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図84. 名古屋港LINE-3の音響画像(データ収録装置)
 
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図85. 名古屋港LINE-3の音響画像(データ収録装置)
 
(b)扇島南東沖音響画像
 扇島南東沖の結果を図86に示す。水深20mに見られる高低差3〜5mの航路壁を捉えたものである。
 
図86. 扇島南東沖の高低差2mの航路壁をとらえたSeaBat8101の海底音響画像
(グリッドサイズ=21.17cm)
 
図87. 扇島南東沖実験の探査幅
 
 図87は、図86の音響画像の探査幅を示しており、水深データの探査幅(送受信ビーム幅)よりも広いことを示している。図86より、送受信ビーム幅よりも外側の海底面画像データは、良質なデータが得られていない。送受信ビーム内において、精度の高い水深及び海底面画像データを収録するためには、測量開始時に設定するレンジ幅を水深の2倍程度に設定することが望ましい。
 
2.5 データの収集及び解析結果の評価
 本研究は、SeaBat8101システムの特性の理解を深め、現有の収録システムの問題点を挙げるとともに、海底面画像データの処理・解析手法を極め、幾何学的補正方法・地形歪み除去方法を検討し、シミュレーション及びターゲットを用いた実海域データの収録、解析結果から、本研究で設定した目標値が達成可能かどうかを検討したものである。以下に、本年度のまとめを示す。
 
(1)収録システム
 SeaBat8101システムの船上装置は、ソナープロセッサーとHYPACK MAXソフトウェアによるデータ収録パソコンから構成されており、測量時においてオペレータは、レンジ幅のみを設定する。発信間隔は、システムがセンタービームで計測する直下水深と外側ビームで計測するビームの往復走時から自動的に調整される。本研究の目標値を達成するためには、以下のような機器で構成される収録システムが理想である。
 
SeaBat8101データ収録装置:HYPACKデータ収録装置とは別に、各データの収録時間の整合性を考慮したデータ収録装置を用いてデータ収録を行うことが不可欠である。
動揺センサー:POS/MV・・・ヘディング、ピッチ、ロール、ヒーブ値について安定したデータ収録ができる。また水深10mの発信間隔から考慮して、30Hz以上のサンプリング間隔が必要である。
測位データ:KGPS・・・原理的にはRTKでも後処理でも同等の成果が得られる。ただしRTKでは使用している基準点からの補正情報が得られなかった場合に欠損となる。一方、後処理では基準点を選択することができるという利点がある。
音速データ・・・測量海域における潮流や日中の気温の大幅な変化が無い限り、今回の名古屋港で収録されたデータのように、午前と午後の観測で十分と考える。また2m毎の音速データでも十分、本研究目標を達成できる。
 
 またHYPACK収録装置は、発信間隔が短くなるとデータ収録が間に合わず、データが欠損するというメーカーの報告がある。名古屋港実験においても、レンジ幅を最小値(25m)に設定したため、発信間隔が30Hzとなり、HYPACK収録装置で収録したデータに欠損しているピングが見られた。
 また名古屋港実験では、HYPACK収録装置とは別のパソコンに、同時収録を実施したが、この海底面画像データにも、欠損しているピングが見られた。これは、HYPACK収録装置のデータ収録が間に合わないのではなく、SeaBat8101システムのソナープロセッサーで既にデータが欠損していることを示している。
 これらの結果については、今後更に検証が必要であるが、レンジ幅を極端に小さい値に設定する場合は、データの欠損があるかを十分に調査する必要がある。
 
(2)各データの時間的整合性
 HYPACK収録における大きな問題は、水深、海底面画像データ、測位、動揺データの各時間との整合性である。図88にHYPACK収録における時間遅れの概念図を示す。
 
図88. HYPACK収録における時間遅れの概念図
 
 SeaBat8101は1回の発信で、水深と海底面画像データの両方のデータセットを収集し、動揺データや測位データと共に、HYPACKソフトウェアで収録する。この時、時間情報をもたない水深、海底面画像データ、動揺データは、HYPACK収録装置のパソコンの時間がデータの先頭にイベントされることになる。大容量の海底面画像データは、水深データに比べて時間遅れが発生し易く、発信毎に遅れ時間が異なるのが特徴である。
 この時間遅れは、HYPAC収録装置のパソコンが、データ収録と同時にディスプレイ上に水深、海底面画像データをグラフィック表示するため、過負荷になっていることが原因との報告例がある。時間遅れは、最大10[ms]から80[ms]と推定される。
 
 この時間遅れの影響が顕著に現れるのは、海底面画像データの斜距離補正時である。HYPACK収録で得られた海底面画像データの斜距離補正では、海底面画像データに含まれる高度値を用いた場合、送受波器直下近傍において、最大約4.5m(海底面画像データ数に例えると20個前後)の位置誤差が生じる。
 一方、名古屋港実験では、この時間遅れの問題を検証するために、HYPACK収録とは別に、データ収録装置を用いて同時収録を行った。データ収録装置は、データ収録のみを行っているために、HYPACK収録のパソコンに比べて負荷が小さい。
 データ収録装置の海底面画像データを用いた斜距離補正では、送受波器直下近傍において、最大約1.2m前後(海底面画像データ数に例えると2個前後)の位置誤差が生じるものの、HYPACK収録に比べて位置誤差が大幅に小さい。
 残念ながら別収録したデータ収録装置では、良質な海底面画像データを得ることができなかったが、これについては現在調査中である。







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