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(d)斜距離補正エラーの検証
 (c)で示した高さのパラメータを用いて、斜距離補正を実施した。補正結果の画像例を図66〜69に示す。
 
 図66(a)は、水深データに含まれる最小水深値に、音速補正した値を用いて斜距離補正した音響画像図であり、(b)はその斜距離画像図である。図中の桃色線は、斜距離補正ポイントを示しており、桃色線と海底面が完全に一致すれば、斜距離補正が適切に行われたことを示す。他のパラメータを用いて斜距離補正した場合の画像と比較するために、(c)海底面画像データに含まれる高度値を使用した場合、(d)水深データの直下水深値を音速補正した場合の例を示す。
 (b)の斜距離補正エラーは、斜距離画像から水平距離に換算すると最大1.57mとなる。(c)海底面画像データに含まれる高度値の誤差は4.5m、(d)水深データの直下水深値を音速補正した場合では4.4mとなり、(b)と比較して約1.5倍大きくなる。
 (c)海底面画像データに含まれる高度値を使用した場合について、仮に高度値に音速補正を施した場合の斜距離補正エラーは、最大4.1mとなる。
 
 図67は、送受波器位置におけるヒーブ値を考慮した場合の例である。海底面画像データに含まれる高度値を使用した斜距離補正画像及び水深データに含まれる最小水深値に音速補正を施した数値を使用した斜距離補正画像を比較対象とした。ヒーブによる影響は、音波の送受信時のヒーブ差が大きいほど、斜距離補正エラーが大きくなる。送受波器位置でのヒーブデータのグラフより、音波の送受信時のヒーブ差は、約0.5cmであり、図中の送受波器直下付近に見られる斜距離補正エラーと比較した結果、ヒーブによる影響は、ほとんど無いものと考えられる。ただし、絶対水深値(最低水面から海底面までの深さ)を求めるためには、ヒーブ補正が不可欠である。
 
 図68(a)は、水深データに含まれる最小水深値に音速補正を施し、かつ送受波器位置のヒーブ値を考慮した場合の斜距離補正画像である。(b)は、音速補正を施した最小水深値で作成した斜距離補正画像を示す。斜距離補正エラーの大きさを比較した場合、(b)音速補正を施した最小水深値で斜距離補正をした場合の方が小さい。
 
 図69は、データ収録装置で収録した海底面画像データの斜距離補正画像及びHYPACK収録の海底面画像データに、音速補正を施した最小水深値で斜距離補正した画像である。データ収録装置の斜距離補正画像は、斜距離補正ポイントと海底面がほぼ一致している。一方、HYPACK収録の斜距離画像は、時間によって一致している所と一致していない所がある。これは、HYPACK収録の海底面画像データに、時間遅れがあることを示している。
 同様に、送受波器位置でのヒーブデータのグラフから、音波の送受信時のヒーブ差を読み取ると、約0.5cmであり、両図の送受波器直下付近に見られる斜距離補正エラーの大きさとの関係を調査した結果、ヒーブによる影響は、ほとんど無いものと考えられる。
 
 以上の結果から、斜距離補正に使用する高さの情報の中で最も誤差が小さいのは、音速補正を施した水深データに含まれる最小水深値である。またデータ収録装置で得られた海底面画像データの斜距離補正の例が示すように、HYPACK収録は明らかに、時間遅れが発生しており、その大きさはピング毎に変化していることが分かる。
 
LINE-1(HYPACK収録)
Data file = 008_1226.HSX
Total ping = 1671
収録レンジ = 25m
(a)音速補正を施した最小水深値で斜距離補正
(拡大画面:51KB)
 
(b)音速補正を施した最小水深値
 
(c)海底面画像データに含まれる高度値
 
(d)直下水深を音速補正
図66. LINE-1の斜距離補正画像(赤の数字は、最大誤差を示す)
 
(拡大画面:203KB)
図67. 斜距離補正のエラーとヒーブ値の比較
 
LINE-1(HYPACK収録)
Data file = 013_1256.HSX
収録レンジ = 25m
(a)音速補正を施した最小の水深値にヒーブ値を用いて斜距離補正
(拡大画面:53KB)
 
(b)音速補正を施した最小の水深値で斜距離補正
(拡大画面:48KB)
図68. LINE-1の斜距離補正
 
(拡大画面:134KB)
図69. データ収録装置で収録した海底面画像データの斜距離補正とHYPACK収録のデータとの比較







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