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3.6 Viktor Lenac Shipyard
 Viktor Lenac造船所は、Rijekaから3Km離れたMartinscica湾に1896年に設立された。同社はその子会社であるRijekaにあるViktor Shiprepair及びSplitのVranjic Shipyardと一体となって、アドリア海沿岸で最大の修繕事業者である。地中海沿いの他の修繕造船所だけでなく、北欧の修繕事業者とも厳しい競争にさらされ、経営陣は競合会社を下回る価格で高い作業水準を確保するのに一生懸命になってきた。注40 Rijekaにある中心造船所では、常時900人の労働者を雇用しているほか、業務のピーク時に対応するため、600〜1,500人の下請け労働者を擁している。Vranjic造船所では、従業員50名、下請け工120人で、小型船の修繕を行っている。
 
 Viktor Lenac造船所の従業員数は1997年初めには350人であったが、2000年の第二四半期には900人に増加しており、この数字が同造船所の1990年代末の成功を示している。この成功の主要因は、修繕・改造・海洋関連事業の成長と、従業員の下請化への転換の二つである。成功の鍵は、自由市場経済の原則に則った経営を取り入れた経営陣の商業的洞察力にある。海外投資家による造船所の取得や、少ない累積債務とあいまって、このダイナミズムが、1990年代の新規投資や、従来の修繕業以外の事業への展開をもたらした。1980年代には、同造船所では、船舶改造も手がけていたが、内戦により事業は中断していた。改造は船舶を造船所に長い間置いておく必要があるため、戦闘地域近くに船舶を長い間係船しておこうとする船主はわずかであった。しかしながら、Viktor Lenac造船所は、1990年代末に改造市場に再参入した。注41
 
 1996〜1998年の間で、同社の売上は、27百万$から51.4百万$に増大し、総利益も9.6百万$から18.6百万$に倍増した。注42 売上の中で、船舶修繕と改造が大きな伸びを示している。注43 例えば、売上に占める改造の割合は1996年の3.7%から1998年には42.8%に増大している。海洋関係事業については、1996年はゼロであったものが、1998年には総売上の10.2%を占めるに至っている。同社の現在の事業計画では、2005年までに売上高を150百万ドルに倍増することとしている。この伸びの多くが2001年における新造船事業への参入を前提としたものと考えられる。同社が目標にしている建造船種については、第4部で述べる。
海洋関連事業
 Viktor Lenac造船所では、Ivana地区の海洋プラットフォーム3基を建造しているほか、Ivana B設備の生産モジュールも製造している。1998年末には、Single Buoy Mooring Inc.からFPSO用の係留ブイ及びアンカー18基を製造している。
船舶改造事業
 同社の改造事業は、“Lochnagar” PLSV 1000の支援船からパイプ敷設船への改造(1998年)、“Kommandor 3000”のROV支援船からパイプ敷設船への改造(1999年)など複雑で名声の高いプロジェクトをいくつか手がけて、最近大きな伸びを見せている。2000年には、ro-ro船の“Oceanic Pearl”及び“Oceanic Princess”の光ファイバーケーブル敷設船への改造を行い、2001年には“Kraka”を同様に改造している。
造船設備
 Martinscica湾の造船所では、1,200メートルの岸壁を有し、16万DWTまでの船舶の浮上中修理を行っている。また、同造船所では、2基の浮きドックを用いた修繕も行っている。これに加えて、16万DWTまでの修繕が可能な7万トンの浮揚能力を持つ第三の浮ドックを米海軍から購入しており、在来船だけでなく海洋構造物の改造修繕にも用いられる予定である。








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