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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/10/07 産経新聞朝刊
【教育再興】(98)家庭教育(2)学級崩壊(下) 悩み相談できない教師
 
 文部省の十一年度予算の概算要求に、「学級崩壊」という言葉は出てこない。具体的な調査や対策として、それに代わる項目もない。
 教育困難校といわれた茨城県立鹿島灘高校=「教育再興・心を培うシリーズ」(一月)=を、教員グループの中心となって立ち直らせた笠井喜世・茨城大教育学部講師(六〇)は最近、同県内のある地域の校長、教頭、教務主任約百五十人を集めた会合で、「学級崩壊を抱えている学校」を問うたところ、一人の手も挙がらなかった。
 「管理職は学級崩壊の意味を知らないか、隠している。いじめや不登校の時と同じだ」と笠井さんは指摘する。当事者の教師が、管理職に報告しないことも一つにはある。
 笠井さんは会合の席で知り合いの教育長に、「きちんと現状を把握しておかないと、問題がボコボコと出始めたとき、取り返しのつかないことになりますよ」と警告した。
 
 五年ほど前、笠井さんがカウンセラーとして教員向けの学校教育相談を受け持ち、県内の小中学校を定期的に回っていたとき、面識のあった小学校の四十代の男性教諭が個人面談でこう切り出した。
 「授業が成立しないんです。私の能力がないのか。長い教員生活でこんなことは一度もなかったのに・・・」
 新しいクラスがスタートし、一学期が終わろうという時期。管理職一歩手前のベテラン教諭は落ち込んだ様子で、ぼそぼそと言葉少なに語った。それまで管理職にも、同僚にも相談できずにいたという。
 笠井さんは「ベテラン特有の『手抜き授業』が原因ではないか。もっと子供と接してみたら」とアドバイスしたが、他の学校でも注意して聞いてみると、学級崩壊現象が予想以上に広がっていた。
 ベテラン教師は「自分が年をとり、やってきたことが通じなくなった」と悩み、若い教師は「経験不足。辞めたい」と言った。年配の女性教師は多くを語りたがらなかった。
 
 今年六月十九日、NHKスペシャルで放映された「荒れる心にどう向き合うか」の一回目、大阪府堺市立小の一、四学年のクラスを舞台にした「広がる学級崩壊」は九・三%の高視聴率を記録した。
 今年一月栃木県で起きた中学一年生による女性教諭刺殺事件を契機に、番組化を検討していたという担当の永田浩三チーフプロデューサー(四三)は「荒れている学校を選んだわけではなく、『いいも悪いも含めて学校の日常を取材させてほしい』とお願いし、五月の連休明けから一カ月間、カメラを回させてもらった。職員会議も含め、通常の取材や授業参観では見えないような現場教師の悩める姿をとらえることができた」と話す。
 ここ数年、普通の学校に急速に広がる学級崩壊の背景について、笠井さんは(1)ガキ大将のいない環境で育った現代の子供に集団適応力がない(2)就学前からおじいさん、おばあさんの話を聞く訓練をしていない(3)親子の会話がない(4)幼稚園、保育園の自由保育や少子化により、自由奔放に遊ぶことばかり身についている−など家庭や地域の教育力の低下をあげる。
 同時に、「社会や家庭の環境が学校教育に深くかかわる時代にあって、教育は総合社会学でなければならないのに、現場の教師は依然、教育学としてしかとらえていない」と学校教育の欠陥も指摘する。
 「学校の先生はキャパシティー(力量や人間的な器)が小さい」という笠井さんは、教師が企業研修などに積極的に出て社会的視点を持つ一方、問題児童を隔離するのではなく、正面から矯正する必要性を訴える。そして、「学級崩壊のありのままの姿を、親や地域の人たちに見てもらったうえで、地域や社会の問題として取り組んでいかなければいけない」としている。
 小渕内閣発足前日の今年七月二十九日。笠井さんは町村文相(当時、現外務政務次官)に呼ばれ、東京・霞が関の文部省三階の大臣室を訪ねた。笠井さんは学級崩壊や教育困難校の現状について説明し、早期の取り組みを求めた。
 しかし、その後も、文部省は学級崩壊については、「国としては認識していない」(初等中等教育局)としている。
 
■家庭教育調査
 学級崩壊が始まった時期にあたる平成5年、文部省が家庭教育に関する国際比較調査(日本・韓国・タイ・アメリカ・イギリス・スウェーデンの6カ国)を行ったところ、「5歳の時に一人でできるもの」について、日本は「日常のあいさつ」83.2%(5位)▽「行儀のよい食事」72.0%(最下位)▽「遊んだ後の片付け」60.9%(同)−と成績が悪かった。また、同年、総理府が全国の20歳以上の1万人を対象に「家庭の教育力が低下している理由」について複数回答で聞いたところ、(1)「過保護、甘やかしすぎな親の増加」64.9%(2)「しつけや教育に無関心な親の増加」35.0%(3)「外部の教育機関に対する教育の依存」33.1%−の順だった。


 
 
 
 
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