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(a)課題1
 課題1では、最初に「列車の車内からホームに降り立ち、ホーム縁端を移動して出口につながる階段の開始位置まで歩く(降車地点から階段)」課題を行い、数分の時間をおいて「下り階段の最終段からホーム縁端に移動し、ホーム縁端を移動して乗車位置まで歩く(階段から乗車位置)」課題を行った。
 最初に歩行条件について説明した。主な歩行条件は以下の通りである。
1)初めて利用する駅を想定する
2)点字ブロックを頼りに移動する
3)ブロックの使い方は自由である(両足を乗せても片足だけ乗せても両足を乗せずに杖で確認しながら移動しても構わない)
4)杖の使い方は自由であるが、初めて利用する駅でするのと同じように使う
5)移動ルートの点字ブロックの近くに柱などの障害物がある可能性があるので、気をつけて歩行する
6)歩行中にブロックを見失って線路側に大きく外れると転落する可能性があるので、線路側には大きく外れないようにする
7)歩行中に感じたことがあれば、それが些細なことであっても、歩行しながら積極的に発言する
 降車地点から階段への移動において、被験者に課した課題の手順は、概ね以下の通りである。
1)実験者の誘導により、予め列車の車両の床面を模擬した高さ60mmの台(図5.3の(1))の上に乗る
2)台からホームに降りる(すなわち、降車する)
3)ホームに降りたらホーム縁端を警告するブロックを見つけてもらい、そのブロック等を頼りにしばらく歩き、出口につながる階段(図5.3の(2))まで歩行する
4)階段に到着したと思ったら、「到着しました」と言ってそこで立ち止まる
 実際に歩行を始める前に、階段の直前の点状ブロックの存在、ホーム縁端の点状ブロックの存在、この間を繋ぐ線状ブロックの存在を知っているかどうか確認し、知らない場合は当該部分へ移動して足、手、白杖などで確認してもらった。
 なお、ホーム縁端を移動し、階段方向へ誘導する分岐部分に気づかずに通り過ぎた場合は、一旦停止させて分岐部分を通り過ぎたことを伝え、Uターンして戻るように指示した。
 階段から降車地点への移動において、被験者に課した課題の手順は、概ね以下の通りである。
1)実験者の誘導により、予め下り階段の最終段を模擬した高さ60mmの台(図5.3の(2))の上に乗る
2)台からホームに降りる(すなわち、階段を降りてきてホームに到着する)
3)ホームに降りたらホーム縁端へ向かって移動する。このとき、ホーム縁端へ誘導する線状ブロックを使うか否かは被験者に選択させたが、初めて使う駅でとると思われる行動と同様にすることを求めた
4)ホーム縁端を警告するブロックを見つけたら、そのブロック等を頼りにしばらく歩き、乗車位置(図5.3の(1))まで移動してもらう
5)乗車位置には目印がないので、当該部分に到着したら、実験者が乗車位置に到着したことを伝えて止まってもらう
 降車地点から階段、階段から乗車位置のそれぞれの課題について、歩行の軌跡を記録用紙に筆記記録し、歩行中の被験者の発言と特徴的な行動を筆記記録した。また、それぞれの課題終了後に、簡単に感想等を聞いて記録した。記入用紙は資料編3-3に掲載したので参照されたい。
 
(b)課題2
 課題2では、委員会において議論された新たなブロック敷設方法と現行のブロック敷設方法について、実際にブロックが敷設されている状態を詳細に体験し、現状と比較するなどして新たな案を支持できるかどうか回答してもらった。
 対象としたのは以下の3点である。
(1)点状ブロックに内方線が付加されることの有効性(内方線の有効性確認)
(2)ホーム縁端の混合ブロックと構造物が干渉する箇所の敷設方法を連続敷設にすることが支持できるか否か(連続敷設の支持確認)
(3)ホーム縁端から階段へ誘導する分岐点のブロック配置を点状ブロック2列とすることが支持できるか否か(分岐点の新配列の支持確認)
 最初に「内方線の有効性確認」を行った。手順は概ね以下の通りである。詳細は、資料編3-3に記載してあるので参照されたい。
1)最初に現状の点状ブロックが敷設されている場所(図5.3の(3))に誘導し、その状況を足、手、白杖で詳細に確認してもらう
2)確認が終了したところで、現状のホーム縁端の敷設方法では足りない点、内方線の利点、内方線の位置を点状ブロックの内側とする理由を説明する
3)混合ブロックが敷設されている場所(図5.3の(4))に誘導し、その状況を足、手、白杖で詳細に確認してもらう
4)確認が終了したところで「ホームの内側を知らせるこの方法は役に立つと思うか」質問する
5)回答が得られたら、その回答をした理由を求める
6)混合ブロックが敷設されたら、どのように利用することになるか質問する
 2番目に「連続敷設の支持確認」を行った。手順は概ね以下の通りである。詳細は、資料編3-3に記載してあるので参照されたい。
1)「ホームには屋根やホーム上の駅舎を支えるための柱がある場合があり、この柱がやむを得ず点状ブロックと極めて近い位置になることがある。このような場所における点状ブロックの敷設方法は今のところ明確に定義されていないので、いろいろな敷設方法があり、利用者が迷うことがあり得る」という現状を説明する
2)コの字迂回敷設箇所(図5.3の(5))へ誘導し、当該部分を歩行するなどして詳細に確認してもらう
3)確認が終了したら、連続敷設箇所(図5.3の(6))へ誘導する
4)ホーム縁端のブロックと構造物が干渉する場所のブロック敷設方法を、連続敷設に統一することと、連続敷設に統一する理由を簡単に説明する
5)説明した理由を踏まえて、連続敷設箇所を歩行するなどして詳細に確認してもらう
6)確認が終了したら、「連続敷設が支持できるかどうか」質問する
7)回答が得られたら、その理由を求める。支持できないと答えた人については、支持できない理由を解決すれば支持できるか尋ねる
 3番目に「分岐点の新配列の支持確認」を行った。手順は概ね以下の通りである。詳細は、資料編3-3に記載してあるので参照されたい。
1)現状のブロック配列となっている分岐点(図5.3の(7))の手前の線状ブロック上に誘導し、ホーム縁端に対して垂直方向に分岐点に向かって歩いてもらい、ホーム縁端に来たと思ったら立ち止まってもらう
2)現状の配列を、足、手、白杖で確認してもらう
3)「線状ブロックを使用して縁端の点状ブロックに進入する場合に、線状から点状への切り替わりに気づくことはやや難しく、点状ブロックの幅を広げた方が、より安全になることが実験によってわかったので、今後は階段から縁端に誘導する合流地点は点状ブロックを2列敷くことにする」ことを説明する
4)新たな配列で敷設された分岐点(図5.3の(8))の手前の線状ブロックの上に誘導し、ホーム縁端に対して垂直方向に分岐点に向かって歩いてもらい、ホーム縁端に来たと思ったら立ち止まってもらう
5)新たな配列を、足、手、白杖で確認してもらう
6)現状の配列の分岐点を線路平行方向の移動の中で詳細に確認してもらうために、現状の配列の分岐点(図5.3の(7))の手前のホーム縁端のブロック上へ誘導し、実際に歩行するなどして詳細に確認してもらう
7)確認が終了したら、新たな配列(図5.3の(8))についても同様に確認してもらう
8)確認が終了したら、「新たな敷設方法が支持できるかどうか」質問する。
9)回答が得られたら、その理由を求める
 
(c)課題3
 課題3では、ホーム縁端のブロックと構造物がぶつかる場所における事前警告の可能性について、その一例を体験することで有効性を確認した。手順は概ね以下の通りである。詳細は、資料編3-3に記載してあるので参照されたい。
1)「ホーム縁端を知らせるブロックを連続敷設にした場合、ブロックと柱などが交錯することがある。このような場所には事前警告が必要かもしれない」という考え方を紹介し、「その一例を体験することで、事前警告の可能性を探る」という実験主旨を説明する
2)事前警告の例が敷設されている場所(図5.3の(9))の少し手前の混合ブロック敷設箇所へ誘導し、ブロックの敷設状況を足、手、白杖で確認してもらう
3)このまま進むと柱にぶつかるが、柱の直前約60cmの地点から柱までの間には線状突起はなく、点状突起になっていることを説明する
4)柱に向かって歩行してもらい、詳細に確認してもらう
5)確認が終了したら、「事前警告は有効であるかどうか」質問する
6)回答が得られたら、その理由を求める
 なお、課題3については、被験者の実験意図に関する質問に対する返答の細部が必ずしも統一されておらず、事前警告そのものを議論の対象としている人と、今回の敷設方法を議論している人が混在しており、結果の解釈については注意が必要である。







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