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(1)入力する海底面画像データの探査幅を一辺とし、航跡方向に探査幅とほぼ同じ長さを他辺とする正方形の中に含まれる全てのデータの正方形内平均値(c)を計算する。正方形内平均値cは、海底面画像データのピング数が増す毎に、進行方向に対する移動平均とする。
(2)(1)と同じ正方形内において、左舷右舷の音波の入射角度を直下から2.5°(SeaBat8101の場合は1.5°)のステップに分け、各ステップの平均値d(i=1、60)を計算する。
(3)(1)と同じ正方形内に含まれる海底面画像データ値(a(x))について、次式によって放射量補正を行い、補正後の出力海底面画像データ値(b(x))を求める。この計算は左舷右舷別々に実施する。
 
b(x)=a(x)*c/d(i)
 
入力海底面画像データ値 :a(x)、x=1、nx
  (nx:海底面画像データ数)
正方形内平均値  
 (探査幅を一辺とし、進行方向に探査幅とほぼ同じ長さを他辺とする正方形内のデータの平均値) :c
2.5°ステップ毎のデータの平均値 :d(i)、i=1、60
補正後の出力海底面画像データ値 :b(x)、x=1、nx
  (nx:海底面画像データ数)
 
(4)放射量補正を行う海底面画像データのピング数が増す毎に、改めて(1)と(2)を計算し、(3)を実施する。
 
 本研究の放射量補正は、探査幅上にあるそれぞれの入力データに対して、そのデータが属するステップの平均値と移動平均値の比率の逆数をそのデータに掛けたデータで入力データを置換することにより、送受波器直下付近の画像とその周辺部の画像の濃淡をほぼ同一に補正するものである。また移動平均の音波の発信回数(ピング数)は次式により算出した。
 
移動平均のピング数=探査幅/(船速×発信間隔)
 
 ANKOUサイドスキャンソナーの場合、探査幅を10、240[m]、船速8ノット(約4m/s)、発信間隔を約10秒と仮定すると、256ピング分の移動平均を算出して補正を実施する。SeaBat8101では、水深10m、レンジ幅を25mに設定した場合において、船速2ノット(約1m/s)、発信間隔を約1/30秒と仮定すると、700ピング分の移動平均を算出して補正を実施することになる。
 本方式によるANKOUの補正結果を図59に示す。補正前の画像は、直下水深値に比例して、曳航体直下から左舷右舷方向に、散乱強度が高い放射量歪みが顕著に見られたが、図59はそれらの放射量歪みが軽減されており、本手法の有効性が確認された。また本手法を用いてSeaBat8101の海底面画像データに適用した例が図60である。
 
(a)補正前
海底面画像データに含まれる高度値を使用して斜距離補正
 
(b)補正後
水深データに含まれる最小水深値に音速補正を施して斜距離補正
図60. SeaBat8101の放射量補正の例
 
(3)斜距離補正方法の検討
 地形歪み除去の精度に大きく影響を与える斜距離補正方法について、送受波器位置のヒーブ値を算出し検討を行った。
 
(a)音響画像図に含まれる斜距離補正エラーとその大きさ
 図61は、名古屋港実験で収録した海底面画像データを画像化したものである。
 
図61. 送受波器直下付近に見られる斜距離補正エラー(図中の矢印)
 
 送受波器直下付近に見られる散乱強度の弱い丸状の跡は、斜距離補正エラーを示している。このようなエラーは、地形歪み除去を行う上で水平距離の誤差の要因となる。エラーの大きさは、送受波器直下近傍に見られる散乱強度の弱い部分(図中の白い部分)の画像データ数を水平距離に換算することによって求めることができる。エラーの原因としては、斜距離補正時に使用する水深データの測深誤差、送受信時のヒーブ差、データ収録時における時間遅れ、地形歪みによる影響が考えられる。
 
 図61に含まれる斜距離補正エラーの水平距離の誤差の大きさを検証する。図62(a)と(b)は、それぞれ直下水深値を10mと20mにした場合の斜距離補正時に生じる水平距離の誤差を示している。データのサンプリング間隔と音速値は、それぞれ1/15000[秒]、1500[m/s]とした。
 
(a)水深10m
 
(b)水深20m
図62. 斜距離補正時の水平距離の誤差
 
 図61の送受波器直下近傍における海底面画像データの斜距離補正ポイントからの数から水平距離の誤差を図62(a)から読み取ると最大5m弱となる。
 
(b)送受波器位置のヒーブ値の補正
 斜距離補正エラーと送受波器ヒーブの関係を検討するため、データ収録に使用した機器配置図をもとに、POS/MVで得られた動揺データを用いて、送受波器位置のヒーブ値を求めた。
 
(拡大画面:14KB)
Xt=0.4625[m]
Yt=7.071[m]
図63. 送受波器位置のヒーブ値の算出
 
 POS/MVのデータは、POS/MV設置位置での計測値を収録したが、後処理により、便宜上、POS/MVの設置位置を船の重心と仮定して送受波器位置のヒーブ値を算出した。
 POS/MVで計測したヒーブ値と算出した送受波器位置のヒーブ値を図64と図65にそれぞれ示す。POS/MVのヒーブ値がプラスで、算出した送受波器位置のヒーブ値がマイナスのデータは、下向きピッチによるものである。
 
図64. POS/MVで計測したヒーブ値
 
図65. 送受波器位置のヒーブ値
 
(c)斜距離補正の方法
 斜距離補正時に使用可能な高さのパラメータとして、以下の7つの情報がある。
(1)海底面画像データに含まれる高度値(図61の方法)
(2)水深データに含まれる直下水深値
(3)音速補正を施した海底面画像データに含まれる高度値
(4)音速補正を施した水深データに含まれる直下水深値
(5)水深データに含まれる最小水深値
(6)音速補正を施した水深データに含まれる最小水深値
(7)音速補正を施した水深データに含まれる最小水深値にヒーブ値を考慮
 本研究では、上記のパラメータによって斜距離補正を行い、最適な方法を見出すこととした。







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