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4.4 多様化の現状と目標とされる市場分野
 クロアチア独立以降、クロアチア造船業の建造船種の多様化は、今後の進展に負うところが大きいが、これまでのところでも幾分かは進んできている。前章で述べたように、Uljanik造船所では、標準的なばら積船よりもやや高度な冷凍船、自動車運搬船、プロダクトタンカー、ケミカルタンカーなどを建造しており、多様化が進んでいる。同造船所は、プロダクトタンカー、ケミカルタンカーの建造を維持したいとしているが、国際市場を中心とした自動車運搬船、ro-ro船、ro-pax、高速フェリー等の分野でも事業を広げたいとしている。注49 1999年11月に同社の広報担当は、家畜運搬船やアスファルトタンカーなどもオーダーメードベースで建造する船種として考えられるとしている。しかしながら、これら2船種は明らかに非常に小さいニッチマーケットであり、多くの発注が期待できる分野ではない。
 
 この他の造船所も新造船事業を積極的に展開しているが、現在の事業をどういう方向に多様化していくかはまだはっきりしない。Brodosplitは、基本的には、1990年代から建造している各船種の建造を続けていく計画であるとしている。3 Maj、Brodogradiliste Kraljevica及びBrodotrogirは今後の多様化の方向を明らかにしていない。注50 なお、Kraljevicaについては、双胴高速船や重量物運搬船などを手がけていくとの情報もある。
 
 Viktor Lenac造船所では、今後、全長140mまでのオフショア分野を中心とした高付加価値な特殊船への特化を目標に、商船建造を開始することとなっている。注51 同社は、国際市場で、半没水式又はジャッキアップリグやケーブル敷設船、ROV支援船や地質探査船などの特殊船の建造契約を獲得したいとしている。この他に予想される建造船種としては、搭載人員150人までの旅客船、大型ヨット、オフショア支援船、高性能タグなどがある。
 
 現在クロアチアで進められている造船所の再開発計画全てを考慮しても、クロアチアの建造能力は計画終了時でも世界の建造能力のわずかな部分にとどまるであろう。しかしながら、建造船種の多様化が達成できれば、金額ベースでのクロアチア造船業の建造量を大きく伸ばすことが可能であろう。また、特殊船への特化は、個々の市場分野でクロアチア造船業はメインプレーヤーとすることになるであろう。








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