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3.5 埋立等による環境の悪化
 公有水面埋立法は、埋立免許の基準として、其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコトと、埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコトを要求している(4条)。考慮される環境問題としては、水面の陸地化に伴う自然破壊(野鳥、魚介類の棲息地、自然海浜等の地形・地質の変更及び潮流、水流、表砂糖水域現象の変化、埋立工事による海洋汚染による水質汚濁及び水産資源への影響等が挙げられる。また、十分な配慮とは、問題の現況及び影響を的確に把握した上で、これに対する措置が適正に講じられていることであり、その程度において十分であることを言うとされる12
 また、水質に関連する違背を許されない環境保全計画としては、環境基本法の公害防止計画、水質汚濁防止法の排水基準、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の都道府県産業廃棄物処理計画等があげられる。環境基本法による基本計画の海域に関する記述は、「自然海岸、干潟、藻場、浅海域の適正な保全を推進するとともに、自然浄化能力の回復に資するよう、必要に応じ、人工干潟、海浜等を適切に整備する」というもので、その具体性、即地性のなさが免許基準としての取り扱いを難しいものにしているとの指摘がある13
 今日の問題は公有水面の埋立の進行による藻場、干潟の減少が生態系の変化、自然環境の悪化を招いているという批判が高まっていることである。
 
3.6 養殖による汚染
 持続的養殖生産確保法は、農林水産大臣の基本方針、漁業協同組合等による漁場改善計画の策定と都道府県知事の認定、知事による漁業協同組合等に対する改善計画の作成その他の養殖漁場の改善に必要な措置勧告、公表等の手段を備えている。
i)基本方針
 農林水産大臣は、持続的な養殖生産の確保を図るための基本方針(「基本方針」)を定めなければならない。基本方針においては、(ア)養殖漁場の改善の目標に関する事項、(イ)養殖漁場の改善及び特定疾病のまん延の防止を図るための措置並びにこれに必要な施設の整備に関する事項、(ウ)養殖漁場の改善及び特定疾病のまん延の防止を図るための体制の整備に関する事項、(エ)その他養殖漁場の改善及び特定疾病のまん延の防止に関する重要事項を定める(3条)。
ii)漁場改善計画の認定
 漁業協同組合等は、基本方針に基づいて持続的な養殖生産の確保を図るため、単独又は共同で養殖漁場の改善に関する計画(漁場改善計画)を作成し、当該漁場改善計画が適当である旨の都道府県知事の認定を受けることができる。漁場改善計画においては、(ア)対象となる水域及び養殖水産動植物の種類、(イ)養殖漁場の改善の目標、(ウ)養殖漁場の改善を図るための措置及び実施時期、(エ)養殖漁場の改善を図るために必要な施設及び体制の整備、(オ)その他農林水産省令で定める事項を定める(4条)14
 
12 建設省河川局水政課監修、建設省埋立行政研究会編著『公有水面埋立実務ハンドブック』(ぎょうせい 平成7年)42頁
 
iii)勧告等具体の措置
 都道府県知事は、漁業協同組合等が基本方針に即した養殖漁場の利用を行わないため、養殖漁場の状態が著しく悪化していると認めるときは、当該漁業協同組合等に対し、漁場改善計画の作成その他の養殖漁場の改善のために必要な措置をとるべき旨の勧告をするものとする。都道府県知事は、勧告を受けた漁業協同組合等がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。都道府県知事は、勧告を受けた漁業協同組合等が、その勧告に従わなかった旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、漁業調整その他公益のために必要があると認めるときは、漁業権に制限や条件をつける措置を講ずることができる(7条)。
 
3.7 船舶起因の汚染
(1)海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
i)目的等
 この法律は、船舶、海洋施設及び航空機から海洋に油、有害液体物質等及び廃棄物を排出すること並びに船舶及び海洋施設において油、有害液体物質等及び廃棄物を焼却することを規制し、廃油の適正な処理を確保するとともに、排出された油、有害液体物質等、廃棄物その他の物の防除並びに海上火災の発生及び拡大の防止並びに海上火災等に伴う船舶交通の危険の防止のための措置を講ずることにより、海洋の汚染及び海上災害を防止し、あわせて海洋の汚染及び海上災害の防止に関する国際約束の適確な実施を確保し、もって海洋環境の保全並びに人の生命及び身体並びに財産の保護に資することを目的とする(1条)。
 すべての人に、油、有害液体物質等又は廃棄物の排出その他の行為により海洋を汚染しないようにつとめる努力義務が課されている。船舶の船長又は船舶所有者、海洋施設等又は海洋危険物管理施設の管理者又は設置者その他の関係者に対しては、「油、有害液体物質等若しくは危険物の排出があった場合又は海上火災が発生した場合において排出された油又は有害液体物質等の防除、消火、延焼の防止等の措置を講ずることができるように常時備えるとともに、これらの事態が発生した場合には、当該措置を適確に実施することにより、海洋の汚染及び海上災害の防止に努めなければならない」という義務が課されている(2条)。
 
14 基本方針においては、漁場改善計画による環境基準が定められている。具体的には、水質の指標については、溶存酸素量について、改善の目標とする基準として4.0ml/l(5.7mg/l)を上回っていること。緊急に改善を要する基準として、2.5ml/l(3.6mg/l)を下回っていること、底質の指標について硫加物質、改善の目標とする基準として、酸素消費速度が最大となる硫化物質を下回っていること、緊急に改善を要する基準として、2.5mg/g乾泥を上回っていること、指標の底生生物について、改善の目標とする基準として、多毛類(ゴカイ類)などの目視で確認可能な底生生物が生息していること、緊急に改善を要する基準として、半年以上目視で確認可能な底生生物が生息していないこと、飼育生物の指標として条件性病原体(連鎖球菌症又は白点病によるへい死率が通常であれば発生しない低水温期(12月〜翌3月)でも毎年のように発生、と記述されている。
 
ii)船舶からの油の排出等の規制
 何人も、(ア)船舶の安全を確保し、又は人命を救助するための油の排出、(イ)船舶の損傷その他やむを得ない原因により油が排出された場合において引き続く油の排出を防止するための可能な一切の措置をとったときの当該油の排出を除いて、海域において、船舶から油を排出することを禁じられる(4条)。ただし、そこで言う油からは、船舶からのビルジその他の油(タンカーの水バラスト、貨物艙の洗浄水及びビルジであって貨物油を含むものを除く)の排出であって、排出される油中の油分の濃度、排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準に適合するものについては、除かれる。また、タンカーからの貨物油を含む水バラスト等の排出であって、油分の総量、油分の瞬間排出率(ある時点におけるリットル毎時による油分の排出速度を当該時点におけるノットによる船舶の速力で除したものをいう。)、排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準に適合するものについても除かれる。
 船舶所有者は、船舶に、ビルジ等排出防止設備(船舶内に存する油の船底への流入の防止又はビルジ等の船舶内における貯蔵若しくは処理のための設備)を設置しなければならない。タンカーには、水バラスト等排出防止設備(貨物油を含む水バラスト等の船舶内における貯蔵又は処理のための設備)を設置しなければならない。ビルジ等排出防止設備、水バラスト等排出防止設備、分離バラストタンク及び貨物艙原油洗浄設備の設置に関する技術上の基準は、国土交通省令で定める(5条)。
 タンカーの貨物艙及び分離バラストタンクは、衝突、乗揚げその他の事由により船舶に損傷が発生した場合において大量の油が排出されることを防止するため、国土交通省令で定める技術上の基準に適合するように設置しなければならない(5条の2)。
 国土交通省令で定める総トン数未満の船舶を除いて、船舶の船首隔壁より前方にあるタンクには、油を積載することは禁じられる(5条の3)。
 船舶所有者は、国土交通省令で定める船舶ごとに、当該船舶に乗り組む船舶職員のうちから、船長を補佐して船舶からの油の不適正な排出の防止に関する業務の管理を行なわせるため、油濁防止管理者を選任しなければならない(6条)。
 船舶所有者は、国土交通省令で定める船舶ごとに、国土交通省令で定めるところにより、油の不適正な排出の防止に関する業務の管理に関する事項及び油の取扱いに関する作業を行う者が遵守すべき事項その他油の不適正な排出の防止に関する事項について、油濁防止規程を定め、これを当該船舶内に備え置き、又は掲示しておかなければならない。
iii)有害液体物質等の排出
 同様の規制は有害液体物質等の排出に関してもかけられている(9条の2〜9条の17)。有害液体物資には、有害液体物質と、未査定液体物質が含まれる。
 有害液体物質は、油以外の液体物質(液化石油ガスその他の常温において液体でない物質であって政令で定めるものを除く。)のうち、海洋環境の保全の見地から有害である物質(その混合物を含む。)として政令で定める物質であって船舶によりばら積みの液体貨物として輸送されるもの及びこれを含む水バラスト、貨物艙の洗浄水その他船舶内において生じた不要な液体物質(海洋において投入処分をし、又は処分のため燃焼させる目的で船舶に積載される液体物質その他の環境省令で定める液体物質を除く。)として定義される。
 未査定液体物質は、油及び有害液体物質以外の液体物質のうち、海洋環境の保全の見地から有害でない物質(その混合物を含む。)として政令で定める物質以外の物質であって船舶によりばら積みの液体貨物として輸送されるもの及びこれを含む水バラスト、貨物艙の洗浄水その他船舶内において生じた不要な液体物質(海洋において投入処分をし、又は処分のため燃焼させる目的で船舶に積載される液体物質その他の環境省令で定める液体物質を除く。)として定義される(3条)。
iv)廃棄物の排出の禁止
 何人も、(ア)船舶の安全を確保し、又は人命を救助するための廃棄物の排出、(イ)船舶の損傷その他やむを得ない原因により廃棄物が排出された場合において引き続く廃棄物の排出を防止するための可能な一切の措置をとったときの当該廃棄物の排出を除いて、海域において、船舶から廃棄物を排出することを禁じられている(10条)。ただし、以下の廃棄物は規制対象から除かれている。
(ア)当該船舶内にある船員その他の者の日常生活に伴い生ずるふん尿若しくは汚水又はこれらに類する廃棄物(「ふん尿等」)の排出(総トン数又は搭載人員の規模が政令で定める総トン数又は搭載人員以上の船舶からの政令で定めるふん尿等の排出にあっては、排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準に従ってする排出に限る。)
(イ)当該船舶内にある船員その他の者の日常生活に伴い生ずるごみ又はこれに類する廃棄物(政令で定める廃棄物を除く)の排出であって、排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準に従ってするもの
(ウ)公有水面埋立法の免許若しくは承認を受けて埋立をする場所又は廃棄物の処理場所として設けられる場所に政令で定める排出方法に関する基準に従ってする排出
(エ)廃棄物の処理及び清掃に関する法律において海洋を投入処分の場所とすることができるものと定めた廃棄物、南極地域の環境の保護に関する法律において処分することがやむを得ない廃棄物の排出であって、排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準に従ってするもの
(オ)廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(「海洋投棄規制条約」)の締約国たる外国(「締約国」)において積み込まれた廃棄物の当該締約国の法令に従ってする排出(政令で定める本邦の周辺の海域(「本邦周辺海域」)においてするものを除く。)
(カ)外国の内水又は領海における埋立のための廃棄物の排出
 船舶所有者は、国土交通省令で定める船舶ごとに、国土交通省令で定めるところにより、船舶発生廃棄物の取扱いに関する作業を行う者が遵守すべき事項その他船舶発生廃棄物の不適正な排出の防止に関する事項について、船舶発生廃棄物汚染防止規程を定め、これを当該船舶内に備え置き、又は掲示しておかなければならない。
 船舶所有者は、政令で定める総トン数又は搭載人員以上の船舶(一国の港と他の国の港との間の航海(「国際航海」)に従事させるものに限る。)に、ふん尿等排出防止設備(船舶内で生ずるふん尿等の船舶内における貯蔵又は処理のための設備をいう。)を設置しなければならない。
v)海洋施設及び航空機からの油及び廃棄物の排出の規制
 何人も、(ア)海洋施設若しくは航空機の安全を確保し、又は人命を救助するための油又は廃棄物の排出、(イ)海洋施設又は航空機の損傷その他やむを得ない原因により油又は廃棄物が排出された場合において引き続く油又は廃棄物の排出を防止するための可能な一切の措置をとったときの当該油又は廃棄物の排出を除いて、海域において、海洋施設又は航空機から油又は廃棄物を排出することを禁じられる。ただし、次のものは除かれる。
(ア)当該海洋施設内にある者の日常生活に伴い生ずるふん尿等の排出(政令で定める人数以上の人を収容することができる海洋施設からのふん尿等の排出にあっては、排出方法に関し政令で定める基準に従ってする排出に限る。)
(イ)当該海洋施設内にある者の日常生活に伴い生ずるごみ又はこれに類する廃棄物の排出であって、排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準に従ってするもの
(ウ)油又は廃棄物の政令で定める排出方法に関する基準に従ってする排出
航空機について、
(エ)当該航空機内にある者の日常生活に伴い生ずる汚水その他海域において排出することがやむを得ない油又は廃棄物であって政令で定めるものの排出
(オ)締約国において積み込まれた廃棄物の当該締約国の法令に従ってする排出(本邦周辺海域においてするものを除く。(18条)
 海洋施設を設置しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、当該海洋施設を設置する者の氏名又は名称、当該海洋施設の位置及び概要等を海上保安庁長官に届け出なければならない(18条の2)。
 何人も、船舶又は海洋施設において、その焼却が海洋環境の保全に著しい障害を及ぼすおそれがあるものとして政令で定める油、有害液体物質等又は廃棄物の焼却を禁じられる。船舶又は海洋施設において、政令で定める油等以外の油等の焼却をしようとする者は、政令で定める焼却海域及び焼却方法に関する基準に従い、当該油等の焼却をしなければならない。油等の焼却をする場合において、その油等がその焼却につき海洋環境の保全の見地から特に注意を払う必要があるものとして政令で定める油等であるときは、当該油等の焼却をしようとする者は、当該油等の船舶又は海洋施設への積込み前(当該油等が当該船舶又は海洋施設内において生じたものであるときは、その焼却前)に、その焼却に関する計画が同項の基準に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して、海上保安庁長官の確認を受けなければならない(19条の2の3)。







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