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4.2 再開発促進策と新規投資計画
 国有造船所の場合はクロアチア政府の資金援助を受けて、また、Viktor Lenacの場合は海外投資家の資金援助を受けて、各造船所において、一連の新規投資が進められている。1997年11月にクロアチアは、国有造船所への新技術導入のため約7千万$の政府資金を投入する旨発表しており、また、金融機関からなる国際コンソーシアムは2000年6月に、設備更新のための資金として3千万$をViktor Lenacに投資している。
 
 Viktor Lenac造船所では、2段階の開発計画が既に進められている。この計画の資金は58百万$で、このうちの約2千万$が既に支出済みとされている。注45 この再開発計画には、クレーン及び切断・溶接装置の新設、ブラスト・塗装建屋の建設が含まれている。また、大型海洋構造物用の建造施設の建設も付け加えられている。注46 開発計画の第二段階では、2001年の竣工を目途とした180mの内業工場の建設も計画されている。これらの新設備で経営陣が建造を目指している船種については、第5章で述べる。(同社は、この第二段階の再開発計画に2千万$追加投資が必要としており、2002年までにこれを実施するとしている。)こうした投資により、400人の新規雇用が生まれるとされている。
 
 同社の進行中の開発計画の別の一面として、同社はKraljevica造船所の取得に関心を有しているとされている。この点に関し、2000年9月にRijeka地方にあるViktor Lenac、Brodogradiliste Kraljevica及び3 Majが協力協定を締結したことが重要と見られる。この協定で、この3造船所は、営業、生産、訓練、資金調達、資材購入等造船所の運営の様々な局面で協力することになろう。協定締結時には、この協定が3社の完全合併のきっかけになるかもしれないと言われていた。Viktor Lenacは、自社造船所の再開発でMartinscica湾における新造船事業を開始することなるが、事業拡張の一部として、生産能力(及び専門分野)の拡大のため、クロアチアの他造船所の取得に関心があることを既に表明している。Viktor Lenacは、Brodogradiliste Kraljevicaの民営化の際にクロアチア政府が最有力とする買い手となっている。Kraljevica 造船所は、クロアチアで最初に民営化される国有造船所となると見られる。
 
 一方、年間に約6隻のハンディマックス(合計9万GT)を建造可能なBrodosplitでも、再開発・近代化が進められている。これにより、同造船所の建造能力は年間に10隻(合計18万GT)に増大すると予想されている。同社の鋼板切断能力は年間4万トンから10万トンに増大し、同社の売上も年間1.5億$から3億$に増大するだろうとされている。
 
 2001年から始まるBrodosplitの第1次新規投資計画では、コンピュータ制御鋼板切断ラインの設置及び塗装建屋の新設が行われることになる(総額16百万$とされている。)。この後の5千万$規模の第2次計画では、既存船台の内の1基の拡張(3章で既述)、パイプ艤装工場の新設、既存クレーン・運搬施設・艤装施設の改良が予定されている。
 
 Uljanik造船所では、既に近代化措置が進んでいる。1999年にはプラズマ切断装置が設置され、現在は、溶接、サンドブラスト、塗装などの船殻建造工程についての改善が進められている。これらは、建造期間短縮のための取り組みの一部となっている。注47 これ以外にも、改善のための広範な、短期的、中期的な取り組みが行われている。
 
 3 Majにおいても、1999年に13百万$の投資計画が開始され、類似の取り組みがなされている。この計画には、防食・塗装建屋の建設、運搬施設及クレーンの購入、プラズマ切断装置の設置などが含まれているとされている。同計画は2001年半ばに修了予定とされている。
 
 Brodotrogirでも、2000年にクレーン、切断、溶接等の設備を購入し、工作能力の向上を図ったとされている。これにより、同造船所の新造船、修繕・改造部門の効率向上が図られたと考えられる。なお、同造船所では、改造能力の拡大を検討しているとされている。








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