日本財団 図書館


第1章 調査研究の概要
1.1 事業目的
 GMDSS体制の整備により、大型船については、遭難時において衛星EPIRB等により、その位置等の情報をいち早く海上保安庁等に知らせることが可能であり、短時間のうちに救出されるための担保を得ている。
 しかし、海難全体の7割以上を占めているのは、EPIRB(以下「イパーブ」という。)の搭載義務のない小型船舶(非GMDSS船)であり、これら小型船舶については、イパーブ等の搭載義務がないため、その多くは遭難時における自動通報手段がなく、一部で漁業無線や携帯電話等が使用されているに過ぎないのが実態である。しかしながら、漁業無線は使用する周波数帯による無線局からの距離の問題があり、また携帯電話も沖合が不感地帯となること等、遭難時における連絡手段としては必ずしも十分なものではない。一方、イパーブ等の機器は現在のところ一般的に高価であり、その維持についてもかなりの経費がかかるうえ、小型化、携帯化されていないので、船外への持ち出しが容易ではないという問題がある。また既存のイパーブ等の機器では、小型船舶における死亡事故の多数を占める乗組員の海中転落事故に対応できないといった問題もある。
 小型船舶の海難は、発生自体が即座に人命の安全に関わることが多く、迅速な救助が必要であるにもかかわらず、イパーブが搭載されていないため遭難の事実の把握、またその遭難位置の特定に時間を要することとなり、迅速な救助が期待できないのが現状である。
 このような状況に鑑み、小型船舶についてもイパーブの搭載を検討するとともに、それに代わる小型自動遭難信号発射機器その他の有効な連絡手段等を検討し、もって小型船舶の遭難者救助の迅速化に資することを目的とする。
 
1.2 事業計画
事業は、平成12年度及び平成13年度の2カ年計画で実施する。
 
(1) 事業計画の内容
 
本調査研究は、小型船舶(非GMDSS船)について、
 
[1] 遭難等緊急時の連絡手段、イパーブ又はそれに代わる機器等の自主的な搭載に関する意識等について実態を調査する。
[2] 小型船舶に搭載すべき機器として既存の機器の利用及び新たな機器の開発を検討する。
[3] 小型船舶に最適な通信連絡体制のグランドデザインを策定するものとする。
 
(12年度)
a 小型船舶を対象とした実態調査
 小型船舶の通信連絡手段の現状並びに通信連絡手段に関するニーズ及び問題点、小型船舶への自主的なイパーブ又はそれに代わる機器の搭載に関する意識をアンケートにより調査する。
b 既存機器についての改良検討
 既存の各種機器の有効性、小型船舶への利用可否、改良開発について種々の面から検討する。
c 遭難時における連絡手段の確保に係る検討
 前記a及びbを踏まえた上で、遭難時における小型船舶の最適通信連絡体制のグランドデザインを策定する。
d 報告書の作成
「非GMDSS船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(中間報告)」
 
(13年度) 
a 非GMDSS船用小型イパーブ等の調査研究
(a) イパーブの小型軽量化及び低価格化
(b) PLB(Personal Locator Beacons)の海上救難用としての導入
b 既存のその他通信システムの調査研究
(a) 漁業無線、マリンVHF等既存の通信システムの活用
(b) 携帯電話の海上での使用
c 非GMDSS船の緊急時における連絡手段確保のためのグランドデザイン構築
d 報告書の作成
 「非GMDSS船遭難時における連絡手段の確保等に関する調査研究(完了報告)」
 
(2) 実施の方法
 
 当協会に学識経験者、関係団体、関係官庁等からなる委員会を設置し、海事関係団体及び関係研究機関の協力を得て実施する。
 一部専門的な技術及び知見を必要とする事業内容については、専門の調査研究機関に業務を委託して実施する。
 
(3) 事業成果の公表の方法
 
 この事業は競艇公益資金による日本財団の助成金を受けて実施した旨を明示するとともに、報道機関、機関誌等を通じて、一般に公表し、機会あるごとに利用者、関係者に周知徹底させる。
 
(4) 補助事業の開始及び完了の時期
 
 開 始   平成12年4月 1日
 完 了   平成14年3月31日
 
1.3 調査研究の経過
平成12年 7月4日   平成12年度第1回委員会開催
  7月31日   平成12年度第1回作業部会開催
  8月27日   緊急時における連絡手段の確保等に関するアンケート
      調査開始
  9月27日   平成12年度第1回作業班会合開催
  9月30日   緊急時における連絡手段の確保等に関するアンケート
      アンケート締め切り
  10月25日   平成12年度第2回作業部会開催
平成13年 2月6日   平成12年度第3回作業部会開催
  3月7日   平成12年度第2回委員会開催
  6月26日   平成13年度第1回委員会開催
  8月28日   平成13年度第1回作業部会開催
  10月1日   海上用小型PLBの開発を太洋無線(株)へ依頼
  12月10日   平成13年度第2回作業部会開催
平成14年 2月22日   海上用小型PLB開発成果受領
  2月26日   平成13年度第3回作業部会開催
  3月13日   平成13年度第2回委員会開催








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION