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第3 船級承認船用電線
 
 日本海事協会では国内製造者の電線とともに海外製造者の電線も承認している。海外の製造者で日本海事協会から承認されたものは2003年12月現在、中国、ドイツ、フィンランド、韓国、シンガポール、オーストラリアの6カ国9社ある。承認された船用電線の仕様は大きく分けると次の3種類といえる。
1)JIS C 3410 船用電線 適合の日本型電線
2)欧州型軽量電線
3)上記2つの中間型
 日本型電線のもととなっているJIS C 3410は1961年に制定された。その後、1976年にIEC Publication 92-3 Electrical installations in ships に準拠するよう改正されたが、近年、IEC規格の見直しが実施され、IEC 60092-300番台シリーズとして新たに規格が制定された。1999年にはJIS C 3410もそれに全面的に合わせるよう改正され、現在の規格となっている。従って、JIS規格品は若干の相違点があるだけでIEC規格品と言って差し支えない。JIS規格とIEC規格の相違を表3-1に示す。
 JIS規格及びIEC規格で規定されている電線の絶縁物、シースの材料の種類は表3-2のとおりである。
 
表3-2 絶縁物及びシース材料
  JIS IEC
絶縁物 EPゴム(P)
けい素ゴム(SR)
ビニル(Y)
架橋ポリエチレン(C)
EPゴム(EPR)
けい素ゴム(S95)
ビニル(PVC/A)
架橋ポリエチレン(XLPE)
ハロゲンフリーEPゴム(HF EPR)
ハロゲンフリー架橋ポリエチレン(HF XLPE)
ハロゲンフリーけい素ゴム(HF S95)
ハロゲンフリー架橋ポリオレフィン(HF 85)
シース クロロプレンゴム(N)
ビニル(Y)
合金鉛(L)
クロロプレンゴム(SE1)
ビニル(ST1又はST2)
ハロゲンフリー熱可塑性物質(SHF1)
クロロスルホン化ポリエチレン又は塩素化ポリエチレン(SH)
ハロゲンフリーエラストマー又は熱硬化性物質(SHF2)
上記に加え同等材料の使用も可
注) ( )内は略号
 
 表3-3に日本海事協会で承認された代表的な電線の構造を示す。日本型電線は、EPゴム又はビニルを絶縁物とし、ビニル又はクロロプレンをシースとするものが一般的であるが、動力、照明用電線はEPゴムを絶縁物とし、ビニルをシースとするものが主体である。がい装なしの電線が使用されることは稀であり、国内で建造される船舶に布設されるものは鋼線あじろがい装付き電線が殆どであるといえる。韓国、中国、シンガポール製電線も承認されているが、韓国及び中国製電線は日本型電線と類似しており、シンガポール製電線も重量が少し重くなるが概ね類似しているといえる。
 欧州型軽量電線はIEC 60092-353 Electrical installations in ships - Part 3 Single and multicore non-radial field power cables with extruded solid insulation for rated voltages 1kV and 3kV に適合する電線である。前述のとおり、日本型電線の適用規格であるJIS C 3410もIEC 60092-353と同等の規格であが、日本型電線がEPゴム絶縁、ビニルシースを主流にしているのに対し欧州型電線は架橋ポリエチレン又は架橋ポリオレフィンを絶縁物とし、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリオレフィンをシースとしているものが主流である。がい装なし電線、がい装電線のいずれも一般的であるが、あじろがい装は銅製が殆どである。構造的には日本型電線が導体、絶縁物、シース、がい装、防食層(ビニル)の順で外層へ構成されているのに対し、欧州型軽量電線はがい装なし電線では導体、絶縁物、シースの順、がい装電線では導体、絶縁物、がい装、シースの順で外の層へ構成されている。従って、がい装を最外層とする構造の電線は存在しない。なお、電線の円形状を確保するために、介在物が適用されるが、日本型電線では絶縁物とシースの間に介在させるが、欧州型電線ではがい装なしの場合絶縁物とシースの間に、がい装電線では絶縁物とがい装の間に介在テープが置かれている。がい装なし電線ではシース自体で円形状を保つため充実型電線とすることもあるが最近ではあまり見かけない。
 日本型電線と欧州型電線の中間的なものと言えるのがオーストラリア製電線であり、ポリエチレン絶縁、ポリエチレンシースを有するが、がい装無し電線の場合構成は日本型及び欧州型と同じでその重量は日本型と欧州型の中間といえるが、がい装付きの場合、ケーブルの構成はは欧州型、重量に関しては日本型といえる。なお、導体のサイズは3心のもので35mm2であるが、これはオーストラリアで多く建造されているアルミ製高速船を対象に製造されたものとも思われ、この種の船にはがい装なし電線を、鋼船にはがい装電線の使用を考慮しているとのことである。
 ドイツの製造者の電線で承認されたものは、計装用多心電線のみである。
 
表3-1 JIS C 3410と対応する国際規格との対比表
JIS C 3410 船用電線
IEC 60092-350 船用電気設備―第350部 船用電力ケーブル 一般構造及び試験要求事項
IEC 60092-351 船用電気設備―第351部 船用電力、通信及び制御ケーブルの絶縁体材料
IEC 60092-353 船用電気設備―第353部 定格電圧1kV及び3kV押出固体絶縁単心及び多心非等電界電力ケーブル
IEC 60092-359 船用電気設備―第359部 船用電力及び通信ケーブルのシース材料
IEC 60092-375 船用電気通信ケーブル及び無線周波ケーブル―第375部 一般計装、制御及び通信ケーブル
IEC 60092-376 船用電気設備―第376部 船用多心制御ケーブル
  (I)JISの規定内容 (II)国際規格番号 (III)国際規格の
規定内容
(IV)JISと
国際規格の
相違点
適用範囲 船内に用いるケーブル及び絶縁電線について規定 60092-350
60092-351
60092-353
60092-359
60092-375
60092-376
船内に用いるケーブルについて規定 JISはコード及び絶縁電線を追加規定
引用規格 引用規格を記載 同左 JISの引用あり
種類及び記号 種類及び記号を規定 - 種類及び記号の規定なし JISは種類及び記号を規定
特性 構造、導体抵抗、耐電圧、絶縁抵抗、曲げ、耐炎性、耐延焼性、材料について規定 60092-350
60092-351
60092-353
60092-359
60092-375
60092-376
構造、導体抵抗、耐電圧、絶縁抵抗、耐炎性、材料について規定 1. コードに適合する曲げを追加規定
2. 耐延焼性を追加規定
材料及び構造 導体、絶縁体、介在、シース、がい装などについて規定 同左 1. 介在物にジュート及び紙を追加規定
2. シース外径及び仕上外径の公差を規定
試験方法 構造、導体抵抗、耐電圧、絶縁抵抗、曲げ、耐炎性、耐延焼性、材料について規定 構造、導体抵抗、耐電圧、絶縁抵抗、耐炎性、材料について規定 1. コードに適合する曲げを追加規定
2. 耐延焼性を追加規定
備考1. 対比項目(I)及び(III)の小欄で○は該当する項目を規定している場合、―は規定していない場合を示す。
   2. 対比項目(IV)の小欄の記号の意味は次による。
   =:JISと国際規格との技術内容は同じである。ただし軽微な技術上の差異がある。
   ≠:JISは国際規格と技術内容が同等でない。
 
表3-3 ケーブル構造比較表
製造国 日本 日本 フィンランド フィンランド オーストラリア オーストラリア
適用規格 JIS C 3410 JIS C 3410 IEC 6002-353 IEC 6002-353 IEC 6002-353 IEC 6002-353
電圧 0.6/1kV 0.6/1kV 0.6/1kV 0.6/1kV 0.6/1kV 0.6/1kV
記号 (S/D/T)PY (S/D/T)PYC LKM-HF LKSM-HF KG KF
絶縁物 EPゴム EPゴム XLPE Plastic
(≦16mm2)
HF85 Plastic
(≧25mm2)
XLPE Plastic
(≦16mm2)
HF85 Plastic
(≧25mm2)
Thermoplastic
(ポリエチレン)
Thermoplastic
(ポリエチレン)
介在物 有り 有り 有り(テープ) 有り(テープ) 無し 有り(テープ)
インナー
シース
ビニル ビニル Polyolefine
Plastic
- Thermoplastic
(ポリエチレン)
充実型
-
がい装 無し 有り
(鋼線あじろ)
無し 有り
(銅線あじろ)
無し 有り
(銅線あじろ)
アウター
シース-
- - - Polyolefine Plastic - Thermoplastic
(ポリエチレン)
サイズ
範囲
1C x 1.5-300
2C x 1.5-185
3C x 1.5-185
1C x 1.5-300
2C x 1.5-185
3C x 1.5-185
1C x 6.0-300
2C x 1.5-6.0
3C x 1.5-150
1C x 6.0-300
2C x 1.5-6.0
3C x 1.5-150
1C x 4.0-35
2C x 1.5-6.0
3C x 1.5-35

2C x 1.5-6.0
3C x 1.5-4.0
仕上がり
外径
(mm)
重量
(kg/km)
3C x 1.5: 11.2
(150)
3C x 25: 23.4
(1,060)
3C x 185: 53.7
(6,640)
3C x 1.5: 12.5
(245)
3C x 25: 24.7
(1240)
3C x 185: 55.5
(7,230)
3C x 1.5: 9.5
(100)
3C x 25: 22.0
(950)
3C x 150: 47.0
(5,125)
3C x 1.5: 11.5
(165)
3C x 25: 24.0
(1090)
3C x 150: 49.0
(5,550)
3C x 1.5: 9.6
(139)
3C x 25: 23.9
(1180)
3C x 1.5: 10.6
(185)
3C x 4.0: 13.8
(340) 
 
製造者 シンガポール 中国 中国
適用規格 IEC 6002-353 IEC 6002-353 IEC 6002-353
電圧 0.6/1kV 0.6/1kV 0.6/1kV
記号 MCSO-RFP
MCSO-OH-REP
CEV CEV90
絶縁物 ポリエチレン EPゴム EPゴム
介在物 有り(テープ) 有り 有り
インナー
シース
ビニル ビニル ビニル
がい装 有り
(鋼線あじろ)
無し 有り
(鋼線あじろ)
アウター
シース
ビニル -  
サイズ
範囲
1C x 1.0-240
2C x 1.0-35
3C x 1.0-240
1C x 1.0-300
2C x 1.0-120
3C x 1.0-185
1C x 1.0-300
2C x 1.0-120
3C x 1.0-185
仕上がり外径
(mm)
重量
(kg/km)
3C x 1.5: 13.3
(267)
3C x 25: 27.2
(1475)
3C x 185: 50.7
(7100)
3C x 1.5: 11.7
(154)
3C x 25: 23.8
(1,072)
3C x 185: 53.3
(6,674)
3C x 1.5: 13.2
(250)
3C x 25: 25,3
(1,262)
3C x 185: 55.3
(7,218)







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