日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/01/20 産経新聞朝刊
【主張】教育改革へ詰めの論議を
 
 協調の時代に入った教育界は、学校完全五日制を着地点とする当面の改革で合意が形成されたかに見える。
 だが、ここ数年、文部省当局から矢継ぎ早に打ち出された施策への認識では、行政側と実践現場でかなりの違いがある。このほど盛岡市で開かれた日教組の教育研究全国集会からも、そのことが痛感された。とりわけ高校改革をめぐって、現場の不協和音が強い。
 推薦入試は「基準があいまいで、生徒や父母の不信感を招いている」「推薦を意識した生徒会活動や部活動が目立つ」「成績のよい生徒を早く確保する青田買いに利用されている」などの弊害が指摘された。廃止した方がよいという意見が出る一方で、学力試験一本でよいのか、と反論もあり、明確な答えは導き出せなかった。
 改革の目玉とされる総合学科制についても、現場の評価は定まらない。多様なメニューを用意し、基礎基本と適性や興味・関心に合った系統的な学習を保障するこの制度は望ましい高校像に近い。だが、各県に一、二校程度の設置では、成果は期待薄だ。それどころか「新たな学校格差の一因になる」という指摘も否定できない。専門高校(職業科)、普通科を問わず、すべての高校を巻き込んだ総合学科への改編を急ぐべきだろう。
 中央教育審議会で審議されている公立の「中高一貫教育」にしても、限られた設置では、受験競争や学校格差に拍車がかかる恐れがある。及び腰での中途半端な改革は新たな問題を生む。高校改革では「適格者主義」の撤廃や希望者全員入学という問題についても論議を煮詰める必要がある。
 現行五日制での教育内容をどうするかも現場の大きな悩みだ。六日制学習指導要領の授業時間数にこだわっていては、学校スリム化は程遠い。古い学力観に基づいた学力向上運動に血道を上げる自治体の過密授業は論外だが、つじつま合わせの削減型「薄められた六日制」も安易すぎる。新しい学校像をイメージした教育課程の弾力化が欠かせない。教科の枠を超えた総合学習や部活動の地域への移行などの実践報告が増えたのはよい傾向だ。その上、「総合学習で系統立った知識の習得は大丈夫か、戦後一時期の『はい回る経験主義』に陥ってはならない」と、要所を押さえた発言もあり、心強い。
 教育改革は橋本政権の重要政策課題に加えられた。その手順の明確化はもちろん、いま進行中の施策の総点検が急務だ。そのためにも、教育現場と行政側による詰めの論議がほしい。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら

日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
12位
(35,650成果物中)

成果物アクセス数
532,327

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2023年3月18日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【中国について】
2.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
3.私はこう考える【天皇制について】
4.私はこう考える【国連について】
5.私はこう考える【ダム建設について】
6.私はこう考える【死刑廃止について】
7.私はこう考える【北朝鮮について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【憲法改正について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から