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第1章 マニュアル作成の必要性
1.1 調査の目的
 これからのわが国の高齢社会、障害者の自立と社会参加の進展の要請から高齢者や障害者の活動を支える社会整備が重要かつ緊急な課題となっている。
 そのような背景のもと、平成12年11月15日に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」および同法に基づいた「移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準(移動円滑化基準)」の施行を契機として見直された「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」(平成13年8月)、「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン追補版」(平成14年12月)に基づいて、鉄軌道駅やバスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル等の移動円滑化が促進されることとなった。
 しかしながら、視覚障害者・聴覚障害者などの情報障害者に対する情報提供等に関しては、まだまだ多くの課題が残されているのが現状である。
 そのため、本調査では、視覚障害者、聴覚障害者などの情報障害者に対する鉄道利用に係わる交通情報の提供に関して、その現状と課題を明らかにし、鉄道事業者が実際に情報提供を行うにあたり参考となる考慮点、留意点、参考例等を提示することを目的とする。
 
1.2 本書の位置づけ
 本調査の最終的な目標は、視覚障害者、聴覚障害者などの情報障害者が円滑に交通機関を利用できることを目標とした情報提供に関する統一的なマニュアルを作成するための基礎調査として位置づけるものである。
 そのため本書では、鉄道事業者が実際に情報提供を行うにあたり、ガイドライン等現時点で基準が明確にならない項目について判断材料がないという状況を解消し、障害者の利用のために「どのような点を考慮すべきか」を把握できるよう、利用者ニーズに立脚した考慮点、留意点、参考例等の集成をまとめて提示したものである。
 なお、本書で記載している内容は、強制力のないガイドラインより軽いものであり、鉄道事業者への規制を定めたものではなく、あくまで参考として提示したものである。
 今後、本書を提示することにより、少しずつでも情報提供に関する分野を前進させていきたいと考えており、個々の条件でどのように対応していくかを、本書で示した留意点等を参考とした今後の事例から見守り、情報を蓄積していく必要があると考える。
 
1.3 調査の概要
(1)調査の流れ
 本調査の流れを以下に示す。
 
図1−1 調査の流れ
(拡大画面:181KB)
 
(2)調査の内容
(1)視覚障害者及び聴覚障害者のニーズ
 利用者からみた現状の情報提供の問題点を明らかにするため、音案内及び視覚障害者誘導用ブロックに関する既存のヒアリング調査結果を参考として整理するとともに、サイン、可変式情報表示装置、音響・音声案内、案内放送、視覚障害者誘導用ブロック、点字表示、人的対応など、鉄道駅及び車両における各種情報提供の現状及び問題点について、視覚障害者及び聴覚障害者に対するヒアリング調査を実施した。
 さらに、ヒアリング調査結果を受けて、情報提供に関する現状や問題点等についてのフォローアップとして、実際の鉄道駅を対象として、視覚障害者、聴覚障害者を交えて現地確認を実施したうえで、情報提供に関する障害者ニーズのとりまとめを行った。
 
(2)情報提供の現状と留意点
 情報提供の現状を把握するため、主要な鉄道事業者に対して、駅構内および車両内におけるサイン、可変式情報表示装置、音響・音声案内、案内放送、視覚障害者誘導用ブロック、点字表示、人的対応など情報提供についての現状の整備状況、利用者からの意見・課題および今後の計画等に関するヒアリング調査を実施したうえで、それらの情報提供の現状と、視覚障害者及び聴覚障害者のニーズに基づいて、利用者の行動別に鉄道利用に係わる情報提供の問題点・留意点を整理した。
 さらに、鉄道事業者及び障害者に対するヒアリング調査結果と事例調査の結果から、情報提供の優れた先進事例を抽出・整理した。
 
(3)情報提供の考え方と課題
 情報提供に係わる現状の問題点及び留意点等をふまえ、視覚障害者および聴覚障害者に対してできるだけわかりやすい情報提供を行うための基本的な考え方を整理するとともに、視覚障害者及び聴覚障害者に対する情報提供として特に対応が重要と思われる「接遇」について、現状の問題点や先進事例等をふまえた情報提供にあたっての留意点を整理した。
 さらに、以上の調査・検討結果をふまえ、今後の検討課題について整理した。







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