「自己攪拌型油分散剤の効果的な使用方法及び散布装置に関する調査研究」は平成12〜14年度の3ヶ年にわたり実施し、以下の成果を得た。

　

1 自己攪拌型油分散剤の船舶用散布装置の開発

　初年度（平成12年度）、現有油分散剤散布装置の散布性能を調査し、自己攪拌型油分散剤船舶用散布装置として求められる開発要件を整理した。次年度（平成13年度）には、船舶用散布装置の試作及び性能試験並びに試作機の改良を行い、実用機（SAS−I型）を調査研究の成果物とすることができた。

　

2 航空機用自己攪拌型油分散剤散布装置に関する調査研究

　航空機用農薬散布装置を若干改造して、油分散剤散布装置として使用することを目ざして、散布装置のノズル種類・個数、散布高さ、液滴の大きさ等を調査し、室内実験レベルではあるが、今後、航空機用農薬散布装置を自己攪拌型油分散剤装置として使用する際の要件を整理した。なお、今後は、実機レベルで検証することが必要と考えられる。

　

3 自己攪拌型油分散剤の効果的な使用法の調査

　油分散剤の散布は、油分散剤を粒子状にして散布する原液直接散布法が原則であるが、我が国では、泡消火ノズルを使用して油分散剤を海水と希釈して散布する誤った方法（海水希釈散布法）が主力となっている。

　今回の調査研究によって、海水希釈散布法が原液直接散布法に比べて、分散効果が低く、不適切な散布法であることを定量的に示すことが出来た。

　また、流出油を油分散剤の合性を調査する油分散剤簡易試験キッドを用いて適正な油分散剤の散布量（率）を求める手法を開発した。更に、油膜厚さ−散布圧力−散布速度のチャートを作成して誰でも適正な散布が出来るようにした。

　

4 油吸着材（杉樹皮製油吸着材：杉の油取り）に関する調査研究

　大分県産業科学技術センターと共同で開発した「杉樹皮製油吸着材（杉の油取り）」については、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」の規定に基づき、平成14年9月10日付けで国土交通大臣より油吸着材（型式名「杉の油取り」、第P−577号）の型式承認がなされた。

　また、環境負荷の更なる低減を目ざした微生物分解処理技術については、実験室・小規模フィールドレベルでの技術に関して、ほぼ目途がたったことから今後は調査研究を中規模フィールドレベルへとステップアップし、微生物分解処理技術の実用化を目指す必要がある。

　なお、実海域における「杉の油取り」の有効性を調査する為、平成13〜14年度にわたりモニタリング調査を実施した。

　

※型式承認の取得について

　「杉の油取り（すぎのゆとり）」に関しては、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」に適合した「油吸着材」として平成14年9月10日付けで国土交通大臣より型式承認（型式名「杉の油取り」、第P−577号）がなされた。

　

　杉樹皮製油吸着材「杉の油取り（すぎのゆとり）」を以下のとおり配布しモニタリング調査を実施した。

　

1. 平成13年度

　

2. 平成14年度

　

参考文献