日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 技術 > 海洋工学.船舶工学.兵器 > 成果物情報

米国における船舶のバリアフリー化推進に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


C. 大型クルーズ船
 
 ICCLは、Webサイトで同協会の考え方をまとめた『障害を持つ人々に対するクルーズ船のアクセシビリティ(Cruise Ship Accessibility for Persons with Disabilities)』を公開している。この文書には次のように記載されている。
 
 クルーズ業界は長年にわたり障害を持つ乗客のアクセシビリティの問題に積極的に取り組んできました。クルーズ業界が最も重要視しているのは、すべての乗客の安全と快適です。アクセシビリティガイドラインに適合し、国際的に要求される建造要求および安全要求を満たすためには、様々な技術的問題を解決しなければなりません。Safety of Life at Sea Convention (SOLAS)には、国際的に事業を営むすべての船舶を対象とした国際基準が定められています。
 
 また、クルーズ事業はその性質上、どうしても国境を越えるので、旅客クルーズ船業界は International Maritime Organization(IMO)の指示に従います。IMOはクルーズ船の安全、設計、建造の国際基準を確立する団体です。ICCLは、障害を持つ人々が利用できる設計/運用機能に関する旅客船ガイドラインを策定するIMO作業グループに積極的に関わってきました。
 
 米国運輸省(DOT)は、まだ米国籍の商業船舶に対するアクセシビリティ基準の規制を実施していません。DOTは、商業船舶の規則を公布する前に、遠洋航行船の国際的な設計・建造・運航基準と矛盾しないかどうか評価しなければならないと述べています。
 
 1998年から2000年にかけて、ICCLの代表者は、旅客船諮問委員会(Passenger Vessel Advisory Committee:PVAAC)のメンバーとして積極的に活動しました。PVAACは米国建築物・交通機関バリアフリー委員会(United States Architectural and Transportation Barriers Compliance Board)によって設立された組織であり、旅客船のアクセシビリティに関する勧告の作成をその任務としています。
 
 現時点では、旅客船を対象とした規制要求はありませんが、クルーズ業界は、ICCLメンバーの船舶が障害を持つ人々に配慮し、バリアフリー度を高めるように積極的な取り組みを続けています。クルーズ業界は、すべての乗客それぞれを大切にするとともに、特別なニーズを持つ乗客の要求に対応するために最善を尽くしています。
 
 ICCLの代表やそのメンバー、そしてアクセス委員会や障害者団体の代表者も、米国市場で営業している大型クルーズ船事業者が障害者団体が求めるバリアフリー化に迅速に対応してきたことを認めている。
 
 実際、大手クルーズ船事業者は、ほとんどの場合、規則に関係なく、バリアフリー化に取り組んできた。つまり、大型クルーズ船事業者の多くは、ADAとは関係なく、バリアフリー化を求める顧客の需要を認識していたのである。一部の大型クルーズ船事業者は、アクセス委員会やその他の組織が旅客船規制を策定するのを待たずに、陸上の建築物に対する仕様(ADAAGなど)を旅客船に適用し始めている。
 
 障害を持つ旅行者を代表する非営利教育機関、Executive Director of the Society for the Advancement of Travel for the Handicapped(SATH)は、障害を持つ旅行者を対象とした米国唯一の権利擁護団体であり、障害を持つ成人旅行者の認知、尊重、アクセシビリティおよび旅行業界における障害を持つ人々の雇用を促進するために活動している。7
 
 SATHの常任理事であるLaurel Van Horn氏によると、大型クルーズ船事業者はいずれも障害を持つ人々のアクセシビリティを高めようとしてきたが、なかでも最も積極的で顕著な取り組みを実践してきた大型クルーズ船事業者は、Holland America、Royal Caribbean、Princess Cruisesであるという。
 
Holland America
 
 Horn氏は、従来からクルーズ旅行の乗客は年配の人々が多いので、高齢者や年配の顧客を対象としている大型クルーズ船事業者は自主的に変革を開始した(高齢者のアクセシビリティ要求を満たすために)と述べている。Holland Americaはその良い例といえる。
 
 ICCLと同様、Holland Americaも障害者のアクセシビリティに関する方針を公式に発表している。また、そのアクセシビリティに関する方針を確実に運用するために、正式な責任者を置いている。責任者の連絡先は次のとおりである。
 
Jennifer McCloskey
Manager of Access and Compliance
Holland America
300 Elliott Ave. West
Seattle, WA 98119
電話:206−281−3535
電子メール:jmccloskey2@hawl.com
 
 Ms. McCloskey氏によると、同氏は8年前にアクセシビリティに関する同社の方針と手続きを標準化するために雇われたという。当時から同社はやがてクルーズ船にもアクセシビリティ規制が導入されるとみていたが、それは間近なことではないと考えていた。しかし、Holland Americaは障害を持つ人々の旅行が増えつつあることを認識し、この有望市場に進出したいと考えた。こうして、同社はMcCloskey氏を雇い、陸上建築物を対象としたADAAGのうち、クルーズ船に当てはまる規定を既存の船舶と新規建造船舶に適用し始めた。
 
 McCloskey氏によると、Holland Americaは、乗客や乗員に何らかの安全上のリスクや危険をもたらさない限り、クルーズ船に適用できるADAAGの規定を最大限遵守しているという。したがって、バリアフリー対応の客室は、ADAAG規制に従ったドアの幅、ハンドル、鏡の高さなどになっている。このような陸上建築物用のADAAG規制はクルーズ船にも簡単に適用できるからである。しかし、ADAAGは、廊下の要件として、一人の人が車椅子に乗っている別の人とすれ違うことができるだけの幅を求めている(ホテルなどで)。クルーズ船は空間に制約があるので、二人の人がまともにすれ違うこともできない通路もあるとMcCloskey氏は指摘している。このような場合、陸上建築物用のADAAGをクルーズ船に適用することはできない。
 
 McCloskey氏の話では、Holland Americaは既存の船舶に広範囲な改造を施してきたが、新たに建造する船舶のバリアフリー度は既存船舶よりはるかに向上しているという。
 
 たとえば、同社の旧式のエントリーレベルの(市場価値および価格の面で)旅客船にはバリアフリー対応客室が6室あるが、新しい旅客船はどれもバリアフリー客室を22〜28室装備している。さらに、新しい旅客船はどれも、公用スペース(ダイニングルーム、劇場、公用トイレなど)のバリアフリー度が向上している。
 
 McCloskey氏によると、既存の船舶(最も古いものは1992年建造)に関しては、作業が必要になったときに、その作業範囲に対してバリアフリーの改善を施しているという。小規模な調整(鏡の位置を下げる、ハンドルの交換など)はいつでも行えるが、大規模な調整(リフト装置の設置など)を実施できるのは、年2回定期的に船舶が乾ドックに入る期間だけである。
 
 同氏によると、Holland Americaの既存の旅客船の中で最もバリアフリー度が高いのは、ms Volendamである。この旅客船は、各種(有窓、無窓、バルコニー、ミニスイート)のバリアフリー対応客室を22室装備していることを特徴としている。このような客室のドアは敷居がなく、幅36インチである。バスルームのドアにも敷居がなく、幅は26インチになっている。30インチ×58インチのロールインシャワーには、ハンドヘルド式シャワーヘッドと手すりが取り付けられている。洗面所の高さは36インチ、鏡の高さは45インチ、トイレは幅16インチで、手すりが取り付けられており、要求があれば、昇降便座も使用できるようになっている。客室のスイッチはすべて高さ40インチの位置にあり、床からベッドのマットレスの上までの高さは20インチになっている。さらに、乗客は、TDD装置、増幅機能付き電話機、可視警報器、ベッド振動式警報装置、テレビ用クローズドキャプションデコーダ、点滅式ドアブザーを要求できる。
 
 Holland Americaは、車椅子を使用する乗客が旅客船、テンダーボート、桟橋の間を安全かつ快適に移動できるようにした初めての大手クルーズ会社であり、ms Volendamには、こうしたシステムが装備されている。これは、Shore Tender Accessibility Projectと呼ばれるシステムで、車椅子を使用する乗客が下船したり、テンダーボートでの上陸が必要な寄港地観光に参加する際に支障が生じないようにするために開発された。8
 
 McCloskey氏によると、Holland Americaが2002年冬から導入を開始する最新の旅客船、Vista Classは、バリアフリーの見本といえるような船舶であるという。例えば、ms Zuiderdamには次のような特徴がある。
・各種の車椅子対応客室が合計28室ある。
・テンダーボートへの乗船に車椅子利用者専用のエレベーターを使用できる。
・車椅子に対応したプラットフォームを装備したテンダーボートが2隻用意されている。
・バーカウンターやその他の公用デッキなど、可能な場所はすべてバリアフリーになっている。
・すベての公室がバリアフリー仕様になっている。
 

7
Laurel Van Horn, Executive Director, Society for the Advancement of Travel for the Handicapped, 347Fifth Avenue, Suite 610, New York, NY 10016, Tel: 212-447-7284, Email: sathtravel@aol.com
8
この同社独自のシステムによって、車椅子を使用する乗客を車椅子に乗せたまま渡船橋を通りテンダーボートヘと安全かつ丁重に移すことができる。乗客の車椅子は、リフトに固定された状態で渡船橋の上部からテンダーボートへの傾斜トラックを移動する。テンダーボートには、車椅子でそのまま乗船して、特別設計のシザーリフトの上に固定できるように傾斜路が設けられている。乗客は、このリフトによってテンダーの窓から眺めを楽しむことができる。波止場では、テンダーボートに装備されている油圧式レベリングシステムによって、波止場とテンダーボートの高さの差を23インチまで調整できるので、車椅子のままテンダーボートから波止場に降りることができる。(車椅子による乗船・下船は付録3を参照のこと)







サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
1,406位
(31,373成果物中)

成果物アクセス数
6,467

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2019年7月13日

関連する他の成果物

1.Shipbuilding in Japan 2002
2.東南アジア造船関連レポート21
3.米国テロ事件後の海事セキュリティ対策の動向
4.中国造船業の概況<2001年>
5.米国のエネルギー政策が海事産業に与える影響に関する調査
6.米国における船舶のクリーン推進システム開発プロジェクトに関する調査
7.米国における造船関係研究開発助成制度の実施状況と成果活用等に関する調査
8.英国における統合的海洋管理政策に関する基礎調査
9.WTO加盟後の中国造船・舶用工業に関する調査
10.中東地域造船需要動向調査
11.タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査?実現に向けて?
12.船舶解撤の新たな進展と今後の展望
13.中国の造船・舶用工業政策に関する調査
14.海運・造船における電子商取引の現状と展望
15.中国造船業の概況(華北)
16.欧州における船舶からの排出ガス削減対策に関する動向調査
17.2002年度欧州造船政策動向調査
18.東南アジア造船関連レポート22
19.東南アジア・オセアニア地域における旅客船参入手法に関する調査
20.「海と船の企画展」各展開催ポスター/チラシ
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から