日本財団 図書館


2002/04/05 読売新聞朝刊
[眼]学校週5日、不安のスタート 公立の「反乱」 土曜補習、独自教材
 
◆「学力で他の自治体に負けられぬ」
 子どもが自ら学び考える力を育てようという新しい教育課程が五日、公立小中学校で本格的にスタートした。土曜日をすべて休みとする「完全学校週五日制」と、学ぶ内容大幅減の「新学習指導要領」の実施がその柱だが、子どもたちはともかく、保護者には五日制を歓迎するムードは低い。
 「まさか、土壇場で五日制に反発を食らうとは思わなかった。不況の中での実施というタイミングが最悪だった」。文部科学省の幹部が浮かぬ顔で言う。
 先月の読売新聞の世論調査では、完全五日制への反対意見が六割を占めた。背景には、「テレビゲームの時間が増えるのでは」「学力が低下するだけではないのか」との懸念がある。
 保護者の不安に敏感な私立の小中高校では、45%が完全五日制実施にそっぽを向いた。あわてた同省は先月末、五日制の趣旨をうたったパンフレットを作り全国にばらまき始めたが、「家族の触れ合いを大切に」「子どもは地域で育てましょう」といった内容は、共働きや、週に二日も休めない家庭も多い現状にはむなしく響く。
 そんな中、自治体レベルでの、公立校の“反乱”が始まった。東京都教委によると、都立高の約二割が今年度から土曜の「補習」を予定しており、検討中のところも五割ある。これらは原則自主参加だが、進学校の八王子東高は全員参加の“土曜授業”を年十二回行う。地域の中学生や父母らへの「公開授業」という行事の扱いにすることで実施可能になったという。
 殿前康雄校長は、「完全五日制では授業時数が短く厳しい。正直、私立との競争も意識した」と話す。小中学校でも、補習の動きは続出している。
 これまで「ゆとり」路線に執着してきた同省が、最近になって「学力向上」を強調し始めたことも、五日制への不信を増大させた。
 同省は当初、新課程での「学習内容厳選」にこだわり、それ以上の内容を子どもに教えることは想定していなかった。五日制と、体験活動重視の「総合的な学習の時間」の導入で授業時数が減る。それは「生きる力」を植え付けるためなのだから、知識や技能などの「旧学力」の低下は容認する――そんな姿勢だった。
 しかし今は、「伸びる子は伸ばして」と旗を振っている。小野元之次官は「土曜に授業の延長のようなことをするのは好ましいとは言えない」とするが、地域のニーズに応じた取り組みに「NO」とは言わない。
 千葉県野田市は、新指導要領などへの不安から独自の副教材の作成を決めた。「他の市町村の子どもと学力差がつくような事態には絶対にさせない。これからの教育は自治体間でも差が生じるだろう」と根本崇市長は予言する。
 同省初等中等教育局の幹部は、「我々は、自治体の取り組みを抑え込むようなことはしない。土曜に補習をしようが、『総合学習』の時間に計算ドリルをしようが、ニーズと信念があるなら構わない」ときっぱり。最近、「校長が土曜の補習に現職教員を動員しても問題はない」との見解まで用意した。それは土曜授業復活の容認を意味する。
 完全五日制とは何だったのか。早くもその根底が揺らぎ始めている。

 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。

「読売新聞社の著作物について」








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION