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(3)ホーム縁端から階段へ誘導する分岐点のブロック配列について
 ホーム縁端から階段へ誘導する分岐点のブロック配列を点状ブロック2列とすることについて、線状ブロックを用いた旧配列と点状ブロック2列の新配列の両方を、線路平行方向および線路直交方向の2方向で体験してもらい、新配列とした理由を簡潔に説明した後に、新配列を支持できるか否か尋ねたところ、以下の結果が得られた。
 
表5.9 
ホーム縁端から階段へ誘導する分岐点の新配列を支持するか否かの回答内訳(人)
回答内容 人数
支持する 14
支持しない 2
その他 *1 5
21
*1 
その他は、「当該部分を使わないので回答できない」という主旨の回答である。
 
 支持の理由は、概ね4つに分類された。( )内は支持すると答えた16人のうち何人がその回答をしたかを示す(自由に発言してもらった中から抽出したので複数回等の場合もある)。
(1)ホーム縁端に直行進入する際に幅が広くなるので気づきやすい(9人)
(2)ホーム縁端を線路と平行に移動してきたときに内方線から点状突起に変わるので気づきやすい(3人)
(3)すでに新配列(内方線はないが)に慣れ親しんでいるのでわかりやすい(1人)
(4)旧配列は複雑で何があるのかわかりにくい(2人)
 
 一方、支持しない2人の理由は、ホーム縁端を線路と平行に移動してきたときに、直交する線状ブロックに気づかないというものであった。
 
 上記の支持しない理由を具体的な行動で示すものとして、課題1において、線路平行方向に移動しているときに、縁端から階段へ誘導する分岐点に気づかない例が少なからず観察されたことが挙げられる。この行動が観察されたのは11人であったが、このうち新たな敷設方法を支持しないと答えた人は2人であった。残りの9人のうち5人が新たな敷設方法を支持し、4人はこれまでの経験の中で当該部分を使用しておらず、回答しかねるという結果であった。
 なお、課題1で階段から縁端のブロックに進入した場合、ブロックを踏み越えて転落方向に進む人はいなかった。このとき、線状ブロックを使って縁端部に進入した人は16人で、線状ブロックを使わずにブロックのない部分を歩いて縁端部に進入した人は5人であった。16人については新たな敷設方法の効果が、5人については縁端部の混合ブロックの効果があったと考えられる。
 
 上記の各結果から、以下の結論を得た。
 ホーム縁端から階段へ誘導する分岐点のブロック配列を点状ブロック2列とする新たな敷設方法は、概ね支持された。
 
5.3.3 課題3の結果
 ホーム縁端の混合ブロックと構造物がぶつかる場所における事前警告の可能性について、敷設例を体験してもらい、その有効性を尋ねたところ、以下の結果が得られた。
 
表5.10 ブロック等による構造物の事前警告は有効か否かに関する回答内訳(人)
回答内容 人数
有効である 10
有効ではない 10
その他 *1 1
21
*1 その他は、「回答できない」という回答である。
 
 約半数が支持する結果を得たが、個別の発言内容を見ると、積極的に支持したのは2人であり、むしろ、それほど支持されていないと判断すべきであると考えられる。
 今回の敷設例では、「構造物の手前60cmには内方線がなくなるので、この部分で内外方がわからなくなる可能性」を指摘する人が4人、「60cmという距離では先に白杖で気づくことや足で気づいたとしても構造物に衝突することなどの距離不足」を指摘する人が5人いるなど、解決すべき問題が少なくなかった。
 
5.4 最終確認試験のまとめ
 委員会で議論され決定されたブロック敷設方法は、今回の最終確認試験の範囲において概ね有効であることが確認された。
(1)ブロックの形状や配置の詳細を知らせずにホーム縁端を模擬した場所を歩行する実験では、混合ブロックが通常の歩行に負の影響を及ぼすような状況は確認されなかった。混合ブロックの有効性については、被験者21人のうち19人が有効であると答え、うち17人が、「ホームの内側と外側がわかる」ことをその理由とした。つまり、ホーム縁端の混合ブロックは、ホームの内外方を知りたい場面ではそれを示し、それ以外の場面では利用者に対して特に影響を及ぼさなかった。
(2)縁端の点状ブロックと構造物が干渉する箇所で混合ブロックを連続的に敷設することは、被験者21人のうち19人に支持された。しかし、構造物に衝突する危険性を考慮すると、該当する場所にクッションなどを設ける要望が少なからずあった。このことから、連続敷設のルール化においては、クッションなどを設けることを含んだルールとするか、もしくは、それを付帯事項として明記することが望まれる。
(3)ホーム縁端から階段へ誘導する分岐点のブロック配列については、有効回答となった16人(当該部分を使用しないため回答できなかった5人を除外した)中14人がそれを支持した。これにより、すでに平成12年度の成果として「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」6)に記載されている内容の妥当性が確認された。
(4)可能性を探る目的で実施した柱の事前警告については、賛否が分かれ、積極的な支持も少なかった。
 
 本実験では、駅ホーム上を全盲の視覚障害者が移動する状況を想定しており、今回の結果はその範囲に適用されるものである。また、今回、多くの視覚障害者に支持されたブロックやその敷設方法も、移動中に極度の思い込みをしているような状況では、期待される効果を十分に発揮できないことも考えられる。しかしながら、駅ホームからの転落事故の中でも、ブロックの検知失敗、ホームの内外方の誤認、歩行方向の失認などを要因とするものに対しては、一定の効果が期待できるであろう。なお、次節に示すような課題も残されていることから、今後も引き続きブロック敷設方法に関わる研究を進める必要があると考えられる。
 
5.5 実用に向けてさらに検討すべき課題
 本研究で検討されたブロックおよびブロック敷設方法の基本ルールは最終確認試験をもって確定され、実際に駅ホームにブロックを敷設できることになったが、一部の駅ホームに実用する場合、以下の内容について検討し明確化することも必要である。
(1)混合ブロックのホーム縁端からの距離の上限値
 現在のガイドラインでは、ホーム縁端を警告するブロックの敷設領域の上限値は決まっていない。
・現在のガイドライン6)の記述内容や平成12年度に実施したブロック敷設幅拡張効果に関する実験3)における停止距離の結果から、下限値を80cmとすることはできるが、上限値を決めるための明確な根拠はない。
・混合ブロックと構造物が干渉する箇所を連続敷設することで、上限値を設けることが可能になった。
(2)狭小幅ホームの始終端へのブロック敷設幅限度値
 狭小幅の島式ホームにおいて両側のホーム縁端に混合ブロックを敷設する場合に必要とされる両ブロックの間隔は決まっていない。
・この間隔に求められることは、ホーム短軸方何を移動するとき「混合ブロックがあること」と「混合ブロックがないこと」がはっきりわかることである。
・平成12年度に実施したブロック敷設幅拡張効果に関する実験3)では、ブロックがあることが確実にわかるために必要な幅は60cm以上という結果を得ている。しかし、これは「ブロックがあること」が確実にわかる幅であり、「ブロックがないこと」がわかる幅に適用できるかどうか明らかではない。
 
文献
1)日本規格協会:視覚障害者誘導用ブロック等の突起形状・寸法およびその配列, JIS T9251, 日本規格協会, 2001.
2)日本規格協会:舗装用コンクリート平板ブロック, JIS A5304, 日本規格協会, 1988.
3)交通エコロジー・モビリティ財団:視覚障害者用誘導・警告ブロックに関する研究報告書, 交通エコロジー・モビリティ財団, 2001.
4)水上直樹, 藤浪浩平, 大野央人, 鈴木浩明:視覚障害者の駅ホームにおける行動実態に関する現状調査, 鉄道総研報告, 2002.
5)通商産業省製品評価技術センター:視覚障害者誘導用ブロックに関する標準基盤研究報告書―パターン標準化を目指して―, 通商産業省, 2000.
6)交通エコロジー・モビリティ財団:公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン, 交通エコロジー・モビリティ財団, 2001.







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