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基盤的研究課題調査調書

 事業名 造船技術研究開発課題の調査
 団体名 日本造船研究協会 注目度注目度5


4.3 新しい生産システムの要件
(1)船型開発〜設計〜工作まで一貫システムに必要なCADの要件
 2章で述べたように造船用CAD/CAMシステムの利用形態は、対象作業に異なるCAD/CAMシステムが利用されている。また、基本設計および見積支援システムは、造船用CAD/CAMシステムと分離しているため、重複入力によるコストと時間を費消することが問題である。このため船型開発〜設計〜工作まで一貫した統合システムの構築が必要であるが、この基軸となるCADについて検討した。
 1つ目の課題は、2次元(2.5次元)と3次元のシステムが混在している造船の現状にどの様に対応するかであるが、これは簡単に結論が導かれる。つまり、造船業は成熟した業界であり、このため2次元の図面しか伝達手段がなかった時代を経験しており、その後3次元化が進んでいるのであるから、2次元と3次元が混在し、2次元と3次元の中間に位置するものとして2.5次元が存在していると考えられる。従って、システムの混在に対する解決策としては、設計の早い時点で設計データを3次元化しデータベース化しておくためのツールを完備すれば、下流が必要とする2次元や3次元のデータを出力することで、現行のシステムとの共存が図れると考えられる。
 次に、2つ目の課題としては、CADシステムの混在がある。これは、3次元化するまでもなく2次元のままの方が作業者としては分かり易いという作業の存在や、3次元化することでデータ量が大幅に増減し、取り扱いが難しくなること、更に価格の問題などがある。これらの問題は大きな意味で生産システムを3次元化し活用する作業携帯に変革すれば自ずと解決される問題であるが、最も大きな問題は、データの互換性である。
 CADデータの標準化は1970年代からIGES、STEPといった規格化が進められているが、これらの規格による効果は薄く、未だ解決されていない根本的な問題である。
 このため、CADを多用する自動車業界では、メーカーのCADとベンダーのCADを一元化、即ち、同じCADを使うことで対応することや、それぞれのCAD間でトランスレータソフトと呼ばれるデータ変換ソフトを利用したり、モデリング屋と呼ばれる外注を通してデータを交換している。このため、時間とコストを消費していることが問題になっている。
 最近、国外CADメーカーによる造船業が持つ自社開発システムからの切り替えを促す働きかけがあることが話題になっていおり、自動車業界のように自社開発CADから市販CADへの移行が進められる動きがある※1
 
1:しかし、造船所では、CADメーカーに基本機能の充実を期待しており、造船特有の機能に ついては造船所で対応することを指向している模様、しかしながら前述のように、市販CAD ではCADの価格が高く、重いデータ量と、データ変換の困難性等が懸念される。
 
 このため、今まで投資した造船所のCADシステムの可能な限り存続を図り、更に、システムを3次元化するためには、軽く動く3D−CADをトランスレータ・ソフトとして使い、データの互換性を保証して使用する方法が考えられる。
 次に3つ目の課題は、現状CADのモデリングの問題である。これは、特に船舶のように自由曲面をもつ形状に対してパッチ当て、スィープ面やロフト面と云った曲面を近似的に生成するために、フィレット処理や面取り処理に大量なデータが必要になることが問題になる。所謂造船特有のフェアリング処理が従来の2次元図面でのフェアリングとは違った高度な技術が必要になる。また、船型計画の変更など、要目変更に伴う排水量等を自動的に積分する機能などが不可欠となるが、この様な処理は、変形を意識したモデリングが必要であり、現状の市販CADのように積み木細工的にモデリングするCADには不向きな機能である。
 
 この様な状況の中、現状のCAD業界の問題を造船の新しい生産システムに取り入れることは避けるべきであると共に、CADのモデリングに関する問題の解決を図らなければならない。以上のことから、船型開発〜設計〜工作まで一貫システムに必要なCADの要件としては、次のような事が考えられる。
 
a. 国産CAD若しくは国内にエンジニアがいるメーカーのCAD
b. 軽いCAD
c. 安価なCAD
d. モデルを粘土細工のように変形することが出来るモデリングをもつCAD
e. 今まで投資したCADシステムの存続も図り、更に、3次元化するためには、安価で 軽く動作し、正確な3次元の自由曲面を定義することができる3D−CADをトランスレータとして使う方法が考えられる。
 
(2)造船用図形群処理プロセッサー
 船体表面を、全体を表現する図形モデルと、周辺境界で全体図形に完全に接続して動かせる部分図形モデルとの集合体であると定義することを前提に、粘土細工のような変形機能をもち、全体及び部分図形モデルの保存量が確保されて自由曲面の定義による船型の表現方法が必要である。
 更に、外板と内構材との相対定義が可能であり、船体表面の形状変化に追従する内構材の図形モデル定義が出来る表現方法が必要である。 船型の滑らかさを確認できるように、曲面理論に基づく解析機能が自動的に行える必要がある。
 
(3)造船特有の機能の実現
a. フェアネス判定法
 ラインズによらないフェアリング方法を持つ必要がある。このためには、部分図形モデル接続箇所の滑らかさを曲面理論に基づく解析処理によってフェアネスの判定ができ確認できる機能が必要である。更に、船全体の滑らかさを評価する手法の開発が必要である。
 
b. 曲面測度修正法等
 要目の変更に伴って船型データを変形する際に、排水量等を自動的に積分する機能が必要になる。「造船用図形群処理プロセッサー」を活用して外板図形モデルの曲面表現や保存量の選定が反映されると共に、効率的な積分方法を開発する必要がある。また、一般配置及びその変更を船体曲面に反映させる方法についても同様に開発の必要がある。
 
c. 船舶用CFD、CAE計算のための格子生成機能
 船型開発のための時間とコストは極端に短縮され水槽実験などによる検証も減少している状況下では、CFD(数値流体力学)計算やCAE(強度計算などのFEM)計算を活用した検証が多用されることになる。しかしながら前述のように現行の一般的な汎用3D−CADのモデリングはパッチ当て、スィープ面やロフト面と云った曲面を近似的に生成するために近似誤差が生じる。更に、曲率が大きく変化するような場所では、計算精度を確保するために、密に計算格子を生成することが行われる。
 これらの問題は、曲面が近似でない表現になれば不必要に格子を細かくする必要が無くなり、格子生成時間や計算時間の短縮が図られることになる。これにより、高精度で高速な格子生成と計算処理が行えるため多数の検討を短時間に行えるようになると考えられる。
 
(4)船型開発〜生産設計システムの概要
a. 船型開発〜基本設計システム
 造船の建造工期短縮や高付加価値船建造のためには、PL(プロダクト・ライフサイクル)全体を決定する重要な仕様策定に関する作業を支援するために、船型開発〜基本設計システムが必要になる。
 船型開発に対しては、数値水槽、強度計算の精度向上と迅速化が必要である。
 基本設計に対しては、顧客承認をとるための仕様変更と決定による船型のフェアリング処理を削減可能な自由曲面をモデリング出来ると共に、船型開発システムと形状互換及び売価設定に必要な見積システムの実現のために生産設計から得られる生産情報を含むデータの共有化が可能な3D−CADシステムが必要である。
 
b. 基本設計〜生産設計システム
 生産設計で重要になる作業は、工場制約を考慮しその中で効率的な建造を検討するために行うブロック分割作業である。このブロック分割作業を3次元で行うために生産システムが当初から3次元ベースで定義、作業されているなら、結果をそのまま定盤計画に利用することができ、相応の工期短縮が可能となる。
 また鋼材発注に関しても「見込み(予量)」発注と材料歩留まりや工程間仕掛かり量を決定するネスティング工程について、3次元ベースで定義、作業することにより、2次元システムを使った従来の予想から3次元的な高精度な推定を行うことが出来るようになる。
 特にネスティングについては、船価の6割強が購入品となっているため、取材歩留まりと仕掛かり量の徹底した良化(仕掛かりについては、近年の様な低金利では重要度が下がるが、長い目で見た場合制御が可能な仕掛かりの仕組みが必要と考えられる)を行うために、効率的な見込みと引き当てが高精度であることが要求される。このためには、次に述べる生産計画情報(何時必要かという情報)との連携、及び、取材形状データと曲がり部の外板展開後の形状データが正確に定義されていることが必要であり、更に加工による変形を予め考慮できればより効果的である。
 生産計画、即ち、物量の算出と日程計画についても、高精度化と簡便性の向上が必要である。上記のようにブロック分割の高精度な検討が行われ、鋼材発注のムダが省かれれば、「仮定」を設けた粗い精度の計画精度である日程計画の改善が図られる。更に、実績を正確に収集できるようなシステムと併用すれば、生産計画と実績の誤差は小さくなり、基本設計時の売価設定時の推定精度が向上することになる。
 
(5)生産設計設計〜工作一貫
a. 外板加工システム
 板曲げ作業に適合し、「造船用図形群処理プロセッサー」の外板図形モデルの曲面表現方法に対応する外板展開法が必要である。本来は、板曲げ作業と外板展開は表裏一体の関係であるが、現状では、それぞれの作業が独立し、独自の思想で作業されているため外板展開方法と板曲げ作業のアンマッチングが見られる。このため熟練技能者に依存する作業となっていると共に、工数と品質にバラツキが生じる原因となっている。板曲げ作業の効率化、均一化を図るためには、外板展開と外板曲げ作業の理論的な関係を明確にし、これらを論理的に連結する作業指示出力機能をもつ加工システムの実現が必要になる。
 
b. 内構材等の加工システム
 板曲げと同様に3D−CADが有効であると考えられる曲げ捻りロンジ等の展開法についても従来の2次元によるランディング方法からの変革が必要になる。これは、「造船用図形群処理プロセッサー」を活用し内構材図形モデルの表現方法や保存量を反映させる必要がある。板曲げと同様に作業の効率化、均一化を図るためには、外板展開と内構材加工作業の理論的な関係を明確にし、これらを論理的に連結する作業指示出力機能をもつ加工システムの実現が必要になる。
 
c. 位置決め作業支援システム
 近年の造船の建造方法は、生産性の高いブロック建造法である。このためブロックの製作精度が求められるが、部材精度に起因する変形や溶接変形によって、ブロックの精度はバラツキが大きく、総組及び建造時のブロック搭載時に出来るだけ、修正作業が少なくなるように搭載位置を決める「位置決め作業」がある。この位置決め作業は、下げ振り、巻き尺といったピラミッド建造時から使われる様な古典的な計測手段によって判断しているため、熟練技能が不可欠となっている。この様な作業では、近年、接触型や非接触型の計測装置を活用することで、定量的に後に残るデータを取得することが可能になっていると共に、CADデータとの照らし合わせに拠って、ブロック精度の管理が可能になる。これらのデータを使って、橋梁の仮組シミュレーションと同様なシステムの実現が可能となる。
 
4.4 まとめ
(1)これからの造船に必要な生産システム
 従来型の市場主導の生産システムから、短工期で顧客が満足する要求仕様を適切な価格で実現するための、顧客主導の生産システムへ改革が必要。
 3D−CADを機軸にした船型開発〜設計〜工作の一貫した生産システム実現が必要
 柔軟で多様性がある生産基盤の実現できる生産システムの実現が必要
 
(2)解決すべき課題
a. 顧客の要求仕様策定と売価設定が早期に高精度で実施できるシステム
→基本設計が軸となり船型開発と生産設計の仲介を果たすシステム化
b. 外注比率増大に向けたシステム作り
→IT技術の活用
c. 新船型開発意欲の創出
→数値計算技術の向上
 
(3)新しい生産システムの要件
 基軸となる3D−CADの要件
3次元化 データの保存性(互換性の保証)
近似の無い正確な曲面表現の可能性
動作が軽く、データ量も少ない
安価であること
 
造船用図形群処理プロセッサー
 滑らかに連続性と保存量を確保する様な機能を持つ図形群処理プロセッサーの開発が必要である。これにより、近似のない自由曲面の定義と連続に曲面接続ができる様になる。
 
造船特有の機能の実現
フェアネス判定法
曲面測度修正法
数値計算処理のための格子生成機能
船型開発〜生産設計システムの概要 船型開発〜基本設計システム
基本設計〜生産設計システム
生産設計設計〜工作一貫
外板加工システム 内構材等の加工システム
位置決め作業支援システム







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更新日: 2020年3月21日

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