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2.4.2 幾何学的補正方法の検討(データ二次処理)
(1)送受波器の動揺に対する幾何学的補正方法の検討
 ターゲット位置を正確に把握し、目標値の評価を行うため、送受波器の動揺に対する幾何学的補正方法を検討する。本研究では、図70に示すように、GPSアンテナ位置から離れた送受波器位置を幾何学的に算出することにより、位置精度の高い画像作成の検討及びプログラム開発を実施した。
 
(a)送受波器位置の算出
(拡大画面:51KB)
図70. 送受波器の動揺による送受波器位置の算出
 
 図70より、GPSアンテナと送受波器の水平面との交点(Xa、Ya)は、次式で求める。
Xa=sin(head)×tan(pitch)×Z+cos(head)×tan(roll)×Z
Ya=cos(head)×tan(pitch)×Z-sin(head)×tan(roll)×Z
 
head:ヘディング値
roll:ロール値(port upをプラス(+))
pitch:ピッチ値(上向きピッチをプラス(+)、下向きピッチをマイナス(−))
Z:GPSアンテナと送受波器の水平面との交点の長さ(10.65m)
 
 さらに音波の送受信を行う送受波器位置(Xt、Yt)を次式によって求めた。
Xt=Xa+sin(head)×Ly+cos(head)×Lx
Yt=Ya+cos(head)×Ly-sin(head)×Lx
 
Lx:送受波器までのX軸のオフセット距離
 Lx=Xo×cos(|pitch|)
Ly:送受波器までのY軸のオフセット距離
 Ly=Yo×cos(|pitch|)
 
(b)海底面上における画像データ位置
 送受波器位置から海底面に向かって音波を発信した場合、海底面上における送受波器垂直軸の海底面との交点(左舷右舷の境界)を地図座標系(X、Y)で表現すれば、送受波器位置(Xt、Yt)を用いて、次式で表すことができる。
 
X=Xt+ALT*[sin(head)*sin(pitch)]
Y=Yt+ALT*[cos(head)*sin(pitch)]
 
ALT:送受波器高度
 
(c)グリッドサイズの選定
 グリッドサイズは、画像の解釈に大きな影響を与えるため、小さい方がより詳細な情報を得ることができる。しかし、海底面上での音波の照射覆域よりも小さい値を設定することは、画像データのファイルサイズが大きくなるだけで、詳細な情報を得ることはできない。一般的な目安としては、照射覆域を考慮して次式によってグリッドサイズを選定する方法がある。
 
グリッドサイズ=tan(送受信ビーム幅)×調査海域の最低水深
 
送受信ビーム幅: 1.5°(SeaBat8101)
  2.5°(ANKOU)
 
 しかしながら名古屋港実験の画像に関しては、海底面画像データの解像度を最大限に活用するために、グリッドサイズを4.23cm(1/500スケール、300dpiで算出)とした。
 
(d)送受信ビームの拡がりに対する照射覆域
 グリッドサイズを上式よりも小さくとると、図71に示すように、連続した画像にならず、線の画像となってしまう。SeaBat8101ANKOUで得られる海底面画像データは、1回の発信毎に1本の線の画像として取得されるため、このような症状が発生するが、送受信ビームは、送受波器の高度が高いほど、海底面での照射覆域が広がるために、海底面において、図71に示すような画像データの欠損は起きにくい。
 本研究では連続的な音響画像図を作成するため、各海底面画像データの全ての斜距離を計算し、それぞれについて海底面上での照射覆域を求めた。照射覆域は曳航高度及び斜距離長によって変化し、曳航速度、発信間隔、調査船の回頭、ヘディングによってオーバーラップを生じる。本研究の画像処理では、照射覆域と同じ面積に相当するグリッド位置に、同じ画素値のデータをオーバーラップして表現することとした。図72に出力例を示す。
 
図71. 送受信ビーム幅を考慮しない画像処理法の例
(グリッドサイズ=33.867m)
 
図72. 送受信ビーム幅を考慮した画像処理法の例
(グリッドサイズ=33.867m)
 
(2)地形歪み補正方法の検討
 今までのデータ解析結果から、地形歪み補正方法を検討した結果、HSXファイルから水深データ及び海底面画像データを抽出し、斜距離及び放射量補正を行った上で、最終的に両者を組み合わせることにより地形歪み除去処理を行う。
 
(a)海底面画像データの処理法
 海底面画像データに対して、斜距離補正及び放射量補正を実施する。斜距離補正には、水深データに含まれる最小水深値に音速補正を施した値を使用する。また海底面画像データについても、音速補正を行い、その効果を地形歪み除去画像から評価する。
 グリッドサイズは、データ収録時に決定される海底面画像データの解像度とする。したがって、名古屋港実験では、約5cmとなる。
 
(b)水深データの処理法
 水深データは、動揺、潮高、音速、屈折、喫水補正を行った上で、外側ビームに見られる不良データの除去を行う。グリッドサイズは、次式を目安とする。
グリッドサイズ=tan(送受信ビーム幅)×調査海域の最低水深
 名古屋港実験では、約30cmとなる。
 
(c)地形歪み除去
 500個の海底面画像データのデータ数に対して、水深データは最大で101個となる。海底面画像データ位置に合致する水深データは、まず存在しないので、左右あるいは前後から補間し、地形歪みの移動量を算出する。
 
(d)地形歪み除去の評価
 地形歪み除去後の画像を地形歪み除去前の画像から評価する。画像上から評価できない場合は、移動量を数値化する方式をとる。
 
2.4.3 データ処理プログラムの試作
 以下のプログラム開発を実施した。
(1)海底面画像データファイル作成プログラム
 HSXファイルから海底面画像データ及び高度値データ、動揺データ、測位データを抽出し、海底面画像データファイルとしてファイル出力する。この時、XYの測位データ(TM図法)を緯度経度値に変換する。
 
(2)放射量補正プログラム
 ビームパターンによる放射量歪みを軽減するためのプログラム
 
(3)斜距離補正プログラム
 海底面画像データに含まれる海水層のデータを取り除くためのプログラム。以下の数値を使用する。
1. 海底面画像データに含まれる高度値
2. 水深データに含まれる直下水深値
3. 音速補正を施した海底面画像データに含まれる高度値
4. 音速補正を施した水深データに含まれる直下水深値
5. 水深データに含まれる最小水深値
6. 音速補正を施した水深データに含まれる最小水深値
7. 音速補正を施した水深データに含まれる最小水深値にヒーブ値を考慮
 
(4)送受波器の動揺及び送受信ビーム幅を考慮したデジタル幾何補正画像処理プログラム
 送受波器の動揺データ及び送受信ビーム幅を考慮した画像処理を行うためのプログラム。







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