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5.2.4 被験者
 「白杖による単独歩行が可能で、日常的に鉄道を利用している年齢15才以上の全盲の視覚障害者」を条件とし、これまでに鉄道総研が実施した実験3)、調査4)への協力が得られた東京近郊在住の視覚障害者の中から抽出し、一般公募は行わなかった。抽出方法は基本的にランダムとしたが、「積極的に発言してくれる人」、「若い人の行動について知見があると考えられる盲学校の先生」、「中途失明者」が含まれるようにするなどの配慮をした。なお、被験者に対しては、実験に先立って実験の趣旨等を電話で説明した。特に、実験は寒冷期の屋外において最大90分程度行われ、天候によっては厳しい状況になることを伝え、参加の意志を改めて確認して了承を得た。実験の実施に際しては、すべての被験者に傷害保険への加入を措置するとともに、安全面で十分な配慮を行うよう留意した。
 実施期間等の制限から30人に依頼し、雨天中止等を含めて最終的に実施できたのは21人であった。
 被験者の特徴を以下に示す。なお、被験者のリストを資料編3-2として添付した。
 
表5.1 被験者の年齢と男女構成(人)
 
表5.2 被験者の視力の内訳(人)
視力 人数
完全盲 17
光覚弁 2
指数弁 2
21
視力は自己申告に基づいている。
左右の視力が異なる場合は、より視力の高い方をその人の視力とした。
3章では、光覚弁、指数弁を準盲とした。
 
表5.3 
被験者が現在の視力になった時期と現在の視力になってからの年数の内訳(人)
現在の視力になった年齢の区分は、「視覚障害者誘導用ブロックに関する標準基盤研究報告書(2000)」5)の分類に従った。
 
表5.4 被験者の鉄道利用頻度と単独歩行経験の内訳(人)
 
5.2.5 実験方法
 実験は3つの課題と自由意見の聴取で構成され、全体で約90分であった。
 第1課題は、予め用意されたシナリオに従って実験場を被験者に歩行してもらい、目的地に到着するまでの過程を観察し、新たな敷設方法に問題がないか確認するものであった。事前にブロック形状や配置に関する説明をせず、未知の状況に遭遇した場合の対応を観察した。用意したシナリオは、
(1)列車の車内からホームに降り立ち、ホーム縁端を移動して出口につながる階段の開始位置まで歩く
(2)下り階段の最終段からホーム縁端に移動し、ホーム縁端を移動して乗車位置まで歩く
 の2種類とした。ブロックや杖の使い方、柱の回避方法は制限しなかったが、初めて訪れる駅を移動している状況を想定してもらった。なお、混雑の状況を特別に設定しなかったので、結果的に旅客が極めて少ない駅を移動している状況になった。
 第2課題は、委員会において議論された新たなブロック敷設方法と現行のブロック敷設方法について、実際にブロックが敷設されている状態を詳細に体験し、現状と比較するなどして新たな案を支持できるかどうか回答してもらうものであった。
 確認内容は以下の3点である。
(1)点状ブロックに内方線が付加されることの有効性
(2)ホーム縁端の混合ブロックと構造物が干渉する箇所の敷設方法を連続敷設にすることが支持できるか否か
(3)ホーム縁端から階段へ誘導する分岐点のブロック配置を点状ブロック6枚とすることが支持できるか否か(平成12年度の実験3)によって得られた成果の確認)
 第3課題は、実際の敷設例を体験することにより、ホーム縁端のブロックと構造物がぶつかる場所における事前警告の可能性を確認するものであった。
 以下で方法を詳細に説明する。
 
(1)教示方法
 実験の進行担当者は3人いたが、実験の教示は、あらかじめ作成された教示文章(資料編3-3参照)にもとづき、全ての被験者において同様に行った。
 
(2)アイマスク
 今回の実験では、完全盲の鉄道利用者を対象と考えたので、完全盲の人(視力は自己申告に基づく)を含めて全ての被験者にアイマスクを着用してもらって条件を統制した。
 
(3)靴
 実験時に着用する靴は、鉄道を利用するときによく使用している履きなれたものとした。
被験者が実験当日に履いていた靴の写真を資料編3-4に記載した。
 
(4)白杖
 白杖は普段使用しているものを使うように指示した。
 
(5)歩き方
 全ての課題においてブロック、杖の使い方、柱の回避方法は制限しなかった。しかし、初めて訪れる島式ホームの駅を移動している状況を想定してもらった。なお、混雑の状況を特別に設定しなかったので、結果的に、旅客が極めて少ない駅を移動している状況になった。
 
(6)実験手順
 実験は、「事前説明」、「課題1」、「課題2」、「課題3」、「自由意見の聴取」の順で実施した。以下では、「課題1」、「課題2」、「課題3」の手順を説明する。なお、実験実施状況の写真を資料編3-5として添付した。







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