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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/01/28 毎日新聞朝刊
[社説]教育 脱偏差値の意図を生かそう
 
 埼玉県教委に端を発した業者テストの偏差値追放は、当時の鳩山文相の強い支持と指導で、ついに高校入試改革の一環として組み込まれることになった。
 文部省の高校教育改革推進会議が二十六日まとめた報告書に、それが示されている。教育現場からの偏差値追放は、「個性重視」「新しい学力観」など最近の教育改革の流れの中に位置づけられるものだ。その意味でも意義のあることだ。
 報告書は、業者テストの偏差値が生徒の能力の一部を示しているにすぎないことを指摘、これを進路指導や入学選抜の資料に利用することの弊害を説き、「学校現場で一切使うな」と明確に述べている。
 これまで文部省は一九七六年と八三年の二度にわたって「安易に偏差値に依存するな」と、あいまいな通知を出してきたが、今回は、はっきりと「禁止」を打ち出した。その思い切った措置を評価したい。
 具体的な処方せんとして報告書は中学校側に対して、偏差値を進路指導に利用しないこと、高校に偏差値を提供しないこと、業者テストの実施に一切関与しないことを強く求めている。
 高校側に対しては、偏差値の提供を中学校だけでなく学習塾、生徒、親にも求めないこと、偏差値で選抜しないことをあげ、特に私立高校には、早い時期の推薦入学を慎むよう要望している。
 偏差値を進路指導に使わないことになると「現場は混乱する」との声がある。だが報告書は「生徒の興味や関心、能力、適性、優れた点、長所をよく見て」進路指導をするよう促している。これこそ本来の進路指導というべきだろう。
 学校現場に、偏差値に代わるモノサシを求める声もあるが、これは形を変えた画一的進路指導を生むことになる。あくまでも生徒一人ひとりの希望に沿って、多様に行うのが進路指導の本筋だ。
 しかし報告書には“抜け穴”がある。学校外で行う業者テストまで禁止していないことだ。行政という立場上、民間の行為に関与できないからだろうか。
 このため生徒たちは学校外での業者テストを受け、その偏差値で「入れる高校」を選ぶことになりかねない。そうなれば脱偏差値の意図が崩れることになる。
 そうならないようにするには、報告書が提示しているように、各高校の特色に応じた入試の多様化、選抜尺度の多元化を早く具体化する必要がある。
 「生徒の希望、個性に応じて高校を選択できる余地を大きくする」のが、報告書の入試改革の意図だ。また学力検査も、思考力や判断力、表現力などの「新しい学力観」に基づいて行うよう求めている。
 こうした入試が実現すれば、偏差値依存の高校選びをする必要がなくなるはずだ。報告書もそれを期待しているところだ。
 むろん“入り口”を多様化するだけでは意味がない。高校の中身の特色化も急がなければならない。
 これまで、高校は偏差値輪切りによって普通科と職業科がランク付けされ、普通科の中でも進学校から底辺校まで序列化されてきた。それが世間の差別意識を生み、生徒につらい思いをさせてきた。
 偏差値追放は、そうした状況を改めるとともに、数字よりも中身で人間や学校を評価する「個性社会」へ転換するきっかけになるだろう。


 
 
 
 
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