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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/10/06 産経新聞朝刊
【教育再興】(97)家庭教育(1)学級崩壊(上)子の問題に関心薄い親
 
 席に座って授業が受けられない。先生の話を聞かない。高校のいわゆる「教育困難校」ではなく、小学校低学年からの「学級崩壊」が深刻化している。学校現場で目立ち始めたのは、こんな言葉すらなかった五年以上も前のことだという。
 
 北関東の公立小学校三年生のクラス。算数の授業で「こんな問題、わかるかよ」「つまんねえな」「今日の給食なんだっけ」…。
 授業を無視するように、五人の男子児童が次々に大声をあげる。担任は四十代の女性教諭。注意しようとしても、子供は「近づくんじゃねえよ」とそっぽを向く。クラスではこの五人を中心に、チャイムが鳴っても席につかず、教室を出たり入ったり。
 ようやく席につき、授業が始まるのは、十五−二十分たってからだ。このクラスには、チームティーチングを行う教諭が助っ人に入り、何とか授業を進めている。
 当初は、まわりの児童から「やめなよ」と注意する声もあったが、今では騒音に慣れるかのように傍観。塾通いをしている子も多く、授業の遅れを気にする様子はあまりない。
 担任は、何度か問題児童の保護者と話し合いの機会をもった。授業中の子供の様子を伝えたが、親からの反応は「へえ、そうですか」と答えるだけで、「糠(ぬか)に釘(くぎ)の状態」(学校関係者)。「あの子が悪い」「うちの子は影響されているだけ」と責任転嫁の声さえあった。
 首都圏の小学二年のクラス。「先生の言うことを全然聞かない」「授業中に床に寝転んでしまう」など学級崩壊に頭を痛めた三十代の担任教諭は、問題児童の保護者を呼んで協力を求めたが、ある母親は「学校での問題は学校で解決してほしい」、別の父親は「あなたの指導が悪い」など反応は鈍かった。
 学級崩壊について教員から相談を受けた経験のある臨床心理士は「全体でも集中力のない子供や自己中心的な子供が目立つようになった。祖父母を含め、親はものを買い与えることが愛情表現と考えている世代。幼稚園では子供の髪を茶髪に染めたり、ブランドの服を着せるなどペットのように扱っている親がいる」と家庭の問題を指摘。
 さらに「こうした親たちは昭和五十年代の“荒れる学校”の時代に中学を卒業した世代で、学校教育への期待感がなく、教師との信頼関係もない。教師の指導力のなさではすまされない背景がある」と話す。
 
 茨城県の市立小学校で二年生のクラスを受け持った三十代半ばの女性教諭は、同じ学年のわが子との関係がうまくいかず、自らの子育てへの不安がクラスにも影響した。
 クラス替えが行われ、一学期に入って間もなかった。初めのうちは、いつも二人の男の子が先陣を切った。授業に入ってしばらくすると、「ねむいよ」「面白くねえな」と大声で騒ぎ、教室を走り回った。
 ある時から、一人の女の子も首謀者に加わるようになった。授業中に他の子供をひっぱたき、筆箱を窓から捨ててしまう。後は五月雨(さみだれ)式だった。うるさくて、隣の教室からも注意された。
 大声を出すといったんは静まるものの、また騒ぎだし、さらに注意すると、「くそばばー」と罵声(ばせい)が飛んだ。子供たちは宿題をしない、忘れ物も増えた。
 「子供がけんかをしたのに連絡帳に書いてなかったから相手の親に謝れなかった。嫌な先生」と保護者から言われた。
 「今年はダメな子ばかり集まって…」。女性教諭は初め、そう思った。が、やがて、「私は母親としてダメなのだから、教師としてもダメなのは当然」と教壇に立つ意欲すら失った。
 管理職に相談すると、「力不足」と言われた。二学期から、クラスを持たない他の教師と、校長も空き時間に授業の応援に入った。教室の子供たちは静けさを取り戻したが、わが子の親への反抗は収まる様子はなかった。
 講師からやっと本採用になった二十代半ばの体育大出身の女性教諭は、自分で希望してつくった新体操のクラブ運営に失敗し、担任する四年生のクラスの授業もうまくいかなくなった。この教諭は結婚を機に、教壇を去った。
 学校側が明るみに出るのを避けていることもあって、調査や統計はないが、学級崩壊は特殊なケースでも他人事でもなくなりつつある。日本の教育が水面下で大きな危機を迎えている。
               ◇
 中央教育審議会は今年六月、「幼児期からの心の教育」について答申し、家庭のしつけの重要性を強調した。小学校の低学年にも及ぶ学級崩壊も、教師の力不足に加えて、背景には家庭の教育力の低下がある。戦後日本の教育で、最も危機的な状況にあるといわれる家庭教育に焦点をあて、課題と問題点を探る。
 
■学級崩壊
 学級担任が子供たちを統制できず、授業が成立しない状況で、小学校高学年だけでなく低学年でも目立つようになった。これまで学級経営をうまくやってこられたベテラン教師の学級でも、授業不成立が起きている。「学級王国」といわれるように、担任教諭は問題を他の教員にも隠しがちで、これまであまり表に出なかったが、1−2年前から「学級崩壊」という言葉が教育現場やマスコミに登場するようになった。今年1月の日教組の教研集会でも、生徒指導や子供の健康をテーマにした分科会で、授業が成立しない小学校の様子やいらだつ子供の問題が数多く報告された。
 
 あなたの周辺で起きた教育問題に関する事例や試みについて、情報や意見を手紙でお寄せください。あて先は〒100−8078 東京都千代田区大手町一ノ七ノ二、産経新聞東京本社(FAXは03・3275・8750)の社会部教育再興取材班まで。


 
 
 
 
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