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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/04/15 産経新聞朝刊
【正論】甲子園短期大学学長 加地伸行 全国に「国防学校」を作る
 
◆囲碁・将棋が正式科目
 北朝鮮からのミサイル一発は、日本のこの五十年において、他国からの攻撃の可能性をおそらくはじめて実感することとなった重要なできごとである。
 しかし、「のどもと過ぎれば熱さを忘れる」ということわざのごとく、もはや日本人の多くはこの事件を忘れつつある。
 どうして日本人はこのように「諸国民の公正と信義を信頼」(憲法前文)するというお人好しなのだろう。そのような思いであったところにこんな新聞記事が目に入った。
 大阪府教育委員会は、「囲碁」や「将棋」を府立高校の授業の正式科目にするという。これは、昨春の沖縄県に続き、全国で二例目とのこと。その理由は、すでに「芸能文化」という選択科目が設置されている実態を踏み、囲碁や将棋は伝統文化であり、これを学ぶことにより専門知識や技術の習得、思考力を高めるトレーニングになり、国際社会にも通用するからであるという。
 愚かな話である。中学校までの教育は、一般的基礎力の養成である。問題は高校である。一つは、さらに基礎力を高める普通科と、いま一つは、初級の技術者・技能者を養成する実業系(商業科など)とに分かれる。
 普通科は、卒業後、さらに上級学校(大学・短大・専門学校など)への進学を想定しての教育を行っており、本来、囲碁・将棋に打ち興ずるひまなどはない。実業系も専門教育をこなすのに忙しく、同様である。
 にもかかわらず、囲碁・将棋の類を正式科目に入れるというのは、一歩譲って善意に解釈するとすれば、高校教育の多様化という観点があるからだろう。事実、大阪府教委は同時にチャレンジタイムという教科を新設し、「体験活動」という科目を設け、校外での学習活動を単位認定するという。
 
◆高校と同格の国防学校
 それならば、教科や科目というレベルではなくて、専攻する科そのものとして、実業系分野をさらに多様化して社会の要求に応えるというのが本筋というものであろう。
 これまで、実業系として商業科・工業科・農業科・音楽科……といろいろな科がすでに開かれているが、私はそこに新たに現代日本にとって必要な科を加えることを提唱する。
 それは、国防科あるいは防衛科である。
 と述べたとたん、反対の大合唱が起ることであろう。とりわけ、日教組・全教といった、社会主義国家建設を理想とする時代錯誤集団がそうであろう。
 それなら、こういう連中相手に貴重なエネルギーを消耗することはやめておき、高校課程においてではなくて、自衛隊自身が都道府県単位で、高校と同格の国防(あるいは防衛)学校を作ればよい。
 現在、自衛隊では、十八歳以上二十七歳未満の隊員募集の他、十五歳・十六歳の自衛隊生徒を募集している。
 この自衛隊生徒がいわゆる高校生の年代に相当している。自衛隊生徒は陸・海・空に分かれて訓練を受けているが、同時に高校と同格の教育を受け、高校卒業の資格を得ることができるようにしている。しかし、自衛隊生徒の学年募集人員は、陸で約三百、海・空それぞれ約七十、計約四百五十人にすぎないのである。
 世の中さまざまであるから、青春を囲碁・将棋などに興ずる高校生がいることであろう。しかし一方、国防を真剣に考える少年もいるのである。自衛隊生徒がそれである。全国から集まった自衛隊生徒は、課程修了後、優秀な隊員として活躍していると聞く。
 それはそうであろう。ただ漫然と高校進学する者に比べて目的意識が明確だからである。けれども、こういう自衛隊生徒の制度は、あまり世に知られていない上、なんと言っても募集人員が少ない。各都道府県に自衛隊生徒の学習機関−−すなわち国防(防衛)学校を設置すれば、もっと集まるであろう。もちろん男女ともにである。
 
◆魅力ある学科で勝負
 現在、周知のように、幼稚園から大学に至るまで、生徒減で各校は苦しんでいる。大阪府教委が囲碁・将棋を正式科目にするなどというのは、推測するに、生徒集めの、下品な言いかたをすれば「客集め」の手段というところが本音であろう。
 そのような理念なき高校経営に対して、自衛隊は真向から国防という理念の下に各都道府県に進出して、意欲を持った中学校三年生や高校一年生の期待に応えるべきである。
 第一、今は競争原理の時代ではないか。生徒減なればこそ、高校の各科に対して、魅力ある科、目的性のある科、生きがいのある科を前面に出し、真の競争をすべきである。それが国民的要求である。
 わが国の自衛隊の優秀さは聞いている。しかし、今後、少子化の影響なしとしない。隊員の募集を自衛隊生徒において充実させること、それもいわゆる高校(特に普通科)と競争して勝ち取ること、そのような地道な努力が国防の基礎となる。また、自衛隊生徒の増加が自衛隊自身の国防意識をさらに高めてゆくことになるであろう。
 今こそ防衛庁は高校課程相当の国防(防衛)学校の全国的設置を企画すべきである。(かじ のぶゆき)
◇加地伸行(かじ のぶゆき)
1936年生まれ。
京都大学文学部卒業。
名古屋大学助教授、大阪大学教授。現在、大阪大学名誉教授。


 
 
 
 
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