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第2章 調査研究委員会
 
2.1 平成12年度
 
2.1.1 第1回委員会議事概要
 
(1) 開催日時及び場所
 
 日 時:平成12年7月4日(火)14:00〜16:35
 場 所:日本海難防止協会会議室
 
(2) 議 題
 
[1] 非GMDSS船の遭難時における連絡手段の現状等
ア 小型漁船
イ プレジャーボート
ウ イパーブ等の機器
エ 非GMDSS船の海難事例 
オ イパーブ以外の機器
[2] 遭難時緊急時の連絡手段、イパーブ又はそれに代わる機器の自主的な搭載に関する意識等についての実態調査
[3] 小型船舶に搭載すべき機器として既存の機器の利用及び新たな機器の開発の検討
[4] その他
 
(3) 出席者
 
[1] 委 員
庄司 和民
荒井 郁男、高橋 勝、中村 勝英、高野 武王、原 美都雄、片山 泰夫、蛭子 徹也、西沢 徹、宮原 邦之、高橋 幹治、山崎 保昭、古屋 博司、喜多 一記
[2] 関係官庁
矢萩 強志(代理:田口 昭門)、木澤 隆史(代理:小玉 真一)、伊藤 茂(代理:池田 隆之)、池田 佳史、板垣 正志、磯谷 兵衛、渡部 典正、冨賀見 栄一、中村 公亮、津端 英樹
[3] その他
西分 竜二、松瀬 博文
[4] 事務局
田島 邦雄、菅野 瑞夫、池嵜 哲朗
 
(4) 資 料
 
[1] GM(00)1-1 平成12年度調査研究委員会及び作業部会名簿
[2] GM(00)1-2 平成12年度調査研究事業計画
[3] GM(00)1-3 GMDSS体制下における漁業無線による遭難通信の概要
[4] GM(00)1-4 プレジャーボート愛好者の使用無線設備
[5] GM(00)1-5 GMDSS機器の搭載を義務付けられていない小型船舶の海難事例等
 
(5) 議事概要(◎:委員長  ○:委員  △:関係官庁  □:事務局)
 
[1] 第1回委員会の開催に当たり、日本海難防止協会田島常務理事が挨拶を行った。
[2] 第1回委員会の開催に当たり、海上保安庁警備救難部冨賀見救難課長が挨拶を行った。
[3] 事務局が各委員及び関係官庁出席者の紹介を行った。また、事務局が資料GM(00)1-1の委員会名簿及び作業部会名簿について説明し、作業部会においても漁船の意見を反映させる必要から、作業部会のメンバーとして全国漁業協同組合連合会の宮原委員を追加することを提案、これが承認された。
[4] 東京商船大学名誉教授の庄司委員が、本年度の委員長に選出され、以後委員長により議事が進められた。
[5] 平成12年度調査研究事業計画について、事務局が資料GM(00)1-2により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。
 
△ 本調査研究事業においては、何か新たな機器を開発するというところまで含むのか否か。
□ 本委員会では、これまでと異なる新たな発想で小型船の連絡手段の確保という問題を皆様にご検討いただき、その結果、具体的にそういった機器の開発に結びつくものが出てくれば、その有効機器を開発するということも視野に入れている。
△ 実際に新たな機器を開発し、それによりモデル事業を行うとなると、かなりの費用が掛かるものと思う。それを考えると、本委員会においては新たな機器の開発につながる提言に止める、また既存の機器の改良を主として考えるという方法もあるのではないか。
□ モデル事業は、基本的には既存の機器に必要な改良を加えたもので実施することを考えている。ご指摘のとおり、新たな機器の開発には、かなりの費用が必要であることから、場合によっては提言に止める、或いは可能な範囲内でできるだけのことを実施するということも考えられる。
○ 小型船で実際にどのような通信機器が使用されているか、またそれらの通信機器の性能等がどうかといったことを基礎データとして収集整理しておく必要がある。
□ 小型船に対するアンケート調査の内容を、今後事務局と海上保安庁とで検討していくこととしているので、各委員の方々からアンケート調査の内容についてご意見があれば、反映させていきたい。
◎ 現在、小型船用の機器としては、小型船用イパーブ、小型船用サートといったものがあるが、そういったものを含めて何か有効、的確また迅速に遭難の事実を通報できるようなものがないかということを、色々な問題を踏まえながら、検討していきたいと考えている。従って、法制化につながる或いはつながらない、現行法上の制約といったことにあまり捕らわれずに、自由に議論し、方策を検討していくこととし、皆様のご意見をお願いしたい。
○ 小型漁船の場合は、一人乗り操業が多いのが現状であり、一人乗り漁船の通信手段についても是非ご検討いただきたい。
□ 一人乗り漁船の海難は元より、一人乗り漁船での海中転落事故も含めて検討していきたいと考えている。
○ 船舶を使わない海洋レジャー、例えばダイビングでも毎年多くの事故が発生している。海中転落に対応した有効な機器ができるのであれば、それをダイビングにも応用できると考えるので、期待したい。
□ ダイビングまでは対象としていなかったが、海中転落事故への方策で応用できれば幸いである。
◎ 個人個人が装備するような通信機器が、将来的に充実すれば、海中転落事故にも、お話のあったダイビング事故等にも対応できる訳であり、現在の科学技術を以ってすれば、遠からず実現するものと思うが、この委員会の2年間では難しいのではないか。
○ 過去に水産庁等の委員会において、海中転落事故に対応する機器の検討が行われ、そういった機器も考えられているが、その普及を図るとなると、製品の価格の問題等があってなかなか難しいというところであった。今回の委員会ではそういった問題も含めて検討できればと考えている。
 
[6] 議題1「非GMDSS船の遭難時における連絡手段の現状等」
 
ア・イ 小型漁船及びプレジャーボート
 
 「GMDSS体制下における漁業無線による遭難通信の概要」について、全国漁業無線協会の山崎委員が資料GM(00)1-3により、「プレジャーボート愛好者の使用無線設備」について、海上保安庁警備救難部救難課が資料GM(00)1-4により、それぞれ説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。
 
○ 最近では、小型船舶にも携帯電話が普及しているようであるが、携帯電話を利用した捜索の方法について、現状はどうか。
△ 例えば、行方不明の船舶について、乗組員が携帯電話を所持してれば、携帯電話会社に照会することにより、どの中継局のエリア内にいるかを知ることができるので、その中継局を中心として約10海里程度の捜索海域を設定し、捜索するという方法を採っている。
○ それは、携帯電話の電源が入っていなくても判別できるか。
△ 電源が入っていなければ判別できない。電源が入っていなければ、最後に使用した中継局までの記録が残っている。
□ 小型漁船に現在携帯電話がどの程度普及しているかという正確なデータは、ないと思うが、ある漁協で聞いてみたところ、現在約半数程度であり、なお増加傾向にあるという回答があった。
 
ウ イパーブ等の機器
 
 「イパーブ等の機器」について、水洋会の中村委員が小型船におけるその現状を説明(小型船用イパーブのリーフレット配布)し、これに対して、次の質疑応答、意見等があった。
 
◎ 小型船用イパーブの価格、普及状況等はどうか。
○ 価格は通常のイパーブの半分程度に設定されている。小型船用イパーブの搭載対象船舶は、300隻程度であり、販売台数も大体その程度である。
◎ 通常のイパーブと小型船用イパーブとの違いとしては、電池の時間が短いことと、自動離脱装置が付いていないことか。
○ そのとおり。スペックとしては、国際基準があるので、それを充たさなければならないのが現状である。
○ 最近では、イパーブにGPSを組み込み、位置精度を向上させたものがあると聞くが。
○ そのとおり。既に外国のメーカーにおいては製品化されている。
◎ イパーブの位置精度を向上させても、イパーブと遭難船の船体が常に同じ場所にある訳ではないということが、別の問題としてある。
 
エ 非GMDSS船の海難事例
 
 「非GMDSS機器の搭載を義務付けられていない小型船舶の海難事例等」について、海上保安庁警備救難部救難課が資料GM(00)1-5により説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。
 
○ イパーブが発射されなかった海難と発射された海難の「到着時間」を比べると、発射された海難の方に時間が長いものが多いが、これは何故か。
△ 「到着時間」は、海上保安庁が海難の発生を認知してから救助勢力が現場に到着するまでに要した時間である。イパーブを使用した船舶つまりイパーブを搭載する船舶は、一般的に遠くの海域まで出て行く船舶であり、イパーブを搭載しない船舶は主に沿岸域を航行する船舶である。従って、イパーブを使用した海難事例で、到着時間が長くなっているのは、遠くまで行くのに時間を要しているということである。「発見時間」は、海難の発生を認知してから海難船舶を発見するまでに要した時間であるが、これを見ると、イパーブを発射しない海難は、沿岸域での発生であるにも関わらず、多くの時間を要していることが分かる。
 
オ イパーブ以外の機器
 
 MCA(Multi-Channel Access)無線について、移動無線センターの西沢委員が、投下式レーダートランスポンダー(サート)について、日本船舶品質管理協会の蛭子委員が、またGPS組み込み型携帯電話について、ワムネットサービスの古屋委員がそれぞれ概要を説明し、これに対して次の質疑応答、意見等があった。
 
(投下式レーダートランスポンダーについて)
 
○ 価格はどの程度であるか。
○ 具体的には未だ設定していないが、10万円以下を目指している。こういった機器の場合、ある程度まとまった数を作ることになれば、1台当たりの単価は安くなる訳であり、どの位普及させられるかが問題である。
○ 14〜15年前に、試験的に200台ほどを漁船に搭載させてみたことがある。当時は、自動離脱式の、かなり大きな物で、高価でもあったが、性能的には良いものであったと記憶している。
 
[7] 議題2「遭難時緊急時の連絡手段、イパーブ又はそれに代わる機器の自主的な搭載に関する意識等についての実態調査」及び議題3「小型船舶に搭載すべき機器として既存の機器の利用及び新たな機器の開発の検討」
 
上記2議題について、委員長から具体的な検討を、作業部会において行うことの指示があり、これに対して次の質疑応答、意見等があった。
 
○ アンケート調査は、質問の仕方によってその意図が解答者に伝わらないことが多々あるので、その点特に注意する必要がある。また、既に何らかの通信機器を保有している者に対し、更に追加でもう一つの設置を求めるのは難しいと考える。従って、既存の機器に新たな機能を加えることで、より迅速、確実に救助機関に通報できるようにするといった方向での検討が有効ではないか。例えば、携帯電話などは、現在広く普及しているので、これにボタン一つで最寄りの海難救助機関に遭難通報を発信するといった機能を付加する等も方法としてあると思う。
□ 別の委員会の関係で調査した結果がここにあるが、20総トン数未満の漁船では、距岸12海里以内での発生が全体の88パーセントである。漁船全体でも距岸12海里以内での発生が全体の82パーセントとなっている。携帯電話の通話可能エリアを考えると、当委員会において携帯電話に関する検討が、当然必要であろうと考える。緊急の場合のみ使用する機器の普及を図ることは、確かに難しいと思う。
△ 携帯電話に関する検討は、結構であるが、携帯電話の元々の使用目的、機能といったことを踏まえたうえでの議論とする必要がある。
□ 携帯電話に例えば防水性といった機能を付加することにより、海上での緊急連絡手段をより確保できる訳で、そういった検討は意味あることと考える。
△ 携帯電話に係る種々の規制もある訳で、単に広く普及しているから、これを利用するという考えは如何なものか。
○ 携帯電話にも種々の制約があり、携帯電話だけあれば、他の通信手段は一切必要ないという事にはならない訳であるが、緊急時に使用できる連絡手段の一つである。そういったことを踏まえてアンケート調査を実施し、また結論に持っていって欲しい。
□ 携帯電話の議論が長くなったが、本委員会としては、携帯電話を含めて種々の通信システムを検討し、小型船舶に最適な通信連絡体制を考えるということで認識している。
◎ 実際には色々な面で種々の規制が存在し、実施に問題があることも出てくるとは思うが、委員会としては、先ずそういった制約に捕らわれず、自由な発想で検討していこうという趣旨であるので、ご理解いただきたい。
 
[8] その他特段の意見なく委員会を終了した。








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