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4.2 情報提供の問題点及び留意点
 情報提供の現状と、視覚障害者及び聴覚障害者に対するヒアリング調査の結果から、鉄道利用において想定される行動別に、情報提供の現状及び問題点と、今後の情報提供にあたっての留意点を整理した。
 なお、留意点の整理にあたっては鉄道利用の場面を下記のとおり分類した。次頁以降に、場面毎の整理結果を示す。(ポイントと考えられる点については下線で強調している。)
 
(1)外出前(外出計画時)の事前情報
(2)駅構内における情報提供
(1)出入口
(2)券売機
(3)改札口
(4)通路・階段・エスカレーター・トイレ等
(5)ホーム
(3)車両内における情報提供
 
(1)外出前(外出計画時)の事前情報
 外出前(外出計画時)の事前情報提供については、問い合わせや相談等に対する駅員の対応や、各社ホームページ、携帯サイト等で提供されている情報の内容、量などが問題となっており、専用の窓口サービスの設置や情報提供内容の充実について留意する必要がある。
 
<情報提供の現状と問題点>
(拡大画面:85KB)
 
<外出前(外出計画時)の事前情報提供にあたっての留意点>
■問い合わせ・相談等の専用窓口サービスの設置検討
 障害者からの電話やFAX、メール等による問い合わせに対して、きちんとした対応をしてもらえない場合があるという意見が多いことから、それらの問い合わせ・相談等に対する丁寧な対応が求められる。
 そのため、社員教育の徹底を図るとともに、電話等による問い合わせに対する専用窓口サービスの設置や、FAXやメールによる情報提供サービスの導入等について検討することが望まれる。
■各社ホームページ、携帯サイトにおける情報提供内容の充実
 現在、各鉄道事業者のホームページや携帯サイトにおいて、列車の時刻表や運行状況などの情報提供が行われているが、特に事故等の緊急時の運行情報については、事故原因、遅延状況、運転再開予定時刻といった必要な情報が載っていない場合や、情報の更新が遅い場合などがあると指摘されている。
 そのため、特に事故等の緊急時の運行情報については、タイムリーかつ適切な情報提供を行うよう努めることが望まれる。
■携帯電話等の活用による情報提供システムの検討
 現在、情報ツールとしての携帯電話の役割は非常に重要なものとなっており、それは障害者にとっても同様である。特に聴覚障害者の方の中には、携帯電話のサイトやメール等を有効に活用して列車の運行情報、乗換方法、所要時間等の情報を入手している人が多い。
 しかしながら、ホームページの場合と同様に、特に事故等の緊急時の運行情報については、事故原因、遅延状況、運転再開予定時刻といった必要な情報が載っていない場合や、情報の更新が遅い場合などがあると指摘されている。そのため、携帯サイトの情報内容の充実を図るとともに、特に事故等の緊急時の運行情報について、情報を文字情報として携帯電話に発信するシステム等の開発が望まれる。
 また、視覚障害者の方でも携帯電話を利用した情報入手ができるよう、携帯サイトの文字情報を音声情報として提供できるシステム等の開発も望まれる。
 
<課題>
□情報機器を使えない層(高齢者等)への対応
 現在、情報ツールとしてホームページや携帯電話等の情報機器の有効活用が図られているが、高齢者など情報機器の活用が苦手、困難な方も多い。したがって、それらの方々への情報提供の対応を考えると、ホームページや携帯サイト等による情報提供だけでは不十分であり、従来通り電話やFAX等による人的な対応が必要となることから、それらの問い合わせ・相談等に対する丁寧な対応が求められる。
 
(2)駅構内における情報提供
(1)出入口
 出入口については、駅員の対応や、触知案内板のわかりやすさ、視覚障害者誘導用ブロック、サインの配置などが問題となっており、触知案内板の必要性、有効性等の検討や、駅員による接遇の向上、視覚障害者誘導用ブロックやサインの適切な設置などについて留意する必要がある。
 
<情報提供の現状と問題点>
(拡大画面:62KB)
 
<出入口における情報提供にあたっての留意点>
■触知案内板の必要性、わかりやすい設置・誘導方法等の検討
 現在、主要な駅において、出入口付近に、点字による案内板(触知案内板)が設置されている。しかしながら、実際は、設置位置がわかりにくい、案内板の内容がわかりにくいといった理由により、あまり利用されていない状況がみられる。
 そのため、当事者の意見をふまえながら、触知案内板の必要性や有効性、整備の優先度等について検討するとともに、触知案内板のわかりやすい表示内容・設置位置や、音・音声等による誘導などについて検討することが望まれる。
■駅員による接遇(障害者対応)の向上
 障害者に対する情報提供にあたっては、各種情報提供装置による情報提供だけでは限界があり、最終的には駅員等による人的な対応が重要となる。しかしながら、実際は駅員が忙しくてきちんと対応してもらえない場合もみられ、特に聴覚障害者への対応としてきちんと筆談に応じてもらえない場合がみられる。
 そのため、社員教育の徹底を図るとともに、どこでも筆談に対応できるよう筆記用具の携帯、手話をできる駅員の配置などにより、駅員による接遇の向上を図ることが望まれる。
■視覚障害者誘導用ブロックの適切な設置
 視覚障害者にとって、触覚情報である視覚障害者誘導用ブロックは、方向や位置を確認するうえで重要な手段の一つである。しかしながら、実際は、出入口の内側と外側で視覚障害者誘導用ブロックが途切れて連続していないなど適切に設置されていない場合もみられる。
 そのため、「公共交通機関旅客施設の移動円滑化ガイドライン」、「同追補版」等の考え方に基づいた視覚障害者誘導用ブロックの適切な設置が望まれる。
■案内板・誘導サイン等の適切な配置
 聴覚障害者にとって、視覚情報である案内板・サイン等は、必要な情報を入手するうえで重要な手段の一つである。しかしながら、実際は、サインがわかりにくい位置に設置されている、内容が不適切・不十分であるなど、サインが適切に設置されていない場合もみられる。
 そのため、「公共交通機関旅客施設の移動円滑化ガイドライン」や「公共交通機関旅客施設のサインシステムガイドブック」等の考え方に基づいたサインの適切な設置が望まれる。
■音・音声による視覚障害者の出入口への誘導の検討
 視覚障害者にとって、視覚障害者誘導用ブロックは重要な情報入手手段の一つであるが、視覚障害者誘導用ブロックだけでは具体的にどの施設がどこにあるのか正確に把握することはできない。そのため、「公共交通機関旅客施設の移動円滑化ガイドライン」においても、視覚障害者の誘導として、視覚障害者誘導用ブロックとともに音声・音響による案内が有効であるとしており、「同追補版」において音による案内のガイドラインが示されている。
 したがって、上記の音案内のガイドラインに基づいた音・音声システムの設置を進めるとともに、端末を用いた音・音声による誘導システムの導入等について検討することが望まれる。







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