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1)乗降用設備
■旅客船の約7割では、車いすが持ち上げられることなく乗降できる構造に対応。有効幅について80cm以上を確保しているものは全体の2/3にとどまる
 旅客船の場合、乗降にはタラップか浮桟橋を使用する場合が多く、一部の船舶ではランプウェイを使用している。車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造となっているものは全体の約7割であり、フェリーよりも対応が進んでいるが、有効幅については80cm以上を確保しているものは、全体の2/3にとどまっている。
 
2)出入口
■出入口幅の確保、段差の解消とも図られていない
 80cm以上の有効幅を確保しているのは「シーホーク」(甑島商船)1隻のみである。また、スロープ板等、車いすが円滑に通過できる設備の対応がなされているのも「せとなみ」(瀬戸内町)1隻であり、対応が遅れている。
 
3)客席
■バリアフリー客席は全体の8割に備えられているが、車いすスペースは2隻のみ
 バリアフリー基準に適合した客席は、全体の8割にあたる4隻(トッピー、トッピー2、トッピー3、せとなみ(3席))に備えられている。一方、車いすスペースを備えているものは、「シーホーク」と「せとなみ」の2隻のみである。
 
4)便所
■腰掛け便座が7割で設置されている他は、ほとんど未対応な場合が多い
 便所は回答のあった全ての旅客船に備えられているが、出入口の有効幅80cmを確保しているものは、全体の1/3しかない。出入口の段差についても、解消されているのは全体の約6割である。また、床置式小便器は旅客船では全く対応がなされていない。腰掛け便座は全体の約7割にあたる5隻に、身障者用便所は「せとなみ」1隻にのみ設置されている。
 
5)食堂
 旅客船では、食堂は備えられていない。
 
6)遊歩甲板
■遊歩甲板を有する旅客船は「せとなみ」1隻のみ。
 遊歩甲板を有する旅客船は、「せとなみ」のみである。出入口の有効幅については80cm以上確保されている。また、1階客席から2階遊歩甲板への移動には昇降機(リフター)が設けられており、車いすでの使用に対応している。
 
7)通路
■「せとなみ」以外の旅客船では全く対応なし
 船内の各設備間の通路の有効幅や、車いす使用者への対応、昇降機の設置は、「せとなみ」では対応がなされているが、それ以外の旅客船では全くなされていない。
 
8)経路全般(手すりの設置、床の滑りにくい仕上げ、車いすでの開閉・通過に対応した戸)
■「せとなみ」と「すずかぜ」以外では、戸や手すりなど経路のバリアフリー化に未対応
 回答のあった事業者のうち、車いす使用者やその他の高齢者、身障者が容易に開閉して通過できる構造の戸を有するものは「せとなみ」のみである。また手すりの設置と、床の滑りにくい仕上げについて対応がなされているのは、「せとなみ」と「すずかぜ」(波戸汽船)の2隻のみである。
 
9)案内設備
■視覚障害者用の点字設備や、運航情報提供設備については、「せとなみ」以外の旅客船では全く未対応。
 点状ブロックの敷設や通路・階段に設けられた手すりの端部への点字貼付、点字案内設備等の視覚障害者に対応した点字設備や運航情報提供設備は、旅客船では「せとなみ」にのみ設けられている。船内設備の案内板等の案内設備を備えているのは、「せとなみ」と「すずかぜ」である。
 
10)総括
■旅客船では、車いすが持ち上げられることなく乗降できる乗降用設備や、バリアフリー客席の設置において、フェリーよりも対応が進んでいる。しかし、段差や戸など、移動経路における車いすへの対応は未対応な場合が多い。
 旅客船では、車いすが持ちあげられることなく乗降できる構造や、バリアフリー客席の設置に8割以上で対応しており、フェリーより対応が進んでいる面もあるが、フェリーと比較して小型で狭隘であることから、出入口・通路の有効幅の確保や段差の解消については対応が遅れている。
 また、フェリーと同様に旅客船についてもバリアフリー法の基準適合義務の施行前後の新船のバリアフリー対応状況をみると、法施行後の2003年に就航した「せとなみ」では、回答のあった全ての項目において、バリアフリー法に基づく移動円滑化基準を満たしている。
 
(5)バリアフリー化に関するソフト面での対応
(1)ソフト面での対応状況
■施設のバリアフリー対応が不十分なため、乗降は係員による介助で対応。ターミナルへの車いすの配置や、歩行不自由者の優先乗船を実施
 バリアフリー化に関するソフト面での対応状況について、自由記述で回答を求めたところ、15社中11社から、係員による介助を行っているとの回答があった。回答のなかった他の事業者においても、係員による介助を行っている可能性がある。介助の具体的内容としては、体の不自由な方や車いすでの乗船者を船員が抱える等により客室まで案内したり、手荷物などを持ったりしている。
 また、ターミナルや船内に車いすを配備していると回答した事業者は、7事業者(天長フェリー、江崎汽船、十島村、いわさきコーポレーション、九州商船、奄美海運、瀬戸内町)であり、乗下船時に車いす使用者や身障者を優先させる対応を行っているのは、全体の1/3にあたる5事業者である(甑島商船、三島村、十島村、大島運輸、奄美海運)。
 その他、車いすでの円滑な利用に対応するものとして、客席の椅子を可動取っ手へ取替えるとの回答も1事業者あった(いわさきコーポレーション)。
 
(2)従業員(乗組員・地上係員)に対するバリアフリー化に関する教育・指導
■バリアフリー化に関する教育・指導を実施している事業者は1/3
 バリアフリー化対応の特別な教育・指導を行っている事業者はないが、定期、あるいは不定期の形で他の従業員教育の一環として行っている事業者は、全体の1/3にあたる5事業者である。
*定期的な従業員教育の一部:大島運輸
*入社時等の不定期な従業員教育:三島村、折田汽船、マリックスライン、奄美海運
 教育・指導の具体的な内容としては、特に気をくばり旅客の要望に応えられるよう指導する(奄美海運)、ビデオ等による教育・指導(大島運輸)、介助教育(三島村)などの例がある。
 
図4-1-13 バリアフリー化に関する教育・指導(n=15)
 
(3)高齢者・身障者等への運賃割引制度
■身障者は国のモデルに基づいてほぼ統一的に実施。それ以外の割引を実施する事業者はほとんどない
 ほとんどの事業者が、第1種身体障害者については「本人・介添人とも5割引」としている。また、第2種身体障害者については、「本人のみ5割引」としている。
 その他の身障者と高齢者については割引を行っている事業者は少なく、それぞれ1事業者のみとなっている。その他の身障者への割引を実施しているのは甑島商船(5割引)、高齢者への割引を実施しているのは三島村(年間10往復まで、一般会計より運賃を全額補助)である。
 
図4-1-14 高齢者・身障者等への運賃割引制度(n=15)
 
図4-1-15 身障者(その他)と高齢者の運賃割引制度(n=15)







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