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3.1 Brodosplit
 国有のBrodosplit d.d.は合資の持ち株会社で、造船所のほかに他の8社を傘下に収めている。もちろん、この8社の中で特筆すべきものは、Brodosplitディーゼルエンジン工場と「Brodosplit Naval and Special Vessel Shipyard Ltd.」である。BrodosplitはSplitに存在していた数造船所を統合して1922年に設立され、1932年には造船部門が現在の所在地に移転されている。
 
 第二次世界大戦が終了し、ユーゴスラビアが建国された後、Split造船所は国有化され、「Brodogradilidte Vicko Krstulovic」と名づけられた。Brodosplitの名称となったのは、1954年のことである。1970年代までは、一般貨物船、バルクキャリア、原油タンカー、プロダクトタンカーなどの船舶を建造していた。1980年代にはこれらに加えて、ケミカルタンカー、ro-ro船、冷凍船など建造船種が多様化した。
 
 Brodosplitは、クロアチアの造船所の中で内戦中セビリアの砲撃の対象となった唯一の造船所で、ディーゼルエンジン工場にいくぶんかの被害を受けた。内戦でボスニア・ヘルツェゴビナの企業からの機器の供給が途絶え、従軍による労働者減で生じた問題に拍車をかけ、納期の大幅な遅れをもたらすこととなった。1993年には、納期の遅れは約6ヶ月となった。
 
 造船所の竣工量が大幅に落ち込んだ内戦以降、受注量は幾分回復し、最近では年間4、5隻を建造するようになっている。1990年〜2000年の間、Brodosplitでは、ハンディサイズ・ハンディマックスの原油・プロダクト・ケミカルタンカー及びバルクキャリアを中心に建造しており、現在の手持ち工事量を見ても、国内船主向けの小型ro-ro船や冷凍船・コンテナ船が見られるものの、これらの船種がそのほとんどを占めている。発注船主は、米大陸、アジアもあるが、大部分が欧州船主となっている。
 
 近年の主要な受注案件を見ると、Sea-Link向けの高仕様ro-paxフェリー2隻の建造があげられる。この内の1隻の「Frans Suell」は、Malmo-Lubeckのバルティック海横断航路に就航している。この他には、ギリシャのElka Shippingから1999年に受注した3隻の45,000DWTのIMOタイプIIIの高仕様プロダクト・ケミカルタンカーがあげられる。この3隻の一括受注価格は約80百万$と見られる。これらはフェノール・エポキシ塗装の18のタンク、ステンレス鋼の配管を有しており、8種類の貨物を同時積載できるようになっている。この内の1隻は2000年初めに引き渡されている。この案件は、極東の造船所と競合して受注に成功したとされている。
 
 これらの他に、Brodosplitでは、1994年にNovoshipがクロアチアに発注した10隻の39,600DWT型のプロダクトタンカーの内の2隻を建造している。また、イランとクロアチアの間の石油・船舶バーター取引でIRISLから1995年に発注された4隻の多目的二層甲板船の内の2隻を建造している。1999年には、ギリシャ船主のGoumasからハンディマックスバルクキャリア2隻+オプション2隻(一括受注価格80百万$とされる)を受注している。
 
 最近では、2000年11月にクロアチア船主のTankerska Plovidvaから166,300DWTの原油タンカー2隻を受注している。この受注は、6年ぶりのスエズマックスタンカーの受注であり、Brodosplitで受注した最大の船舶となった。この受注は、他の欧州造船所がスエズマックスタンカーを受注できない中でなされたことも特筆される。世界の手持ち工事を見ると、この船型では、他に米国造船所で米国籍船7隻があるほかは、全て韓国及び日本となっている。
 
 また、Brodosplitでは、最近European Navigationから95,000DWTのプロダクトタンカーを、極東の造船所との厳しい競争の中で、2隻+オプション2隻で受注した。この船主は、同造船所に6隻の45,000DWTケミカル・プロダクトタンカーの発注実績がある。2001年3月には、ロシアのPrimorsk Shippingから108,000DWTのアフラマックスプロダクトタンカーを2隻+オプション1隻で受注しており、同造船所の手持ち工事は2004年まで埋まっている。
 
新造船設備
 Brodosplitは4基の船台を有しており(詳細は添付資料C参照)、第1船台は17万DWTまでの船舶が建造可能となっている。注32 他の3基の船台中、1基は12万DWTまでの船舶の建造が可能で、他の2基は3万DWTまでとなっているが、現在のところこの内の1基のみが使用されている。休止中の第4船台については、再稼動が計画されており、融資が得られることが前提条件ではあるが、45,000DWTへの能力拡大を意図している。注33
Brodosplit Naval & Special Vessel Shipyard Ltd
 Brodosplitの艦艇造船所で、非商船の建造及び修繕を行っている。クロアチア海軍や外国向けに、小型駆逐艦、警備艇、輸送支援船、上陸用舟艇、機雷敷設艦等の水上艦に加え、魚雷潜水艦、小型潜水艦、潜水機器等の潜水艇の建造を行っている。また、同造船所では、海洋機器や土木関係製品の製造も行っている。1990年代艦艇の発注が少なかったことから、これらの他分野の事業が重要性を増した。
 非艦艇部門では、8千DWTまでの商船(液化ガス運搬船、タンカー、バルクキャリア、コンテナ船)、高速フェリー、漁船、調査船、タグ、支援船の建造が可能である。








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