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第4 電線布設に関する規則
 
 IEC 60092-352(1997)、船舶設備規程、船級規則(NK、ABS、LR及びNV)における規格及び規則のうち電線の機械的損傷防止に関するものを抜粋し表4-1に示す。
 電線の布設に関してはいずれの規格、規程及び規則においても電線が機械的損傷を受けるおそれのある場所に布設される場合にはがい装電線とするか、そうでない場合は電線管、覆い等で適切に保護をするという、基本的には同じ内容のものとなっている。機械的損傷のあるおそれのある場所については明文化されていないが、今回の調査での検討の中心となっている機関室はこれに該当する場所として考えられており、がい装電線を布設することで規則要件を満足させているといえる。なお、船舶設備規程では、機関室の配線工事は第一種配線工事とすることが要求されているが、がい装なし電線を機関室に布設する場合、この配線工事とするためには金属製管に納入した工事とすることが要求されている。
 この他、貨物区域等の電線にあっては各船級ともがい装電線であっても、金属覆い等で追加の保護が要求されている。
 以上より、船舶の電線の機械的損傷に関する規則とその規則に基づく電線の種類、布設要領を大まかにまとめると次のようになる。
1)居住区等機械的損傷を受ける可能性の非常に少ない区画にあってはがい装なし電線の布設が追加の保護なしに認められる。
2)機関室、倉庫等の機械的損傷を受け易いと考えられる場所にあっては、がい装電線の布設が認められる。また、がい装なし電線であっても覆い等で保護する追加の措置を講ずれば布設が認められる。
3)貨物区域等、荷役時の機械的損傷を受ける可能性が特に高い場所、波浪による打撃を受け易い場所の電線は、がい装電線であっても金属製電線管等で保護する追加の措置が必要となる。
 従って、規則上は居住区及び機関室のいずれにもがい装電線を布設することは要求されておらず、居住区にはがい装なし電線、機関室にはがい装電線と電線を使い分けて布設する船舶及び居住区及び機関室のいずれもがい装なし電線とし機関室の電路にあっては追加の保護覆いを施す船舶の存在があっておかしくない。しかしながら、国内で建造される船舶には居住区を含む船上のすべての電線をがい装電線としているものが圧倒的に多いのが実情である。この理由は、居住区はがい装なし電線、機関室はがい装電線を布設することで計画した場合であっても居住区の電線の多くは機関室から立ち上がってくるものが多く、がい装なし電線はがい装電線と分離して布設する旨の規則もあることから、居住区及び機関室ともがい装電線とした方が工事上の手間が省けることが一つの理由であろう。また、居住区及び機関室の両方にがい装なし電線を布設することで計画した場合には機関室のがい装無し電線には追加の保護が要求される個所がででくる。その機械的損傷を受けるおそれがあって追加の保護を施す必要のある場所は図面作成の段階及び承認の段階で判断することは非常に難しいこともあり、必然的にぎ装工事の段階で最終判断が下さざるを得ず、その時点で保護に関する追加の措置が要求されると工程に影響を及ぼすことになる。このような事態を避けるため最初からすべての電線をがい装電線で計画することになったとも考えられる。
 機関室へのがい装なし電線の布設を計画する場合には、追加の機械的保護を施さざるをえず、効果的かつ工事の手間の少ない保護要領を考える必要があろう。
 
表4.1 電線の保護に関する規則比較表
IEC 60092-352(1997) 設備規程(H15) NK H編(2003)
17機械的保護
a)機械的損傷の危険にさらされるケーブルは、その保護被覆(例えば、がい装又はシース)が適切な機械的保護を持っていなければ、適切な電線管又はケーシング内に収めなければならない。
b)例えば、船倉、貯蔵場所、貨物積付場所などのように特に機械的損傷を受ける危険にさらされるケーブルは、もし、船の構造物がケーブルに対して十分に保護できない場合には、がい装されていても、鋼製のケーシング、トランク又は電線管によって保護しなければならない。
c)ケーブルの機械的保護に用いる金属ケーシングは、腐食に対しして有効に保護しなければならない。

17 Mechanical Protection
a)In situations where there could be a risk of mechanical damage, cables should be enclosed in suitable conduits or casings, unless the cable covering(for example armour or sheath) provides adequate mechanical protection.
b)In situations where there would be an exceptional risk of mechanical damage, for example in holds, storage spaces, cargo spaces, etc., cables should be protected by steel casing trunking or conduits, even when armoured, if the ship's structure or attached parts do not afford sufficient protection for cables.
c)Metal casings used for mechanical protection of cables should be efficiently protected against corrosion.
245条(配線工事の種別)
配線工事は、第一種配線工事及び第二種配線工事の二種とする。

2 第一種配線工事とは、次に掲げるものをいう。
一 がい装鉛被ケーブル、がい装合成ゴムシースケーブル、がい装ビニールシースケーブルを用いた工事
二 鉛被ケーブル、合成ゴムシースケーブル又はビニールシースケーブルで、金属製管に納入したものを用いた工事

3 第二種配線工事とは、鉛被ケーブル、合成ゴムシースケーブル又はビニールシースケーブルを用いた工事をいう。

247条(第一種配線工事によらなければならない電路)
次に掲げる電路は、第一種配線工事によらなければならない。

一 機関室、ボイラ室、暴露甲板当における他動的損傷を受け易い場所に布設する電路
二 爆発し、又は引火し易い物質が発生し、蓄積し、又は貯ぞうされる場所に布設する電路
三 水密戸開閉装置、自動スプリンクラ装置、水中型ビルジポンプ、第297条の警報装置又は非常照明装置へ給電する電路

2 前項第一号に掲げる電路のうち特に強度の他動的損傷を受け易いものは、前項の規程によるほか、適当な保護をしなければならない。

248条(第二種配線工事によらなければならない電路)
酸性蓄電池室に布設する電路は、第二種配線工事によらなければならない
2.9.3 ケーブルの選定(抜粋)
ケーブルは敷設する場所により次の(1)から(3)によるシース及び(又は)金属がい装を施したものでなければならない。
(3) 暴露甲板、貨物倉、機関区域等他動的損傷を受けやすい場所に敷設されるケーブルは、金属覆を用いて保護される場合を除き、金属がい装を施したもの。

2.9.16 ケーブルの機械的保護

-1. 金属がい装のないケーブルが機械的損傷を受けるおそれのある場合には、ケーブルは、金属覆を用いて保護しなければならない。

-2. 貨物倉等で特に機械的損傷を受けやすい場所に敷設するケーブルは、金属がい装があっても、金属覆を用いて保護しなけければならない。

-3. ケーブルの機械的保護に用いる金属覆は、適当な防食処理を施したものでなければならない。

-4. 非金属製のダクト、コンジット等は難燃性のものでなければならない。冷蔵倉又は暴露甲板にはビニルコンジットを用いてはならない。
 
ABS Part 4 Ch.8 Sec. 4(2003)仮訳 LR Part 6 Ch.2(2002)仮訳 DNV Part 4 Ch.8(2001)仮訳
21.15 ケーブルの機械的保護
21.15.1 一般 船舶の通常の運航において機械的損傷にさらされるケーブルは金属がい装を持つものかそうでなければ機械的損傷から適切に保護されなければならない。

21.15.2 追加の保護 貨物倉内、ハッチ開口附近、海水にさらされる暴露甲板に布設されるケーブルは、がい装があっても、金属遮蔽、構造物の形状、管又はケーブルの適切な保護に有効な強度をもつ他の同等な方法で保護されなければならない。


21.15 Mechanical Protection for Cables

21.15.1 General
Electric cables exposed to risk of mechanical damage during normal operation of the vessel are to be of the type provided with metallic armor or otherwise be suitably protected from mechanical injury.

21.15.2 Additional Protection
Cables installed in locations such as within cargo holds, in way of hatch openings, open decks subjected to seas, etc., even of armored type, are to be protected by substantial metal shields, structural shapes, pipe or other equivalent means, which are to be of sufficient strength to provide effective protection to the cables. Metallic protections are to be electrically continuous and earthed to the hull. Non-metallic protections are to be flame retardant. Expansion bellows or similar where fitted are to be accessible for maintenance.

21.14.3 Drainage
Cable protective casings, pipes, and similar fixtures are to be provided with drainage.
10.9 ケーブルの機械的保護
10.9.1 機械的損傷にさらされるケーブルは、保護被覆(例えばがい装又はシース)が起こりうる損傷の原因に耐えうるものでなければ適切な保護覆いで保護すること。

10.9.2 船倉、貯蔵区画、貨物区画のように特に機械的損傷を受けるおそれのある場所に布設されるケーブルは、船体構造物で十分な保護をできない場合、がい装があっても金属保護覆いで保護しなければならない。

10.9.3 非金属製の保護覆い及び固定具はIEC 60092-101のの要件にしたがった難燃性のものでなければならない。

10.9.4 金属製保護覆いは腐食に対して有効に保護されなければならず、また、1.11の規則に従い有効に接地されなければならない


10.9 Mechanical Protection of Cables

10.9.1 Electric cables exposed to risk of mechanical damage are to be protected by suitable protective casings unless the protective covering (e.g. armour or sheath) is sufficient to withstand the possible cause of damage.

10.9.2 Electric cables installed in spaces where there is exceptional risk of mechanical damage such as holds, storage spaces, cargo spaces, etc., are to be suitably protected by metallic protective casings, even when armoured, unless the ship's structure affords adequate protection.

10.9.3 Non-metallic protective casings and fixings are to be flame retardant in accordance with the requirements of IEC Publication 60092-101.

10.9.4 Metal protective casings are to be efficiently protected against corrosion, and effectively earthed in accordance with 1.11.
503 ケーブル及び電路の機械的保護
a)ケーブルは機械的損傷を被らないよう布設されなければならない。もし必要であれば、ケーブルは電路に板、枠又は格子を施すかケーブルを管内に布設するかして保護されなければならない。

b)機関室、ボイラー室及び同様な区画の床下でその区画における保守作業の間に機械的損傷のおそれにさらされるケーブルはa)に従い保護されなければならない。

c)機械的損傷のおそれにさらされるすべての貨物倉区域の暴露部甲板上のケーブル及び貨物倉を通過するケーブルは少なくとも4mm厚さの鋼製の板金、枠又は格子で保護するか鋼管内に布設されること。

注)孔付き板金、網の目大きさが25mmの格子で厚さが4mm厚さの鋼製板金と少なくと 同じ強度のが代わりに認められる。積載される貨物及び荷役装置が電路に触れる可能性のない場合、免除してもよい。ケーブルがアルミニウム構造物に布設される場合、鋼に代えてアルミニウムを使用することができる。


503 Mechanical Protection of Cables and Cable Runs

a)Cables shall be so installed that they are not likely to suffer mechanical damage. If necessary, they shall be protected by providing the cable runs with covers of plates, profiles or grids, or by carrying the cable in pipes.
b)Below the floor in engine room and boiler rooms and similar spaces, cables that may be exposed to mechanical damage during maintenance work in the space, shall be protected in accordance with a).
c)On weather decks in cargo hold areas, and through cargo holds, all cables that may be exposed to mechanical damage, shall be protected by covers of steel plates, steel grids or profile of at least 4 mm thickness, or by being carried in steel pipes.

Guidance Note
As an alternative the covers can be made of perforated steel plates or grids with mesh opening maximum 25 mm, having at least the same impact strength as a 4 mm steel plate. Exemptions can be accepted when the location of the cable run is in such that in all probability cargo or cargo handling gear cannot come into contact with the cable run. When cable runs are fixed to aluminium structures, aluminium may be used instead of steel.







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