルの待合所整備が予定されているが、具体的な着工時期は未定。 (上屋久町)
・平成16年に大里港待合室、平成17年に片泊港待合室を建設する予定。 (三島村)
・平成17〜18年度でターミナルビルを建設する予定。 (瀬戸内町)
・県としては、今年度中に名瀬新港の改修工事を進めるとのことである。 (喜界町)
 
(2)旅客ターミナルの建設・大規模改造時にバリアフリー化を進める際の課題
■施設の整備・維持コストの増加が課題
 交通バリアフリー法により、旅客船ターミナルの新設や大規模改良を行う際には、移動円滑化のために必要な構造および設備に関する基準を定めた「移動円滑化基準」に適合させる必要がある。
 バリアフリー化を進める際の課題としては、「施設整備コストの増加」と「施設維持コストの増加」がそれぞれ12件あり、費用負担を課題にあげた市町村が多かった。次いで、「県・国との役割分担・意見調整」と「旅客定期航路事業者との役割分担・意見調整」が8件ずつあげられた。
 
図4-2-7
旅客ターミナルの建設・大規模改造時にバリアフリー化を進める際の問題点
(複数回答 n=19)
 
(3)既存の旅客施設に講じたいと考えているバリアフリー措置
■出入口・通路・乗降用設備等における段差解消と、滑りにくい仕上げが上位
 交通バリアフリー法により、既存旅客施設の「移動円滑化基準」への適合は、努力義務とされている。
 「対象港湾」の既存旅客施設に講じたいと考えているバリアフリー措置としては、「出入口・通路・乗降用設備等の段差解消」と「通路・傾斜路・乗降用設備等の滑りにくい仕上げ」が6件ずつで最も多かった。これらを含め、移動経路における措置については、事業規模の大きくなるエレベーター、エスカレーター等の「昇降機の設置」と、「ボーディングブリッジの設置」を除いて、全般的に回答数が多くなっている。また、「身障者用便所の設置」や「転落防止施設の設置」も5件ずつあげられており、トイレと、安全性の確保が重視されている。一方、情報提供のための案内設備等に関しては、誘導用ブロックや点字案内板といった「視覚障害者への案内設備の設置」に回答が集まっている。
 このほか、「その他」では、「今後の住民意見を尊重し検討する」(和泊町)との回答があった。
 
図4-2-8
既存の旅客施設に講じたいと考えているバリアフリー措置
(複数回答 n=19)
 
(4)バリアフリー化の推進にあたって期待される支援策
■9割の市町村が、県・国による積極的な施設整備を期待
 バリアフリー化の推進にあたって期待される支援策としては、約9割にあたる17市町村「県・国による積極的な施設整備」をあげている。次いで、「市町村の施設整備に対する公的助成」となっている。
 
図4-2-9
バリアフリー化の推進にあたって期待される支援策(複数回答 n=19)
 
(5)バリアフリー化と並行して行う必要がある取り組み
■道路等、港湾周辺地区のバリアフリー化を重視
 対象港湾のバリアフリー化と並行して行う必要がある取り組みとしては、「港湾周辺地区(道路等)のバリアフリー化」が最も多く、次いで「船舶のバリアフリー化」があげられた。
 また、「その他」では、「貨物ばかりでなく旅客への配慮が欠けているので、設計の段階でもっと利用者の声を聞いて設計する必要がある」(与論町)との意見があった。
 
図4-2-10
港湾のバリアフリー化と並行して行う必要がある取り組み(複数回答 n=19)
 
(9)バリアフリー化に期待される効果
■高齢者・身障者等の生活の利便性・安全性の向上と、地域振興への寄与を期待
 海上輸送のバリアフリー化によって期待される効果をみると、ほぼ全ての市町村が「高齢者・身障者等の生活の利便性・安全性の向上」をあげた。次いで、「地域振興に寄与」が多く、約6割にあたる17市町村から回答があった。
 
図4-2-11 バリアフリー化によって期待される効果(複数回答 n=27)
 
(10)自由回答
 海上輸送のバリアフリー化全般に関する自由意見として、次のようなものがあげられている。
 
・バリアフリーを実現するには、公共の施設のみでなく、交通アクセス道路など、総合的に見直す必要があり、これらの意見調整と国の積極的な財政支援が望まれる。(上屋久町)
・船舶の改修が必要となると考えられる。現状では、旅客ターミナルビルのバリアフリー化が進んでも、直接利用する船舶が未対応であれば、身障者等の利用が減少すると思われる。(喜界町)
・昨年ターミナルビルが完成し、バリアフリーを取り入れた施設整備が出来た。今後、このターミナルを参考に、新施設等に取り入れる事とする。タラップの昇り降りはお年寄りが大変苦労している状況。船のバリアフリー化に力を入れるか、ブリッヂを設置するための助成制度を設けるか、対策を講じていただきたい。(和泊町)
・1. 岸壁から、客室までの高低差は3〜4m以内とする
2. 階段は日除け、雨除けができる構造とする
3. 岸壁は舗装方法を検討し、平坦性の確保を図る
4. 岸壁上に、風除け、日除け、雨除けができる施設を整備する
5. 歩道は、歩道柵を行い荷役場・車からの安全を図る
6. 岸壁が転落した際の昇降ラダー、その他の安全対策が必要である
7. 船の大型化に伴い、岸壁の高さ基準を高くすべきである(例 +4m〜4.5m)
8. 歩道巾をもっと拡げるべきである (与論町)







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