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地方税制度に関する調査研究 地方税における法定目的税の活用方策に関する調査研究報告書

 事業名 地方自治情報啓発研究
 団体名 自治総合センター 注目度注目度5


第二部 地方税における法定外目的税の
活用方策に関する調査研究
租税における「課税目的」とは何か
 岡山大学法学部教授 安宅 敬祐
I 目的税と受益者負担金、原因者負担金、使用料・手数料、料金との差異
 
 (1)問題の所在
 上記の差異については、一応の説明がなされているものの明確ではない。例えば、受益者等の範囲が明確に限定されうるのかどうか、受益等の程度が個々の受益者等毎に明確に評価しうるのかどうかによって区別しうるという考えもある。しかし、受益者等の範囲についても厳密に考えていくと明確でないものもあり、受益等の程度の評価についても様々な算式が考えられるものもあり、ほとんど考えられないものもある。対象者についても、金額についても、つまるところ一定の想定を置くか、極端にいえば擬制を置くしかできないのではないかと思われる。
 このことは、都市計画税を考えた場合、毎年度の都市計画税収入とその年度の都市計画事業等に係る経費は対応されていないのが普通である。一方、都市計画法第75条に基づく受益者負担金については「都市計画事業によって著しく利益を受ける者があるときは、その利益を受ける限度において…」となっているが、「著しく利益を受ける者」や「利益の限度」については一義的に明確ではない。
 他の例として、高速道路の料金の算定の困難さがあげられる。一定のルールは考えられるものの、建設費、維持管理費等のうちどこまでを対象にするのか、仮にそれが決まったとしてどの位の償還期間を見込むのか、対象区間はどこからどこまでを対象にするのか等について一義的な答えがでてくるとはいえない。例えば、瀬戸大橋の通行料金は普通乗用車で往復1万円弱であるが、現在の借入金残高、通行量等を考えて実際のコストを計算してみると、その何倍もかかると思われる。もしそれを基に料金を決定したとすると通行量は激減してしまう。
 受益者の範囲については明確な手数料についても、全国的観点から計算された標準手数料を基にして、あるいは個々の地方公共団体のコスト計算に基づいて、条例で定められることになっているが、どこまでの人件費、物件費、維持補修費等のコストを何人(件)を基にして1人(件)当たりの手数料を計算するのかについても一義的な答えは出てこない。
 更に困難なのは、一般廃棄物の処理手数料等について、上記のような一定のルールに基づくコスト計算からでてくる金額をはるかに超える金額(従って、その意味は禁止ないし抑制的な意味をもった金額)を条例で定めた場合には、それは違法なのであろうか。
 
(2)現行の地方目的税の立法趣旨
 (1)で述べた課題について回答していくためには、以上のような問題意識の下に、統一的、普遍的理解が可能かどうかを検討しなければならないが、紙面が限られているために、現行の地方税法に定められている目的税のうち、都市計画税及び国民健康保険税について、その立法趣旨を調べてみることにしたい。
(i)都市計画税
 現行の都市計画税は、昭和31年に創設されたものである(その後数度の改正を経ているが、基本的性格は変わっていないと考える)が、当時の立法趣旨を当時の改正地方税制詳解でみると、次のとおりである。
 [1]国民の租税負担が限度に達したといわれる現在、事業や施設に充てる財源としては当該事業又は施設によって利益を受ける者にその負担を求めてゆく処のいわゆる受益者負担の制度を拡充する以外に方途がないであろう。
 都市の近代化殊に町村合併による新市の誕生は、都市計画事業の強力な展開を要請しているにもかかわらず、国及び地方を通ずる財政窮乏のあおりを受けて遅々として進まない現状である。
 もともと、都市計画事業については、夙に大正8年都市計画法の公布と同時に目的税として都市計画特別税が創設され、昭和15年の地方税法の制定に際し都市計画税と改められ、爾来昭和25年の地方税法の全面改正において廃止され水利地益税に吸収されるまで存続した。而して、この都市計画税は、都市計画事業の施行に要する費用に充てるための財源を、地租割、家屋税割、営業税割、府県税独立税割及び市町村税独立税割の形でそれぞれ道府県にあっては本税の100分の10以内、市町村にあっては100分の30以内で課することにより確保しようとするものであった。従って、この税は都市計画事業に要する財源を独立税の一般的増徴という形で確保しようとしたものであり、受益限度を問わず、単に当該税収入の使途が特定されている意味での目的税であった。
 ところが、昭和25年の地方税法の全面改正において、このような形での都市計画税は廃止され、代わりに水利地益税によって都市計画事業の財源を得ることができるものとされた。即ち、道府県又は市町村は、都市計画法に基づいて行う事業の実施に要する費用に充てるため、当該事業により特に利益を受ける土地又は家屋に対し、その特に受ける利益の限度内において、その価格又は面積を課税標準として水利地益税を課することができるのである。
 また、都市計画事業については、都市計画法の規定するところによって、別途受益者負担金を徴収してその財源に充てる途がある。
 然るに、この水利地益税或は受益者負担金制度の現状は、都市計画事業の財源としては殆んど言うに足りないものがある。而して、これが主たる理由は、いずれも「特に受ける利益の限度」の判定が、とかく主観的なものとなり勝ちな為に、現実の運用において甚しく困難を伴うことにあると思われる。
 かくして、水利地益税の運用の現況及び過去における都市計画税の運用のあとを勘案して、新たに都市計画税を創設することとしたのである。
 [2]そこで、都市計画税の内容を、水利地益税或は旧都市計画税のそれと比較してみると、おおむね次の表のようである。
 

都市計画税 水利地益税 旧都市計画税
(1)



都市計画区域の全部又は一部の区域で市町村の条例で定めるものの内に所在する土地及び家屋で固定資産税の課税客体とされているもの 都市計画法に基づいて行う事業に因り特に利益を受ける土地又は家屋 地租割、家屋税割、営業税割、府県税独立税割及び市町村税独立税割(市町村は別に税目を起して都市計画税を課する事ができる。)
(2)




所有者(固定資産税の納税義務者である所有者) 条例で定めるところによる。 各税目の納税義務者
(3)



市町村 道府県又は市町村 同左
(4)賦


当該年度の初日の属する年の1月1日(固定資産税と同じ。) 条例で定めるところによる。 各税目のそれによる。
(5)

原則として4月、7月、12月及び2月(固定資産税と同じ。) 条例で定めるところによる。 各税目のそれによる。
(6)



土地又は家屋の価格(固定資産税の課税標準と同じ。) 土地又は家屋の価格又は面積(条例で定める。) 各税目の税額
(7)

制限税率 条例で定めるところによる。 制限税率
100分の0.2 府県税100分の10
市町村税100分の30
(8)




当該土地又は家屋に係る固定資産税とあわせて、全く同一の方法で賦課し徴収する。 条例の定めるところにより徴収の便宜に従い普通徴収、特別徴収又は証紙徴収の方法による。 各税目とあわせ同一の方法による。
(9)
使



都市計画事業又は土地区画整理事業に要する費用に充てることを目的とする。 都市計画法に基いて行う事業の実施に要する費用に充てることを目的とする。 都市計画法及び特別都市計画法の施行に要する費用に充てることを目的とする。
 
 [3]都市計画税は、水利地益税と異なり、特に利益を受ける土地又は家屋に対し、その特に受ける利益の限度内で課することを必要としないが、さればとて旧都市計画税のように全く受益を要素としないものでもなく、都市計画区域内の土地及び家屋は、客観的にみて一般に利益を受けるものであるという前提に立ち、唯例外として、よく引例される京都市における鞍馬山の山林地帯の如く、当該都市計画区域内にある土地、家屋であっても隔絶して所在し、都市計画事業によって直接利益を受けることがないものと認められるようなものについては、条例で定めるところによって課税客体から除外しうる途を開いているのである。
 [4]都市計画税を課するのは、市町村のみであり、且つ、これを課するかどうかは全く当該市町村の任意に委ねられている。
 このように、市町村のみが都市計画税を課することができるものとされているのは、都市計画事業の本体はやはり市町村であり、国や道府県等が事業を施行する場合においては負担金を徴収するものとされているのであるが、この負担金の財源に充てるためにも市町村は都市計画税を課することができるのである。なお、ここに「事業に用する費用」の範囲は、「事業の実施に要する費用」(水利地益税)よりは広汎であって、以上の外、例えば事業のための起債の元利償還金も含まれるものと解されている。
 [5]都市計画税の課税客体、納税義務者、課税標準、賦課期日、納期等すべて固定資産税のそれと合致しているがこれは、その賦課徴収を原則として一本の徴収令書により、同時に行うものとする趣旨であり、これによって両税の賦課徴収の簡素合理化を図るものである。
 [6]なお、都市計画事業の費用に充てるためにこれ迄通り、水利地益税を課することは些かも差し支えないのであるが、都市計画税との重複課税をさけるために、市町村は、都市計画税を課する場合においては、都市計画法に基づいて行う事業の実施に要する費用に充てるための水利地益税を課することができないものとされている。
 
(ii)国民健康保険税
 国民健康保険税の課税団体は、国民健康保険を行う市町村のうち保険料に代えて国民健康保険税を課することとしたものであるが、本税の創設時から市町村とされていたわけではない。
 [1]国民健康保険税の沿革
 国民健康保険制度は、農山漁村の住民や都市の商工業自営者のための医療保険制度として、昭和13年に創設された。工場や会社の従業員に対する健康保険制度は、すでに昭和2年から実施されていたので、国民健康保険は健康保険より約10年おくれて発足したわけである。
 旧国民健康保険法は、昭和13年4月1日に公布され、同年7月1日から実施された。この法律は、戦時中および戦後において、国保制度の充実強化や再建のために8回の部分的改正が行われたが、昭和33年1 2月の全面改正によって、国民皆保険の基礎法としての現行国民健康保険法に引きつがれた。一般にこの全面改正以前の片カナ書き国保法を「旧法」、現行の国保法を「新法」とよんでいる。
 健康保険はドイツの労働者保険をモデルとしてつくられた職域保険であるのに対し、国民健康保険は、当時の社会事情に応じたわが国独特の地域保険としてつくられた。国民健康保険は、農業恐慌とよばれる慢性的な不景気にさらされて医療費負担の重圧に苦しむ農村や都市の低所得住民を、地域的な連帯感に基づく保険制度によって救済しようとしたもので、その要点は次のようなものであった。
 (1)主旨…郷土的団結の風習をもち、相互扶助の精神がうけいれやすい市町村を単位に、自治的な組合を組織させ、地方の実情に応じた事業経営を行わせる。
 (2)保険者…市町村の区域内の世帯主で組織する普通国保組合および同一事業または同種業務の従事者で組織する特別国保組合の二種とし、非営利社団法人(医療利用組合)に事業代行を認め、いずれも任意設立とする。
 (3)被保険者…組合員およびその家族を被保険者とするが、原則として任意加入とする。
 (4)給付…療養、助産および葬祭とし、現物給付の代りに現金給付をも認め、給付の種類、範囲、支給期間、一部負担金などは規約で定める。
 (5)保健施設…疾病または負傷の予防、健康診断、保養、その他健康の保持増進に関する施設をすることができる。
 (6)保険料…保険料の額、徴収方法、減免、徴収猶予などは規約で定める。一定期間給付を受けなかった場合には保険料の一部払い戻しをしてよい。
 (7)医療機関…組合と医師または薬剤師との契約で行う。
 (8)組合の運営は組合会と理事によって行う。
 (9)組合は連合会を設立できる。
 その後、戦時体制下において、政府は、全国民への制度の普及と、治療から予防へ、つまり全般的な健康の保持増進策の実施を目的として、国保法の改正を行い、昭和17年5月1日から実施に移された。この改正は従来任意設立であった普通組合を、地方長官(知事)が必要と認めた場合は強制設立させうること、また組合員の資格を有する者を強制加入させうること、医療機関に対しては組合との契約でなく地方長官の指定制とすること、診察費用の額は厚生大臣が医師会等の意見をきいて定めること、保健施設の実施や費用の支出を厚生大臣や知事が保険者や連合会に命令できることなど、かなり急進的な内容を含むものであった。
 この法律改正を契機として、国保の普及は飛躍的な発展を遂げ、昭和18年度末には被保険者数3,729万人に達し、組合の設立は全市町村の95%に及び、量的には最大の社会保険となり、まさに国民皆保険が達成される寸前までこぎつけた。
 このように国保制度は、昭和13年の創設から終戦までの7年間に町村部では全国の98%以上に普及されたが、市部においては組合の設立がはるかに立遅れた。これは、旧制度の重点が農山漁村に置かれたことにもよるが、さらに市部では住民の地域的団結が比較的薄弱であり、医療施設にも比較的恵まれていたことが原因と考えられている。
 昭和20年8月15日の終戦は、戦争遂行に集中してきた民心を虚脱状態におとしいれた。物資の欠乏、食糧難とインフレにより国民は飢餓と混乱に打ちのめされた。国保もこの社会・経済の混乱により大打撃を受け、事業を休廃止する組合が続出した。昭和22年12月の調査では事業不振、休止組合は44%に及ぶと報告されているが、実情は過半数あるいは大部分の組合が同様の状態にあったと推定されている。このような事業の不振、休止は、生活難のため住民の保険料納入意欲が低下し、他方、医薬品や衛生材料の欠乏と値上り、インフレによる医療費や事務費の増嵩により保険財政が破局的な状況に追い込まれた結果である。
 ほとんど制度崩壊寸前まできた国保をいかにして再建するかに、関係者はほん走した。昭和22年5月3日から施行された新憲法はその25条で国民の生活基本権としての社会保障の確立をはじめて明定し、22年6月にはGHQが「国保制度の改革」に対する声明を発表した。22年10月には憲法25条の理念に基づく、広汎な新しい社会保障制度の確立についての「社会保障制度要綱」が、社会保険制度調査会から答申された。この答申をうけて行われたのが、国保の市町村公営原則を中心とする一連の制度改革で、戦後における国保制度の再建はこの時点から力強く一歩をふみだすことになった。改正法案は23年の第2国会で原案どおり可決され、7月1日から施行されたが、その要点は次のようなものである。
(1) 国保は原則として市町村公営とする。
(2) 市町村が公営しない場合にのみ、国保組合または非営利社団法人の国保経営を認める。
(3) 組合、社団法人経営の国保についても、重要事項は市町村議会の議決を要する。
(4) 指定保険医制を契約による療養担当者制とする。
(5) 診療報酬は保険者と療養担当者が協議決定する。
(6) 社会保険診療報酬算定協議会の権限および構成を法定する。
(7) 助産の給付を保健施設に加える。
(8) 保険料の払い戻し制を廃止する。
(9) 組合の強制設立規定を削除する。
(10) 普通組合は強制加入とし、被保険者の範囲を市町村と同様にする。
(11) 国庫補助金の交付を明文化する。
 
 国保の再建途上における第二の重要な改正は、税制の導入であった。市町村公営、加入義務制に基づく再建活動によって、制度に対する住民の信頼感が徐々に回復するにともない、保険診療の利用が高まり受診率が予想以上に上昇した。このため昭和24年頃から保険財政は早くも危険な状態におちいり、保険料収入の拡大を図る必要が生じた。市町村側としては、税に対する国民心理の現状からみて、保険料より保険税として徴収する方がよりよい収納成績をあげる見込みがあることから、市町村公営を裏付ける意味においても、保険料を税として徴収する制度を創設するよう要望が高まった。このため国保税の創設に関する地方税法の一部改正案が昭和26年の第10国会に提案され、4月1日から実施された。
 一方、受診率の上昇や療養給付費の増嵩にともない、保険給付適正化への要望も強まった。従来国保では都道府県単位の国保診療報酬調整協議会を行政方針として設置し、保険者の委託を受けて審査を行うこととしていたが、法的な根拠をもたないものであったので、診療報酬請求書の審査に関する一章を国保法に設け、国保診療報酬審査委員会により審査を行うこととし、併せて市の一部を区域として国保の公営を行うことができる規定、一部負担金の窓口払いの規定などとともに第5次改正が行われ、同じく4月1日から実施に移された。
 この制度改正は、国保税の創設により収入面の強化をはかるとともに、他方、支出面の適正合理化をはかる審査機構の確立によって、収支両面から保険財政の健全化を目指したものである。
 昭和34年には国民健康保険法の全面改正が行われ、療養の給付に要する費用に対する100分の20の国庫負担金制度が制度的に確立されたことに伴い、従来当該年度の初日における療養の給付に要する費用の見込額の100分の70に相当する額とされていた国民健康保険税の標準課税総額が、当該年度の初日における療養の給付及び療養費の支給に要する費用の総額の見込額から療養の給付についての一部負担金の総額の見込額を控除した額の100分の90に相当する額に改められた。また、標準課税総額の算定方式について、従来の所得割総額、資産割総額、被保険者均等割総額及び世帯別平等割総額の合計額による方式のほかに新たに2方式を加え、市町村においてはこれら3方式のうちいずれか一方式を選択して課税総額を算定し、それを当該方式に応ずる納税義務者にあん分して課税額を定めることができることとされた。
 国民健康保険税の標準課税総額は、昭和37年には100分の90から100分の80に、昭和38年には100分の75に、平成6年には100分の65に改められた。
[2]国民健康保険税の性格
 国民健康保険税は、国民健康保険に要する費用に充てるためその負担を国民健康保険加入者に求める目的税である。
 市町村は、国民健康保険に要する費用(老人保健法の規定による拠出金及び介護保険法の規定による納付金の納付に要する費用を含む)に充てるために国民健康保険税を課することができる。国民健康保険に要する費用とは、保険給付費はもちろん、保健施設費、直営診療施設運営費、保険事務費等所要経費のいっさいを含むものである。
 国民健康保険制度は、加入者がかかった医療費を互いに負担し合う医療保険であり、他のすべての医療保険と同様に、本来保険料の形で対応すべきものである。したがって昭和25年度までは、保険料及び一部負担金をもって賄うものとされていたが、その徴収状況は必ずしも良好でなかったため、昭和26年度から市町村は、保険料に代えて国民健康保険税を徴収することができるものとされ、収入の確保を図ることにより、国民健康保険財政の基礎を強固にするとともに、あわせて納税者の負担の均衡化に資することとされたものである。
 国民健康保険税は、前述したように、標準課税総額を所得割、資産割、被保険者均等割及び世帯別平等割の全部又は一部の組み合わせによる三つの方式のうちいずれかの方式によりあん分して課税される。これは、各市町村の実情により、できるだけ公平な課税をする趣旨から認められたものである。
 
(3)目的税等の性格に関する判例の動向
 
[1]水利地益税と受益者負担金との差異
 大阪高裁昭和58年9月30日判決
 (第一審、神戸地裁昭和57年4月30日判決)
 【判決要旨】
 都市計画税は、市町村が、都市計画事業等に要する費用に充てるため、都市計画区域内の一定の地域内に所在する土地及び家屋に対し、その価格を課税標準として、その所有者に課する目的税であり(地方税法702条)、水利地益税は道府県又は市町村が、都市計画法に基づいて行なう事業等の実施に要する費用に充てるため、その事業に因り特に利益を受ける土地又は家屋に対し、価格又は面積を課税標準とし、土地等がその事業に因り特に受ける利益を課税額の限度として課する目的税であって(同法703条)、いずれも、都市計画事業等に要する経費に充てるため土地家屋に対して賦課される目的税であるところ、水利地益税については、その賦課の理由が都市計画法に基づいて行なう事業等の実施に要する費用に充てるために限定されているほか、定められた義務者の範囲及び賦課の基準、限度においても受益者負担金との類似性を感じさせるが、両者は賦課の目的において明らかに異なるうえ、水利地益税における賦課の理由の限定と当該事業により特に利益を受ける土地又は家屋に対しその価格又は面積を課税標準として受益の限度内で課税額を定めることとの間には必然性があるわけではなく、それは、立法政策上妥当な要件として選択されたにすぎないものと解されるから、両者が法律上同一視することのできないものであることは明らかである。
 
[2]租税と受益者負担金との差異
 東京高裁昭和59年1月31日判決
 (第一審、横浜地裁昭和56年12月23日判決)
 【判決要旨】
 受益者負担金と租税は、ともに行政庁により公権力の行使として賦課される金銭給付義務ではあるけれども、両者を比較してみると、受益者負担金は、特定の公益事業の実施により特定の者が特別の利益を受けることを理由に、その受益者に対し、特別利益を限度として、その事業に要する費用の一部を負担させる目的で賦課されるものであり、他方、租税は、国又は地方公共団体の経費が必要であることを理由として、特別の給付に対する反対給付としてではなく法律の定める課税要件に該当する総ての者に対し、負担能力についての一般的基準より、右団体の財力調達の目的で賦課されるものであり、両者は賦課の目的及び理由並びに負担義務者の範囲において全く異なるものである。
 
[3]下水道事業受益者負担金賦課決定処分取消請求事件
札幌高裁昭和62年7月16日判決
 (第一審、釧路地裁昭和61年3月18日判決)
【判決要旨】
 都市計画法に基づく受益者負担金と都市計画税とは、賦課目的、根拠、課税対象がほぼ同一であるから、両者を同時に賦課することは二重課税に該当する旨の主張について、両者は、市町村の行う都市計画事業に要する費用に充てるという点で賦課目的が類似しているが、後者は都市計画区域として指定された市街化区域又は特別の事情があるため条例で指定された市街化調整区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対し、不動産所有の事実から担税力を推定してその不動産の課税評価、面積を課税標準として課されるものであるのに対し、前者は、公共下水道事業により利益を受けるという特別の関係にある者に対してだけその受益の程度に応じて賦課されるものであって、法律上負担基準が定められていないので受益の程度によって賦課額をそれぞれ変えることができるが、賦課対象者は受益者に限られるという点で受益の程度と賦課額との対応関係が密接であって、右のとおり、目的税である都市計画税と受益者負担金である本件負担金はその性質を異にするものである以上、両者を同時に賦課することが税金を二重賦課することにはならないのは明らかであり、地方税法に照らしても、都市計画税と本件負担金の同時賦課が禁止されていると解することはできない。
 
[4]国民健康保険税条例の違憲性
仙台高裁昭和57年7月23日判決
(第一審、秋田地裁昭和54年4月27日判決)
【判決要旨】
 国民健康保険税条例のうち2条の課税総額に関し、(1)その確定を課税権者が自由な裁量によって内部的に決定しうるとする委任は、租税条例主義からは多大な疑問があり(2)その額の確定において働かせうるYの裁量の余地は現実にも広汎なものとなっていることは明らかであり、(3)その額の確定の諸要因のうち、どの点をどのように考慮するかの判断には相当に差異が生じそこで行使される裁量の幅は大きいものであり、(4)「100分の65に相当する額」という上限も、この上限額の機能によって、右額確定についてのYの裁量の幅が狭いとする判断は成立しない、などから、重要な課税要件たる右額の確定を広汎な裁量の余地のあるままにYに委ねた条例2条の規定は、やはり課税要件条例主義に反するといわざるをえず、さらに課税要件明確主義にも違反するというべきであり、課税総額を基礎として税率を決定する点ともどもその余について判断するまでもなく、憲法92条(地方自治の基本原則)、84条(課税の要件)に違反し、無効であるというべきである。
 
[5]国民健康保険料賦課処分取消等請求事件
 旭川地裁平成10年4月21日判決
【判決要旨】
 国民健康保険は、[1]強制加入制であること、[2]その保険料又は保険税は選択的とされ、いずれも強制的に徴収されるものであること…[3]その収入の約3分の2を公的資金でまかない、保険料収入は3分の1にすぎないのであるから、国民健康保険…の対価性は希薄であること等の事実に照らせば、このような性質を有する徴収金(保険料)は…民主的なコントロールの必要性が高い点で租税と同一視でき、一種の地方税として租税法律(条例)主義の適用がある。
 
 札幌高裁平成11年12月21日判決
 (第一審、旭川地裁平成10年4月21日判決)
【判示事項】
 国民健康保険料の賦課徴収と租税法律(条例)主義との関係。
【判決要旨】
 国民健康保険などの社会保険は、保険技術を利用して社会政策的見地から目的に合致する一定の事故を保険事故として給付を行う制度であり、相扶共済の精神に基づき、一定の地域又は職域からなる一定の集団内において必要とされる保険給付を当該集団に属する被保険者の拠出する保険料によってまかなおうとするものであって、被保険者の保険料納付義務は保険給付に係る受益の権利に対応するものであり、保険料は、保険給付との対価関係に基づく費用負担としての性質を有する。国民健康保険への強制加入、保険料の強制徴収は、国民健康保険の性質に由来するものであり、公的資金の導入は、保険料の対価性による欠損を補充するものに過ぎず、所要経費の3分の2が公的資金によってまかなわれているからといって、保険料の対価性が失われるものではないのであるから、元来特別の給付に対する反対給付としての性質を有しない租税とは異なり、租税法律(条例)主義が直接に適用されることはないというべきである。
【判示事項】
 国民健康保険における保険料率の定め方。
【判決要旨】
 国民健康保険における保険料については、狭義の租税と異なり、租税法律(条例)主義が直接に適用されることはないというべきであるが、恣意的な保険料の賦課徴収を排除するため、国民健康保険の目的・性質に応じた民主的コントロールが確保されることが必要であり、かつ、それをもって足りるから、保険料の賦課徴収に関する事項をすべて条例に具体的に規定しなければならないというものではなく、賦課及び徴収の根拠を条例で定め、具体的な保険料率等については下位の法規に委任することも許されるというべきである。すなわち、保険料は1年毎に保険財政の不足分を被保険者に配分する仕組みが取られ、保険事故に対して必要な給付額等を予測し、それに基づいて算定されるものであるため、本来固定的に定額・定率では決めがたい要素をもっていること、保険料率は各年度においてできるだけ早期に決定する必要があることを考慮すると、条例において、保険料率算定の基準・根拠を具体的かつ明確に規定した上、具体的な保険料率の決定を下位の法規に委任し、現に下位の法規でその内容が明確にされている場合には、課税要件法定主義・課税要件明確主義の趣旨を実質的に充たしているものというべく、憲法84条違反の問題は生じないというべきである。
 
[6]小作料増額等請求事件
 最高裁第三小法廷昭和55年1月22日判決
 (第一審、東京地裁昭和51年3月15日判決)
【判決要旨】
 農地法上、既に設定されている賃借権について、借地人が個人である場合には、一定期間賃貸人に小作料増額請求権を認める同法23条(小作料の増額又は減額の請求権)の適用を除外し、旧農地法21条以下を引き続き適用すること(昭和45年法律第56号附則8項)としているため、市街化区域内農地に対する宅地並み課税により固定資産税及び都市計画税の額の合計額が小作料の額を著しく上回る結果となるから、右は、憲法29条(財産権)に違反するとの主張につき、地方税法(昭和46年法律11号による改正前のもの)附則19条の2、同27条の2の市街化区域農地に係る固定資産税及び都市計画税の宅地並み課税については、最近、市街化区域農地の価格が著しく騰貴し、値上がり益が農地の価格のなかに化体していることに着目して新設されたものであるから、固定資産税等の税額が、農地を他に賃貸した結果得られる収益である小作料の額を超過することがあるとしても、そのことが直ちに農地の所有者の権利を侵害する不合理なものであるということはできないから、農地法附則8項が憲法29条に違反するとの主張は、前提を欠き採用できない。








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