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(2)地方公共団体への適用
 コールセンターの導入については、住民の利便性の向上及び業務改革という観点から、大きな効果が見込める手法であると思われる。ここでは、導入に当たっての課題及び方向性をいくつか挙げておきたい。
 
(1)Q&Aの充実とアウトソーシングの活用
 導入当初には、専門(担当)の職員が対応しないことによるトラブルの発生に対する懸念が生じるのは致し方ないと思われる。現在、民間企業においてもコールセンターの専門業者が増加しており、住民への丁寧な対応も含めそのノウハウが蓄積されている。コールセンターの運営に当たっては、そのような専門業者に委託するとともに、いわゆるQ&Aをどこまで充実していけるかが運用上の課題になる。
 
(2)複数の市町村による共同運営
 コールセンターの運営については、ある程度の規模の問い合わせがあって初めて効果が生じるものであり、市町村レベルでの運営を考えた場合には、前述したとおり、いくつかの市町村での共同運営という手法をとらざるを得ないと考えられる。その場合、市町村で共通する問い合わせと、地域に特有の問い合わせとをどう分類してQ&Aを作成できるかが、コールセンターの成否のポイントとなるであろう。
 
(3)個人情報保護等の必要性
 コールセンターの運営に当たっては、現時点では、問い合わせ等を行った個人の情報は蓄積されないことになるが、今後、住民志向型の行政運営を目指し、いわゆる「パーソナライズ」な行政サービスの提供を志向していく場合には、行政の側における個人情報保護や情報セキュリティの確保が前提であり、両者のバランスを考慮しながら検討していく必要がある。
 
(4)市町村におけるワンストップサービス
 国、都道府県、市町村という縦関係での情報共有については、住民に最も身近な市町村において、様々な情報が収集できる体制を構築する必要がある。その際には、NPOなど市町村以外の公的性格の強い機関をいかに巻き込むかが課題であるとともに現場の職員が様々な情報にアクセスし、住民に対応できるような仕組み(例:PDA(Personal Digital Assistance))についても検討する価値があると考えられる。
 
(3)コールセンターの事例:札幌市
 
(1)目的
○市民サービスの向上(たらい回しの抑制、夜間土日の対応など)
○市民ニーズの把握(質問内容、質問者の年代・性別等の分析)
○情報格差対策(電話やFAXによる情報提供手段の拡大)
○職員によるノウハウの共有(「よくある質問」の共有、ナレッジの共有)
 
(2)問い合わせ傾向の事前分析結果
○市民の声の8割が問合せ
○問合せの6割が比較的簡単なもの
○問合せが分からないという理由で問合せを断念する市民の割合:38%
 
(3)サービス内容(平成14年12月実証実験、平成15年1月〜試行実施)
ア)名称
「札幌市コールセンター ちょっとおしえてコール」
イ)業務形態
・問合せ回答者:コールセンター業者に業務委託
・設置場所:委託業者の有する施設内の専用ブース
・電話交換機等の設備:委託業者の保有する設備を使用
ウ)受付回答の手段
 電話、FAX、e−mailで回答。回答に当たっては回答用データベースを構築。このデータベースは公開し、職員(市民は平成15年6月〜)が自由に閲覧可能。
エ)回答の範囲
・広報さっぽろ、市民便利帳及び札幌市HP掲載内容が基本回答範囲
・その他、原局の判断で事前にQ&Aを準備したもの。
・苦情対応については、コールセンターでの対応になじまない。
オ)受付時間 8:00〜21:00(年中無休)
※実証実験の結果をうけて、平成15年度に全市での本格稼働を予定。
 
(4)利用者満足度(平成15年2月6日〜3月13日現在)
 問い合わせの95%がコールセンター内で適正に処理されており、10点満点評価による利用者アンケートでは平均9.4点(8点以上が92%、10点満点は66%)と高い満足度を示している。







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