日本財団図書館（電子図書館）　自己かく拌型油分散剤の効果的な使用方法　及び　散布装置に関する調査研究報告書III

IV 航空機用油分散剤散布装置に関する現状調査

1 ヘリコプターによる油分散剤の散布事例

　我が国における油分散剤の散布事例を表－IV.1.1に示す。散布装置は全てSimplex社製の農薬散布装置を使用したものである。同表中の貨物船VISHVA ANURAG号浸水沈没時の概要を以下に示す。^1）

（1）事故の概要

　1987年（昭和62年）1月14日午前10時40分頃、鹿児島県串木野港防波堤灯台から250度7.7海里付近の海上において、インド船籍貨物船「VISHVA ANURAG号」（11,179トン）が浸水・沈没し、積載していた燃料油等（A重油95kl、C重油326kl、潤滑油14.5kl搭載）の一部が流出した。

（2）ヘリコプターによる油分散剤の散布

　海上災害防止センターでは、流出油防除の委託を受け2号業務を発動し、処理作業を実施した。

　この作業では、流出油を沿岸に漂着させないことを主眼に、船艇による油分散剤の散布処理を主体的に行ったが、荒天のため船艇が出動できない日には、沈没地点付近の流出油に対しヘリコプターによる油分散剤の空中散布処理を行った。

写真－IV.1.1

空中散布の状況（作業を行った鹿児島国際航空株式会社が、作業指揮のため出動させた航空機から撮影したもの。）

写真－IV.1.2 ヘリポートでの油分散剤積み込み状況

写真－IV.1.3 ヘリポートでの油分散剤積み込み状況

写真－IV.1.4 散布桿ノズルの状況

表－IV.1.1

ヘリコプターによる油分散剤の散布事例（阪急航空（株）の資料による）

	船名等	日時・場所	排出量	使用機種等	積載容量	散布時間	散布量
1	貨物船 ACADEMY STAR 座礁	57.3.21 千葉県千倉沖	C重油 600kl	AS－350B 散布装置 Simplex 5100	400l／回	2.5分	6,400l
2	タンカー第8福徳丸衝突	57.4.3 徳島県橘湾	C重油 83kl	ヒラーUH－12E 散布装置 Simplex 3300	180l／回	1.5分	5,800l
3	貨物船 KALIMANTAN IBU 座礁	59.1.22 茨城県鹿島沖	C重油 169kl	ヒラーUH－12E 散布装置 Simplex 3300	180l／回	1.5分	42,900l
4	貨物船 SITI FREDA 転覆	60.2 大阪岸和田沖	不明	ヒューズ500D2機散布装置 Simplex 3300	300l／回	2分	26,300l
5	貨物船 GLOLIA FORTUNA 座礁	60.7.2 和歌山県白浜沖	不明	ヒラーUH－12E 散布装置 Simplex 3300	180l／回	1.5分	2,000l
6	貨物船協和丸衝突	60.7.5 静岡県下田沖	不明	ベル47G－4A 散布装置 Simplex 1300	180l／回	1.5分	2,500l
7	貨物船第2あい丸座礁	61.12.15 茨城県鹿島湾	A重油 42kl	ベル47G－4A 散布装置 Simplex 1300	180l／回	1分	20,500l
8	貨物船 VISHVA ANURAG 浸水沈没	62.1.14 鹿児島県串木野沖	不明	ベル206B 散布装置 Simplex 2700	300l／回	1.5分	2,376l
9	タンカー第1春日丸沈没	63.12 京都府経が岬沖	C重油	ヒューズ500D レンジャー206 散布装置 Simplex 5000
10	貨物船 MARITIME GERDENIA 座礁	2.1.25 京都府経が岬沖	C重油 900kl	ヒューズ500D 散布装置 Simplex 5000	234l／回	2分	70,000l
11	タンカー泰光丸衝突	5.5.31 福島県塩屋崎	C重油 521kl	アエロスパシャルAS350B 散布装置 Simplex 5000	400l／回		102,546l 5,697缶