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4.3 今後の市場動向と多様化の動き
 前章で述べたように、Uljanik造船所を除き、今日までのところ、クロアチアにおける特殊船の建造は非常に限られている。しかしながら、今後のクロアチア造船業の成功の鍵は、ニッチマーケットへの進出にかかっている。その理由は以下のとおりである。
 
◆ Kraljevica造船所及びBrodosplitの艦艇部門では、艦艇の発注の著しい復活は見込めない。従って、両造船所は、造船事業を維持するならば、多様化を図る必要がある。これができないとすれば、造船事業者としての生き残りは極めて疑問であり、他の工業分野への依存を強めることとなるであろう。
 
◆ 近代化の完了により、いくつかの造船所では建造能力の増大が予測されるが、各企業単独で、1994年のNovoshipの10隻の建造契約のような大型の連続建造発注を取り扱うことは困難であると思われる。各社の建造設備の年間建造隻数には、なおかなりの限界が存在するであろう。これが、在来型のばら積船よりは小型で高付加価値の船種の建造を志向する理由ともなっている。また、こうしたことが、民営化後も造船所間の協力が継続する理由となっており、ある商談への複数造船所連合しての応札の指向やViktor LenacによるBrodogradiliste Kraljevica買収など造船企業統合促進をもたらす可能性がある。
 
◆ 高付加価値船の指向により、クロアチア造船業は、極東の一部やブルガリアやルーマニアなどの東欧の低コスト造船所との競争から幾分か開放されるであろう。
 
◆ クロアチア経済の改革の進行に伴い予想される人件費上昇で、標準的な在来船の少ない利益幅は更に小さいものとなると考えられる。こうした生産コストの増大は、特殊船で得られるより大きな利益で容易に吸収可能であろう。
 
 いくつかの西欧の造船所の経営難は、クロアチアや他の国の造船所に高付加価値船分野での地位確立の機会を提供することになりうる。EU域内の造船能力の合理化及び英国のクヴァナグループ傘下にあったゴバン造船所などに見られる商船建造事業からの撤退は、なお続いている。これにより、クロアチアがかなり特化しているパナマックスよりやや小さめのプロダクトタンカーやケミカルタンカーの欧州における建造施設の数は減少している。注48








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