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基盤的研究課題調査調書

 事業名 造船技術研究開発課題の調査
 団体名 日本造船研究協会 注目度注目度5


5. 機関関係技術課題
 
5.1 高速船の推進源
 多用途・多目的に使用される各種船舶は、推進動力源として様々な原動機が採用されてきている。舶用推進システムは、各種原動機の中でディーゼル機関によるプロペラ推進が主流となっているが、各種原動機の熱効率比較を図−5.1に示すように、熱効率に優れていることである。
 ディーゼル機関の熱効率は、広範囲の出力に亘り最も優れており、出力が増大、すなわちディーゼル機関が大形化するに伴ない熱効率が良くなる傾向にある。近年、大形舶用2サイクル低速ディーゼル機関の熱効率は50%以上となっている。また、ガスタービンは、出力が増大するに伴ない顕著に熱効率が良くなる傾向にあり、50MW以上となると中速ディーゼル機関の熱効率に接近することが注目される。
 我が国において、地球環境保全の高まりから、陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトと海上輸送の高速化の推進が社会的にも大きな課題となっている。
 船舶用機関としては、100余年に亘る歴史と実績、すなわち信頼性・耐久性およびメンテナンス性で優れていること等から、ディーゼル機関が一般的に採用されている。また、高速商船用機関は、限定された船内スペースの問題から、高出力・コンパクト・軽量・低振動・重油焚き等で有利となる4サイクル中・高速ディーゼル機関が一般的に採用されている。
 近年、ディーゼル機関に代わる動力源、そして石油資源に代わる新たなクリーンエネルギーとして、ガス資源等代替燃料を利用する原動機、すなわちガス機関、ガスタービン機関、水素機関、メタノール機関、DME(ジメチルエーテル)機関、燃料電池等が、船舶用動力源としても環境保全問題から注目されてきている。
 
 高速商船用推進システムの原動機の選定に当たっては、特に下記の点に注意することが重要である。
・各船舶の運航負荷パターンに対する最適な機種選定とマッチング調整
航路サイト条件、連続常用出力、稼動時間、発停頻度、低負荷運転条件、最高出力等
・船舶の荒天航行中、レーシング発生に伴なう主機関の負荷変動・過負荷・過回転に耐えうる適切な機種選定とマッチング調整
負荷追従・応答特性、負荷投入・遮断特性、出力余裕度等
・各船舶の使用条件毎に対する原動機のメンテナンス事項の明確化
メンテナンス項目と時間、主要部品点検基準、部品寿命等
・使用燃料に対する適切な機種選定と仕様調整
燃料油処理装置、材質、表面処理、構造等
 
 高速商船の荒天航行時に発生するプロペラやウオータージェットのレーシングは、原動機にとって厳しい使用条件であり、過負荷・過回転等による主要部品の機械的・熱的強度が使用限度を超えないように評価することが必要である。また、高頻度の発停、使用時間が少なく停止時間が長い、長時間低負荷運転等は、原動機にとって以外と過酷な使用条件であり、確実にスタートし、低負荷から高負荷の全領域で使用する原動機を全領域で最良の燃焼状態とすることは難しく、運転時間の経過に伴なう原動機の汚れ等による性能劣化を十分考慮したマッチング調整と諸対策を講じる必要がある。
 
5.2 ディーゼル機関
 高速商船用ディーゼル機関は、機関室の容積、燃料タンク等の問題から、軽量・コンパクト化、燃料消費率重要な選定要因となる。2サイクル低速ディーゼル機関から4サイクル中・高速ディーゼル機関の単位出力当りの重量比較結果を表 に示す。4サイクル中・高速ディーゼル機関は最大出力に限界はあるが、単位出力当りの重量は2サイクル低速ディーゼル機関の重量の1/3〜1/2の軽量化となる。また、機関の全高も約2/3程度のコンパクト化となる。
 前述の図−5.1に示すように、4サイクル中・高速ディーゼル機関は、2サイクル低速ディーゼル機関に比べて、中速ディーゼル機関で3〜5%、高速ディーゼル機関で5〜10%程度劣っている。今後、4サイクル中・高速ディーゼル機関が生き残るために、熱効率とトレードオフの関係にある排ガス環境問題を克服するとともに、すでに限界近くに達している熱効率を、あらゆる可能性のある各種要因を新技術開発の積み重ねにより、一層熱効率を向上することが期待されている。
 ディーゼル機関は、2つの課題、すなわち環境対策とエネルギー対策を抱えている。環境問題は、HCとNOxによる光化学オキシダント、酸性雨による森林消滅、CO2による地球温暖化等、地球環境問題が世界的規模で急速に湧き上がってきている。エネルギー問題は、あと半世紀で枯渇すると言われている化石燃料の枯渇に対する対応施策である。
 従って、ディーゼル機関が、今後予想される一層厳しい排ガス規制を克服して、更なる熱効率(燃費)向上を図ってゆくためには、次の技術課題を乗り越えてゆく必要がある。
・高出力・低燃費化・・・過給機・過給方式の高効率化・燃料噴射系の高圧化・回転数上昇(新過給方式・電子制御燃料噴射・吸排気システム等)
・燃焼性能改善・・・燃料噴射系・燃焼室・吸排気系と圧縮比の適正化(電子制御燃料噴射・吸排気システム等)
・機械損失改善・・・摺動部品・運動部品の適正化(新材質、表面改質、軽量化等)
・排ガス有効利用・・・排熱回収システムの適正化(高効率システム化、出力還元等)
・冷却損失改善・・・燃焼室廻り部品の適正化(セラミックス化等)
・附加技術開発・・・水噴射・エマルジョン燃料・燃料改質添加剤等
・メンテナンス時間(TBO)延長・・・特に高速ディーゼル機関
 
5.3 ガスタービン機関
 高速商船用機関として、ディーゼル機関以外の機関、例えばガスタービン機関などの選択肢もあるが、初期コスト、運航コストの占める燃料費等の経済的問題を考えると、ディーゼル機関の優位はなかなか動かし難い。しかし、ガスタービン機関は、ディーゼル機関に比べNOx等の有害排出物の低減が比較的容易であり、高出力・コンパクト・軽量・低振動という大きな長所をもつことから、次世代船舶用機関として注目されている。
 現在国内で研究開発が推進されている次世代内航船(スーパーエコシップ)プロジェクトは、SMGT(スーパーマリンガスタービン)で開発中の2500kW級高効率小型ガスタービンによる電気推進システムを採用し、船速13.5ノットと高速ではないが、A重油使用で熱効率が38〜40%と高速ディーゼル機関と同等であり、NOx排出量が1g/kWh以下とディーゼル機関の約1/10を目標として開発されている。また、総トン数約14,500トンのTSL(テクノスーパーライナー)超高速貨客船は、27MWの中型ガスタービン2台で駆動されるウオータージェット推進システムを採用し、船速約40ノットを目標として開発されている。
 ガスタービン機関が今後予想されるCO2低減等の厳しい排ガス規制を克服するためには、熱効率向上が重要であり、次の技術課題を乗り越えてゆく必要がある。
・高出力・低燃費化・・・高温高強度材料・高圧高回転
・燃焼性能改善・・・燃焼器・タービン・コンプレッサーの高効率化
・排熱有効利用・・・中間冷却/再生器・コンバインドサイクル
・負荷追従応答性改善
・サイト条件による性能変化改善
・メンテナンス時間(TBO)延長
 
5.4 DF機関・ガス機関
 地球環境保全問題から、そして石油資源に代わる新たなクリーンエネルギーとして、豊富な埋蔵量を持っているガス資源等代替燃料を利用するガス機関が、船舶用動力源としても注目されてきている。ガス機関は、今迄ディーゼル機関の一部改造により、液体燃料およびガス燃料の焚けるDF(デュアルフュエル)機関が船舶用主機関に使用されているが、近年ガス燃料専燃のガス機関もみられる。ガス機関は、ガスタービン機関と同様に、低負荷運転・負荷追従応答性能等の問題から、電気推進システムとの併用が一般的に採用されている。当初のガス機関は火花点火方式での希薄燃焼(リーンバーン)を採用していたが、少量の液体燃料を着火源とする油着火ガス機関が開発され、高点火エネルギーが得られることにより燃焼安定性・高効率・高出力が実現し、機関構造がディーゼル機関の小改造であることからの高信頼性から、将来の船舶用推進機関として普及することが期待される。
 ガス機関は、ディーゼル機関と同様に今後の排ガス規制を克服し、船舶分野の市場を拡大してゆくために、ディーゼル機関と同類の技術課題とともに、特に次の技術課題が重要である。
・高出力・低燃費化・・・過給機・過給方式の高圧高効率化(新過給方式・電子制御)
・燃焼・着火・低負荷性能改善・・・燃焼室・吸排気系の適正化(電子制御・VTG過給機)
・燃焼監視システム・・・ノッキング・失火異常燃焼防止
・負荷追従応答性改善
 
5.5 電気推進システム
 電気推進システムは、機関直結推進システムに比較して、初期コストおよび推進効率等の問題から、古くから砕氷船・作業船等の特殊船舶に使用されるのみであった。
 ガスタービン機関やガス機関は、低負荷運転・負荷追従応答性の問題、また近年の環境対応問題、電気制御機器の技術進展などから、電気推進システムの併用が世界的に増加傾向となっている。
 電気推進システムが採用される背景には、下記の長所によるものと推察する。
・経済効果向上と低エミッション(主機・補機の共用化、多数発電機関化)
・高安全性と冗長性 ・操船性・操縦性の向上 ・レイアウト柔軟性による有効利用スペース拡大 ・コスト面で効果的な建造(納入、据付、組み立て)
・乗客・乗組員の居心地性向上
 また、15余年前から旅客船・フェリー等での採用が増加しているポッド型電気推進システムが注目されているが、ポッド型電気推進システムは更に下記の長所によるものと推察する。
・船体内スペースの一層の拡大 ・ラダーより優れた操舵能力・操船性 ・低騒音・低振動(電動モーターの水中設置)
・一層のコスト面で効果的な建造(納入、据付、組み立て)
・船尾形状の理想的設計による省エネルギー化
 現在、ポッド型電動推進システムは、主に欧州3社で実用化されているが、日本においても国内産の国家プロジェクト(スーパーエコシップ)が推進されている。 電気推進システムは、上述のような多数の長所があるので、コスト・経済面での努力により、高速商船を含む多種多様の船舶に適用されてゆくものと期待される。
 地球規模での環境保全が年々重要視されている今日、従来の経済性からの省エネ要求はもとより、ゼロエミッション化が要求される動向となっている。メタノール・水素・DME等のクリーンエネルギー源への転換の期待が出てきている現状では、あらゆる分野で環境負荷低減対策やエネルギー変換システムの研究開発機運が加速される傾向にあり、高速商船機関もこれらの多様なエネルギー源を使用できるものに進展してゆくものと推察される。
 
図−5.1 各種原動機の熱効率比較 (三菱重工技報から)
 
表−5.1 ディーゼル機関の重量比比較(1MW以上)
  大型ディーゼル機関
(2サイクル、低速)
中型ディーゼル機関
(4サイクル、中速)
小型ディーゼル機関
(4サイクル、高速)
ディーゼル機関本体 20〜40 8〜15 3〜8
マリンギア(減速機) 2.5〜5.0 2.5〜5.0
総重量 20 〜40 10.5 〜 20 5.5 〜 13
(平均) (30) (15) (10)







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更新日: 2020年4月4日

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