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米国における船舶のバリアフリー化推進に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


4. その他
A. 訴訟
 
 旅客船事業者が障害を持つ乗客のアクセシビリティに取り組んできた動機は、訴訟の回避ではなく、市場要因(障害を持つ乗客という成長市場のニーズを満たすため)である場合が多い。しかしながら、旅客船事業者のADA遵守に関して訴訟が提起された例もある。
 
 当初、米国旅客船事業者は、旅客船がADA要求の対象範囲に含まれるかどうかを疑問視したが、1994年に発行された「障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act)」のタイトルIII「Technical Assistance Manual」の補遺で、米国司法省(DOJ)は「民間企業が所有する船舶はタイトルIIIの対象に含まれるか」という問題に答えを出した。DOJの回答は次のとおりである。
 
 船舶も対象に含まれる。主に交通手段を提供する事業を営む民間事業体が運航する船舶は、米国運輸省が定めたADA要求の対象である。船舶、または船舶の一部が公共性のある施設の12のカテゴリのいずれかの機能を有する場合、その船舶は公共性のある施設に対するタイトルIIIの要求事項に適合しなければならない。
 
実例:あるクルーズ船は、クルーズ船の運航を主要事業としている民間企業によって所有され運航されている。この船舶には、宿泊設備、レストラン、バー、ヘルスクラブ、ナイトクラブがある。その民間企業は公共性のある施設であり、タイトルIIIの適用される要求事項を満たさなければならない。
 
 船舶上の公共性のある施設は、容易に達成可能であればバリアフリー化しなければならないなど、タイトルIIIのすべての要求に適合する必要がある。ただし、クルーズ船の新規建造または改造用のアクセシビリティ基準はまだ策定されていないため、現在のところ船舶は新規建築または改造用のアクセシビリティ基準の遵守を義務づけられてはいない。
 
 基本的に、クルーズ船は公共性のある施設なので、外国籍であろうと米国籍であろうと、ADAの対象に入るとDOJは述べている。しかしDOJは、実際にどのような改造を施すべきであるかについては具体的に何も示していない。9
 
 当時、米国市場で営業している大型クルーズ船のほとんどすべてが外国籍であったため、外国籍の船舶がADAの対象となるかどうかが最も大きな問題であった。DOJは上記の回答で、ADAは米国の港に停泊するクルーズ船すべてに適用されると説明していたが、1999年、ADAは外国籍の船舶にも適用されるとの考えを再度明らかにした。10 しかし、この問題が問われるような訴訟が提起されたのは、2000年になってからであった。
 
 Tammy Stevens氏は車椅子を使用しているが、Premier Cruises, Inc.はバリアフリー対応の客室を提供すると約束していたにも関わらず、乗船してから車椅子で客室に入れないことが分かり同氏は落胆した。その後、同氏は提訴したが、マイアミ裁判所は外国籍の船舶にはADAは適用されないとして申し立てを却下した。同氏はジョージア州アトランタの第11米国巡回控訴裁判所に控訴し、ADAは外国籍の船舶に適用されるとの判決が下された。
 
 外国籍の船舶によるADA遵守問題が解決されると、こんどは別の訴訟が提起された。フロリダ州マイアミを本拠地とするAccess, Now Inc. という権利擁護団体が障害を持つ乗客に対する船舶のバリアフリー化の取り組みに関してCarnival Cruise Linesとその他のいくつかのクルーズ船事業者を訴えたのである。結局、Carnivalは2001年6月に、ADAに適合するように既存の船舶を改造すること(今後建造する船舶はさらにバリアフリー度を高めること)に同意し、和解が成立した11付録2を参照のこと)。Access Nowの副社長Phyllis Resnick氏によると、Holland America、Royal Caribbean等を含むいくつかのクルーズ船事業者への訴訟はまだ係争中であるという。同氏は事業者達が、マイアミの判事は基準が策定されていないのは連邦司法省の責任であるとしたことを承知しているので、基準が決まるまでは陸上交通に準じると考えていると説明している。Resnick氏は、多くのクルーズ船事業者はこの問題に取り組まなければいけないことを知っているし、現に自社の船舶をバリアフリー化してきており今後もますます障害をもつ乗客のニーズに応える努力をしてゆくだろうと述べている。12
 
 Society for the Advancement of Travel for the HandicappedのLaurel Van Horn氏によると、これらはクルーズ船業界に関連する珍しい訴訟事例であるという。同氏は、訴訟が少ないのは、障害を持つ人々のアクセシビリティを高めるための取り組みをクルーズ船業界が迅速に進めているからであると見ている。
 
B. 詳細情報の入手方法
 
 米国市場で営業しているツアークルーズ船事業者に旅客船のアクセシビリティについて学ぶ機会を与える業界会議が2つある。1つは、Society for Accessible Travel & Hospitalityの主催により年1回開催されるWorld Travel Congress、もう1つはAmerican Society of Travel AgentsのWorld Travel Congressと一緒に年1回開催されるCruisefestである。
 
World Travel Congress for Travelers with Disabilities and the Mature
(前回はフロリダ州フォートローダーデールで2002年1月16〜20日に開催)
Society for Accessible Travel & Hospitality
347 Fifth Avenue, Suite 610
New York, NY 10016
電話番号:212−447−7284
 
Cruisefest
(2002年10月21〜26日にフロリダ州マイアミで、2003年5月29日〜6月3日にカナダのヴァンクーヴァーで開催予定)
American Society of Travel Agents
1101 King Street, Suite 200
Alexandria, VA 22314
電話番号:703−739−2782
 

9
この問題に対するUS DOJの具体的な文書は、http://www.usdoj.gov/crt/foia/tal334.txtを参照のこと。
10
この問題に対するUS DOJの具体的な文書は、http://www.usdoj.gov/crt/foia/tal793.htmを参照のこと。
11
Access Now, Inc.の詳細は、http://www.adaaccessnow.org/home.htmを参照のこと。
12
Resnick氏はDisney Cruise社に対する訴訟は、基準の問題で却下されたのではなく、Aceess NowがDisney Cruise社の障害を持つ乗客のアクセス問題をウェブサイトの情報に依頼し直接調査しなかったという理由だと述べている。







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