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4.1 クロアチア造船業をとりまく現在の環境
 造船所の近代化によりクロアチア造船業の状況は今後改善が見込まれるが、これ以外にも、以下のような課題を抱えている。
 
◆ 生産工程の最適化及び新規事業発掘の双方において、投資戦略を建てて、造船所運営の効率化を図る必要がある。この場合、経営者の質がきわめて重要となる。注44 
 
◆ 生産コストの厳格な管理が必要であり、これができなければクロアチア造船業への発注の重要な利点の一つである価格競争力は損なわれることとなるだろう。生活水準の向上やクロアチア経済のリストラの進行に際しての労働者の賃上げ要求により、幾分かの人件費の上昇は、避け得ない。しかしながら、ブルガリアやルーマニアなど旧東欧圏の低コスト造船所が近くにあるため、クロアチアのコスト上昇があまりにも早く進めば、比較的付加価値の低い在来船の商談をこうした国の造船所に奪われることになろう。
 
◆ また、舶用機器製造や艤装の外注化を推進する必要がある。各企業はこうした作業を行う専門職員を維持するよりは、「組み立て造船所」の概念を採用すべきである。過去、クロアチア造船業は、多様な舶用機器を専門に製造する舶用機器メーカーからの機器購入に熱心ではなかった。これを進めることで、かなりのコスト削減と労働者の削減が可能となるであろう。(ただし、労働者の削減の太宗は、管理部門の過剰人員の削減にかかっている。)
 
 現在クロアチアの各造船所は、それぞれ異なった再開発の段階にあるが、こうした課題への対応において、他に先んじている造船所も出てきている。企業秘密もあるため、限られた情報をもとにせざるをえないが、国際市場への順応の面では、Uljanikが最も先行しているように見受けられる。同社は、在来型のばら積船より高付加価値のある高度な船種の建造で既に名声を確立している。本章の後段で述べるが、他の国営造船所は、こうした市場分野への参入にはブレークスルーが必要である。このためには、現在進行中の新規投資を強化するととともに、クロアチア造船業が苦しんでいる問題が克服されつつあるとの信頼を増すことが必要である。4.2で述べるように、比較的短期間のうちに各造船所の設備が更新され、近代的な生産技術が導入されるであろう。








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