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(3)海底面画像データの解像度及び探査幅
(a)海底面画像データの解像度
 海底面画像データのサンプリング間隔及びデータ数は、オペレータが設定するレンジ幅で、自動的に決定されるため、カタログ等を参考にして、収録データの解像度を確認することが重要である。名古屋港実験では、水深約8mの海域において、25[m](最小レンジ)に設定した結果、サンプリング間隔が、1/15000[秒]となり、音速値を1500[m/s]とした場合、1個の海底面画像データの解像度は、5cmとなった。
 海底面画像データは、水深データでは捉えることができない微細な地形、凹凸の変化を画像として表現できることが大きな特徴である。例えば、図89の音響画像は、ターゲットの投入回収用のロープ(直径11mm)が3〜5本の絡み合った様子を捉えたものである。図89の水深図では、ロープを確認することはできない。
 
(拡大画面:66KB)
図89. 投入回収用のロープを捉えた音響画像図
 
 また図90の音響画像及び水深図は、アンカーを引き摺った跡を捉えたものである。音響画像は、送受波器直下近傍では、水深図よりも照射覆域が大きくなるが、送受波器直下から離れるに従って照射覆域が極端に小さくなるため、水深図よりも鮮明に海底面の様子が画像化されている。
 
グリッドサイズ:30cm
コンター間隔:5cm
図90. 海底のアンカーの跡を捉えた音響画像と水深図
 
 図89及び90は、SeaBat8101で収録される海底面画像データの解像度の高さを表しており、本研究の地形歪み除去を行うことにより、より位置精度の高い高解像度の音響画像の作成ができる。これらの音響画像は、水深図とを組み合わせることにより、より詳細な地質学的情報を得ることができる。
 
(b)探査幅
 探査幅の検証結果及び扇島南東沖の画像例から、水深と海底面画像データの探査幅が異なり、直下水深値によって海底面画像データの探査幅が、送受信ビーム幅(101本のビーム幅)よりも、さらに広くなることが確認された。送受信ビーム幅よりも外側の海底面画像データは、メインビームの外側からのデータとなり、扇島南東沖の画像例からは、直下近傍に比べて良質な海底面画像データが収録されていない。またレンジ幅を長くすると、海底面画像データの解像度が劣化するため、測量時においては、レンジ幅を直下水深の2倍程度に設定することが望ましい。
 一方、入射補角が40度を超える外側ビームで計測された水深値は、精度劣化が見られるために、名古屋港実験の画像のように海底面画像データにターゲットを捉えていても、水深データでは捉えることができないことがある。このような場合の地形歪み除去は不可能であるが、他の測線の地形データを使うことにより可能となる。
 
(4)斜距離補正
 送受波器が音波を発信してからデータ収録を行うSeaBat8101の海底面画像データは、オフラインによる斜距離補正を行うことによって初めて、平面画像を得ることができる(ANKOUはシステムが自動的に斜距離補正を施している)。斜距離補正のエラーは、水深データの精度及び各データの時間的整合性に依存する。
 SeaBat8101は、各ビームで計測する往復走時を距離に変換する際に、BIT数の都合上、整数値でしかサンプル数を保持できないため、測深誤差が5cmとされている(カタログ上、使用する音波の波長で分解能を表すと1.25cmとなる)。この関係式を次式で示す。
各ビームの斜距離[m]=サンプル数×音速値/サンプリング間隔/2
 
音速値:オペレータが設定(1500[m/s])
サンプリング間隔:オペレータが設定したレンジ幅によって自動設定
サンプル数:オペレータが設定したレンジ幅によって自動設定(整数値)
 
 測深誤差5cmは斜距離補正時において、直下水深が10mの場合で1m、直下水深が20mの場合で1.42mの水平距離誤差が生じる。
 一方、斜距離補正は本研究結果から、水深データに含まれる最小水深値に音速補正した値を用いて斜距離補正する方法が最も誤差が小さいことを確認した。斜距離補正は、原理的には最小水深値に音速補正を施すことによって、最適な効果が得られるため、本方式が最も望ましい。水深データに含まれる最小水深値に音速補正した値を用いた斜距離補正の最大誤差は、水深8mにおける水平距離で1.57mとなり、測深誤差5cmで生じる水平距離誤差1mよりも大きく、また送受波器直下の海底面画像データの照射覆域よりも大きい。







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