日本財団 図書館


高速高荷重推進システムの技術研究の調査部会
 
氏名 所属 役職 住所
E-mail
右近 良孝 海技研 輸送高度化研究領域
船型開発研究グループ
グループ長 181- 0004 三鷹市新川6-38-1
ukon@nmri.go.jp
安東 潤 九州大学大学院工学研究院
海洋システム工学部門
助教授 565- 0871 福岡市東区箱崎6-10-1
ando@nams.kyushu-u.ac.jp
玉島 正裕 (有)流体テクノ 代表 739- 8527 佐世保市名切町1番2号、403
tamasima@sirius.ocn.ne.jp
竹子 春弥 海技研
輸送高度化研究領域船型開発研究グループ
  181- 0004 三鷹市新川6-38-1
takeshi@nmri.go.jp
         
 
高速高荷重推進システムの技術研究の調査
 
1. はじめに
 現在、欧米では高速船の研究開発が盛んに行われている。特に、高速船の大型化に伴って高馬力を吸収できる推進システムとこれに対応した船型の開発が重要な課題となっている。この種の推進システムとしてどの様なものが期待されているか、最適な船型としてどの様なものを考えるべきか、現状で何が問題として造船所・設計者を悩ませているか、また、これらの設計をする上で必要とされるツールとしてどこにどの様なものがあるか、現状の設計・解析ツールの問題点と課題も含めて調査を行った。
 この報告書で言う「高速高荷重推進システムの定義」としては、例えば、
(1)高速とは
・船速、Vs=22kt以上
・フルード数、Fn=Vs/(gLWL0.5=0.21以上
 但し、g;重力加速度、LWL;満載喫水線長さ
とする。
(2)高荷重とは
・荷重係数、PBB/(Ld2Vs3Z)=0.003以上、
 但し、PB;主機軸馬力(MCR)、L;船長(LPP)、B;船幅、d;喫水、Z;軸数
・推力係数、CT=T/(0.5ρVA2(πDP2/4))=1.0以上、
 但し、T;プロペラ推力、DP;プロペラ直径
・馬力係数、BP=NPPP0.5/VA2.5=18以上、
 但し、NP;プロペラ回転数、PP;PHP=DHPηR、ηR:推進器効率比
 
 この他に、
・プロペラ荷重(PB NP20.4 < 3,500
・プロペラ荷重度、PB/(πDP2/4) < 590
がプロペラ設計の難しさを表す指標(Difficulty Index)と提案されており、それぞれ許容値が与えられている[1]。これらの許容値は設計に注意を払うべき度合いの目安として使われるものであり、必ずしも超えてはいけないというものではない。
 
 (1)と(2)のいずれをも満たす船と推進システム調査の対象とし、これからはずれるものも参考として含める。
 
2. 調査の進め方
 
2.1 ニーズの現状分析
 現在、欧米でどの様な研究開発が行われているかを船種とプロパルサの両面から文献により調査した。ここ数年の内外国雑誌、論文(シンポジウム、学会)、機関誌・技報、造船造機会社パンフレット(SMM2000、 SMM 2002で入手したものも含む)の他、インターネットのWeb Siteなども調べた。船種としては、主に高速大型コンテナ船、高速中型コンテナ船、高速Ro/Roフェリー、高速RoPaxフェリーなどを対象とした。また、船型としては単胴船(Monohull)、双胴船(Katamaran)、三胴船(Trimaran)、五胴船(Pentamaran)などがあり、それぞれに装備されたプロパルサとその限界や可能性とともに、最適なプロパルサ設計法などを調査の対象とした。
 一方、プロパルサとしては、形式から固定ピッチプロペラFPP、可変ピッチプロペラCPP、ウォーター・ジェット推進器、ポッデッド・プロパルサ、二重反転プロペラCRP、タンデム・プロペラ、ダクテッド・プロペラ、ハイリースキュード・プロペラ、ティップレーキ・プロペラ、CLTプロペラなどがあるが、これらが高速高荷重状態で有効に機能するか、また装備すべき船型としてどんなものが考えられるかを調査の目標とした。一方、機能面から考えるとプロパルサとしてSCP(Super−Cavitating Propeller)、TCP(Trans−Cavitating Propeller)、NCP(Non−Cavitating Propeller)、ベンチレーテッドプロペラ、サーフェスプロペラがあり、これらについて、各船種に適用した時のそれぞれの限界や有効性について調べることとした。
 推進システムという観点からすると、舵を含めた船型・プロパルサの最適な組み合わせを考えるべきで、それぞれの船種について研究課題と対象とすべき船型とプロパルサについての研究を提案することを目的とした。
 
2.2 必要とされる理論的設計ツールの技術レベルの現状と問題点の分析
 以下に記述される様な設計や性能予測項目があり、ツールとして次のものがあることが知られている。活用されている状況を調べることを念頭に置き、プロペラと船型を調査をした。
A. 船型開発
a. 粘性抵抗設計;CFD(Nice、Neptune、ShipFlow、StarCDなど)
b. 造波抵抗設計(曳波、造波干渉を含む);Rankine−Source法、CFD(Surfなど)
c. 砕波・スプレー抵抗設計;CFD
d.波浪中推進・運動性能予測;SWAN(Ship Wave ANalysis)
e. 波浪衝撃圧力予測
f. 安定性・強度確認他
B. 推進システム関係
a. キャビテーション発生範囲予測;船研(右近)法、船研(工藤)法、九大(安東)法、三井(湯浅・石井)法、PUF3A
b. 推力低下予測;船研(工藤)法、九大(安東)法、PUF3A
c. 船尾変動圧力予測;Holden法、HSVA法、MIT法
d. エロージョン予測;なし
e. 推進効率(設計点、オフ設計点)予測;九大(中武)法
f. 最適プロペラ設計;三菱(星野・川北)法、船研(右近・工藤)法
g. プロペラ性能;QCM(星野・中武・安東)、Panel法(小山・星野)
h. 強度確認他
 
2.3 必要とされる実験的設計ツールの技術レベルの現状と問題点の分析
 以下に記述される計測項目についての技術レベルを調査の対象とした。
A. 船型開発
a. 抵抗・自航試験;ウォーター・ジェット推進器、ポッデッド・プロパルサ
b. 流場・可視化計測;LDV/PIVによる船尾流場計測、8孔管によるプロペラ後流計測
c. 船体表面圧力計測
B. 推進システム関係
a. キャビテーション試験法;気泡核制御、乱流促進
b. 船尾変動圧力計測法;船後キャビテーション試験、回転数影響、高レイノルズ数
c. エロ−ジョン試験法;定量化の試み
d. 流場・可視化計測;LDV/PIVによる計測
 
2.4 海外プロジェクトの調査
 以下に示す海外プロジェクトが実施されているが、そのいくつかについて調べた。
a. Fast Monohull(Blohm+Voss)Project
b. B-Max (Kvaerner Masa-Yards)Project
c. Air Lubricated Ro-Pax Vessel(DK Group, Marin)Project
d. Fast Ship(Philadelphia-based Fast Ship Inc. )Project
e. EroCav(HSVA)Project
f. FFB(Norasia & Nigel Gee and Associates)Project
g. Post−Panamax(Lloyd's Resister)Project







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION