III IT革命下における人事施策
コンピュータ技術の急速な発展に伴い、事業の国際化、ボーダレス化の勢いもますます加速しており、業務のIT(情報通信技術)化は、今日の企業にとっては当然の流れであり、なくてはならないものであろう。また、国を挙げて、我が国を世界でも有数のIT国家とするため、高度通信技術ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が制定され、高速インターネットインフラの実現など、「e−Japan戦略」などの施策が展開されている。
しかし、あまりにも急速な業務のIT化により、その流れに追いつけない社員の存在が、企業にとって新たな人事施策の柱となっているのではないだろうか。そこで、IT革命下における企業の人事施策について調査した。
1. ITシステムの導入状況〔第15・16表参照〕
まず、企業におけるITシステムの導入状況を調査した。
「ITシステムは導入していない」企業は回答のあった企業全体の僅かに0.7%に当たる2社のみであった。「LAN」を導入している企業の割合は92.7%であり、「電子メール」は94.2%、「インターネット」は95.3%といずれも9割を超える割合の企業で導入されていた。なお、「その他」が5.8%あったが、その内訳をみると企業向けの業務パッケージソフトを導入しているとの回答が多く、他にイントラネットを構築しているという企業も数社みられた。
IT産業に関わるベンチャー企業が多々みられるなど、現在の企業活動にとってITシステムは必要不可欠な存在となっていることはもはや疑いの余地のないところであろう。
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
企業規模別にITシステムの導入状況をみると、企業規模が大きいほど、導入していると回答した企業の割合は高く、「5千人以上」では、「インターネット」はすべての企業で接続されており、「LAN」、「電子メール」についても98.2%とほとんどの企業で導入されていた。特に「LAN」についてみると、「千人未満」の企業で85.9%と唯一9割を切っていたが、これは「LAN」を引くことについての費用対効果を考えた結果ということであろう。また、「ITシステムは導入していない」と回答したのは3千人未満の企業のみであり、「1・2千人台」で0.8%、「千人未満」で1.6%と、企業規模が小さいほどITシステムを導入していない企業の割合は高いが、これについてもITシステムの導入についての費用対効果が影響しているものと思われる。
第15表 ITシステムの導入状況
[1]企業規模別
(複数回答) |
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
275社 |
57社 |
35社 |
119社 |
64社 |
LAN |
92.7% |
98.2% |
94.3% |
93.3% |
85.9% |
電子メール |
94.2 |
98.2 |
94.3 |
93.3 |
92.2 |
インターネット |
95.3 |
100.0 |
91.4 |
93.3 |
96.9 |
その他 |
5.8 |
5.3 |
− |
9.2 |
3.1 |
ITシステムは導入していない |
0.7 |
− |
− |
0.8 |
1.6 |
イ 産業別
次に産業別にみると、最も導入の度合の高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」で回答のあった企業全てで導入されており、「その他」の業務パッケージソフトを業務に取り入れている企業の割合も16.7%と最も高くなっている。逆に最も導入の度合の低いのは、「金融・保険業、不動産業」で、「電子メール」は70.8%、「LAN」、「インターネット」は、それぞれ83.3%といずれも他の産業と比べて最も低い割合であり、「ITシステムは導入していない」も4.2%あった。これら産業では窓口業務や外交による営業が主体であるため、このような調査結果となったものであろう。
第16表 ITシステムの導入状況
[2]産業別
(複数回答) |
項目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険、不動産業 |
275社 |
29社 |
146社 |
18社 |
9社 |
49社 |
24社 |
LAN |
92.7% |
93.1% |
93.8% |
100.0% |
100.0% |
89.8% |
83.3% |
電子メール |
94.2 |
93.1 |
97.9 |
100.0 |
88.9 |
93.9 |
70.8 |
インターネット |
95.3 |
89.7 |
96.6 |
100.0 |
88.9 |
100.0 |
83.3 |
その他 |
5.8 |
3.4 |
6.2 |
16.7 |
− |
4.1 |
4.2 |
ITシステムは導入していない |
0.7 |
− |
0.7 |
− |
− |
− |
4.2 |
2. ホワイトカラー正社員に対するパソコン装備状況〔第17・18表参照〕
企業におけるITシステムの導入状況は前述のとおりであるが、実際にそのシステムを有効的に活用するためには、社員個々に1台ずつパソコンが装備されていることが望ましいものと思われる。実際にはどの程度の割合でパソコンが装備されているのかをみたところ、「1人に1台」とする企業の割合が回答のあった企業の67.4%と最も高く、「1人に1台超」装備している企業の9.5%を加えると回答企業の8割近くの企業ではホワイトカラー正社員1人につき、最低でも1台はパソコンが装備されていた。
これを企業規模別にみると、ITシステムの導入状況とも関連したものであろうが、おおむね企業規模が大きいほど1人に1台以上パソコンを装備している企業の割合が高い傾向にあった。
第17表 ホワイトカラー正社員に対するパソコン装備状況
[1]企業規模別
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
273社 |
57社 |
35社 |
118社 |
63社 |
1人に1台超 |
9.5% |
17.5% |
5.7% |
6.8% |
9.5% |
1人に1台 |
67.4 |
68.4 |
68.5 |
70.3 |
60.3 |
2〜3人に1台 |
15.7 |
12.3 |
20.0 |
13.6 |
20.6 |
4〜5人に1台 |
4.8 |
− |
2.9 |
7.6 |
4.8 |
6人以上に1台 |
2.6 |
1.8 |
2.9 |
1.7 |
4.8 |
また、産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」で1人に1台以上パソコンを装備している企業の割合が88.9%と最も高く、「製造業」が86.9%とほぼ同率で続いている。ITシステム導入企業の割合が低かった「金融・保険業、不動産業」では、「1人に1台」と回答した企業の割合が21.7%と、他の産業と比べ3分の1程度しかなく、「2〜3人に1台」が43.5%、「4〜5人に1台」が34.8%あり、他の産業とはまったく傾向が異なっていた。
第18表 ホワイトカラー正社員に対するパソコン装備状況
[2]産業別
項目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給、水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
273社 |
29社 |
145社 |
18社 |
9社 |
49社 |
23社 |
1人に1台超 |
9.5% |
10.3% |
9.7% |
16.7% |
22.2% |
8.2% |
−% |
1人に1台 |
67.4 |
62.1 |
77.2 |
72.2 |
55.6 |
63.2 |
21.7 |
2〜3人に1台 |
15.7 |
27.6 |
9.7 |
11.1 |
22.2 |
14.3 |
43.5 |
4〜5人に1台 |
4.8 |
− |
0.7 |
− |
− |
8.2 |
34.8 |
6人以上に1台 |
2.6 |
− |
2.7 |
− |
− |
6.1 |
− |
3. IT化の進展に伴いホワイトカラー正社員に求められる能力〔第19・20表参照〕
業務のIT化が進展していく中で、企業が社員に必要と思われる能力はどのようなものかを例示のうえ複数回答で調査したところ、「コンピュータの基礎的な操作能力」が最も高く、回答のあった企業の94.1%で、以下「収集した情報の分析力」93.4%、「インターネットを利用した情報収集力」85.6%と続いている。最も低い割合であったのは、「ネットワーク構築等の高度な技術力」の21.8%で、その次に低かったのは「業務のIT化を構築できる技術力」の53.1%であった。ネットワークの構築等は、専門業者に外部委託で対応する方が合理的であり、社員にはそのような高度な能力は求めていないものと思われる。
さらに、今後必要と考えている能力のうち、重要と思われるものを3つ挙げてもらったところ、「収集した情報の分析力」が回答のあった企業の70.1%と最も高く、以下「創造力」43.6%、「論理展開力」33.7%と続き、必要と思われる能力で最も高い割合を占めていた「コンピュータの基礎的な操作能力」は33.0%であった。企業においては、コンピュータの操作は出来て当然であり、むしろ、集めた情報を分析し、なにが事業に結び付けられるかを考え、そのアイデアを実現させるための企画を練り上げることができるかといった現実的な能力が企業にとっていかに重要であるかということの現れであろう。
これを企業規模別にみると、「5千人以上」で「英語等日本語以外の語学力」が76.4%と他規模の企業が5割前後であるのと比べて高い比率となっているのが目立っている。産業のボーダレス化、グローバル化が唱えられて久しいが、大規模企業ほどその傾向が顕著ということであろう。
また、産業別にみるとITシステムの導入状況とも関連があるのか、「金融・保険業、不動産業」で「業務のIT化を構築できる技術力」が39.1%、「ネットワーク構築等の高度な技術力」が4.3%など、他産業と比べ低い比率となっている。また、「英語等日本語以外の語学力」についてみると、「金融・保険業、不動産業」が21.7%、「農林漁業、鉱業、建設業」が24.1%と2割台であったが、「製造業」では69.2%と7割近い割合になっていた。
第19表 IT化の進展に伴いホワイトカラー正社員に求められる能力
[1]企業規模別
(複数回答) |
項目\回答企業数\区分\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
271社 |
264社 |
55社 |
53社 |
35社 |
35社 |
118社 |
114社 |
63社 |
62社 |
コンピュータの基礎的な操作能力 |
94.1% |
33.0% |
89.1% |
32.1% |
97.1% |
22.9% |
94.9% |
37.7% |
95.2% |
30.6% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
66.1 |
11.4 |
72.7 |
15.1 |
71.4 |
11.4 |
63.6 |
12.3 |
61.9 |
6.5 |
インターネットを利用した情報収集力 |
85.6 |
31.4 |
87.3 |
30.2 |
85.7 |
31.4 |
83.9 |
24.6 |
87.3 |
45.2 |
収集した情報の分析力 |
93.4 |
70.1 |
98.2 |
67.9 |
97.1 |
85.7 |
90.7 |
69.3 |
92.1 |
64.5 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
53.1 |
18.9 |
56.4 |
13.2 |
51.4 |
11.4 |
55.9 |
21.1 |
46.0 |
24.2 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
21.8 |
2.7 |
25.5 |
− |
17.1 |
5.7 |
20.3 |
2.6 |
23.8 |
3.2 |
英語等日本語以外の語学力 |
54.2 |
19.7 |
76.4 |
24.5 |
57.1 |
17.1 |
46.6 |
18.4 |
47.6 |
19.4 |
論理展開力 |
66.8 |
33.7 |
81.8 |
35.8 |
80.0 |
45.7 |
69.5 |
36.0 |
41.3 |
21.0 |
創造力 |
73.4 |
43.6 |
81.8 |
50.9 |
74.3 |
28.6 |
74.6 |
46.5 |
63.5 |
40.3 |
第20表 IT化の進展に伴いホワイトカラー正社員に求められる能力
[2]産業別
(複数回答) |
項目\回答企業数\区分\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産 |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
該当 |
重要(3つ) |
271社 |
264社 |
29社 |
29社 |
143社 |
140社 |
18社 |
18社 |
9社 |
9社 |
49社 |
48社 |
23社 |
20社 |
コンピュータの基礎的な操作能力 |
94.1% |
33.0% |
100.0% |
34.5% |
94.4% |
25.7% |
88.9% |
44.4% |
88.9% |
55.6% |
91.8% |
35.4% |
95.7% |
55.0% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
66.1 |
11.4 |
65.5 |
13.8 |
70.6 |
10.7 |
66.7 |
22.2 |
77.8 |
− |
57.1 |
8.3 |
52.2 |
15.0 |
インターネットを利用した情報収集力 |
85.6 |
31.4 |
82.8 |
41.4 |
88.1 |
30.0 |
83.3 |
27.8 |
100.0 |
22.2 |
83.7 |
31.3 |
73.9 |
35.0 |
収集した情報の分析力 |
93.4 |
70.1 |
93.1 |
79.3 |
93.7 |
68.6 |
94.4 |
72.2 |
100.0 |
55.6 |
89.8 |
66.7 |
95.7 |
80.0 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
53.1 |
18.9 |
44.8 |
13.8 |
55.9 |
20.0 |
61.1 |
16.7 |
44.4 |
22.2 |
55.1 |
18.8 |
39.1 |
20.0 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
21.8 |
2.7 |
17.2 |
3.4 |
25.2 |
2.9 |
33.3 |
− |
11.1 |
− |
20.4 |
4.2 |
4.3 |
− |
英語等日本語以外の語学力 |
54.2 |
19.7 |
24.1 |
6.9 |
69.2 |
27.9 |
44.4 |
16.7 |
44.4 |
11.1 |
49.0 |
14.6 |
21.7 |
− |
論理展開力 |
66.8 |
33.7 |
58.6 |
24.1 |
72.7 |
36.4 |
50.0 |
22.2 |
66.7 |
44.4 |
63.3 |
39.6 |
60.9 |
20.0 |
創造力 |
73.4 |
43.6 |
72.4 |
37.9 |
76.2 |
50.0 |
72.2 |
44.4 |
77.8 |
44.4 |
69.4 |
35.4 |
65.2 |
25.0 |
4. ホワイトカラー正社員に現在不足している能力〔第21・22表参照〕
企業がホワイトカラー正社員に求めている能力は前記のとおりであるが、今在職している正社員については企業が必要と考えている能力のうち、どのような能力が不足していると考えられているのであろうか。また、年代によって不足している能力にも差があるものと思われることから、正社員を若年者層(入社後5年程度の者)、中堅者層(35歳前後の者)及び中高年者層(45歳以上の者)に分けて、不足していると思われる能力を3.と同じ項目で聞いてみた。
全体的な傾向として、「コンピュータの基礎的な操作能力」、「市販のソフトウェアを駆使できる能力」及び「インターネットを利用した情報収集力」等のコンピュータ操作に関しては、若年者層(2.7%、5.0%、7.0%)及び中堅者層(6.2%、15.8%、11.2%)ではさほど能力に不足を感じられていないが、中高年者層(52.3%、65.9%、58.7%)では回答企業の過半数の企業で不足感を抱いていた。コンピュータ技術の急速な発展に伴い、短期間で企業の情報化も図られたきたこととも関連してこのような結果になったものであろう。一方、「収集した情報の分析力」や「論理展開力」といったある程度の経験が必要とされる能力については、中高年者層(24.2%、15.2%)では不足と感じている企業の割合は低く、経験の浅い若年者層(58.1%、56.2%)では回答企業の過半数で不足感を示している。また、「英語等日本語以外の語学力」に関してはいずれの年代も5割を超える企業で不足を感じているものの、若年者層が51.2%、中堅者層が64.2%、中高年者層が70.1%と若い年代ほどその比率は低くなっていることが注目される。
第21表 ホワイトカラー正社員に現在不足している能力
[1]企業規模別
(複数回答) |
項目\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人以上 |
1・2千人以上 |
千人未満 |
若年者層(入社後5年) |
258社 |
50社 |
33社 |
112社 |
63社 |
  |
コンピュータの基礎的な操作能力 |
2.7% |
−% |
3.0% |
3.6% |
3.2% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
5.0 |
2.0 |
3.0 |
5.4 |
7.9 |
インターネットを利用した情報収集力 |
7.0 |
6.0 |
3.0 |
4.5 |
14.3 |
収集した情報の分析力 |
58.1 |
50.0 |
69.7 |
56.3 |
61.9 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
38.4 |
32.0 |
48.5 |
39.3 |
36.5 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
48.8 |
48.0 |
60.6 |
50.9 |
39.7 |
英語等日本語以外の語学力 |
51.2 |
44.0 |
54.5 |
49.1 |
58.7 |
論理展開力 |
56.2 |
56.0 |
57.6 |
54.5 |
58.7 |
創造力 |
40.3 |
34.0 |
51.5 |
40.2 |
39.7 |
特に不足しているところはない |
10.5 |
16.0 |
6.1 |
12.5 |
4.8 |
中堅者層(35歳前後) |
260社 |
50社 |
34社 |
113社 |
63社 |
  |
コンピュータの基礎的な操作能力 |
6.2% |
2.0% |
2.9% |
8.0% |
7.9% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
15.8 |
12.0 |
5.9 |
18.6 |
19.0 |
インターネットを利用した情報収集力 |
11.2 |
2.0 |
17.6 |
10.6 |
15.9 |
収集した情報の分析力 |
26.5 |
14.0 |
32.4 |
28.3 |
30.2 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
44.6 |
46.0 |
50.0 |
45.1 |
39.7 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
53.5 |
56.0 |
52.9 |
54.9 |
49.2 |
英語等日本語以外の語学力 |
64.2 |
62.0 |
73.5 |
60.2 |
68.3 |
論理展開力 |
23.8 |
14.0 |
23.5 |
27.4 |
25.4 |
創造力 |
29.2 |
22.0 |
32.4 |
35.4 |
22.2 |
特に不足しているところはない |
10.0 |
14.0 |
8.8 |
10.6 |
6.3 |
中高年者層(45歳以上) |
264社 |
51社 |
34社 |
116社 |
63社 |
  |
コンピュータの基礎的な操作能力 |
52.3% |
45.1% |
50.0% |
50.9% |
61.9% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
65.9 |
51.0 |
88.2 |
63.8 |
69.8 |
インターネットを利用した情報収集力 |
58.7 |
43.1 |
73.5 |
49.1 |
81.0 |
収集した情報の分析力 |
24.2 |
13.7 |
26.5 |
24.1 |
31.7 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
65.5 |
64.7 |
85.3 |
62.9 |
60.3 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
63.3 |
64.7 |
76.5 |
59.5 |
61.9 |
英語等日本語以外の語学力 |
70.1 |
68.6 |
79.4 |
69.0 |
68.3 |
論理展開力 |
15.2 |
7.8 |
11.8 |
16.4 |
20.6 |
創造力 |
37.1 |
33.3 |
32.4 |
40.5 |
36.5 |
特に不足しているところはない |
3.8 |
5.9 |
− |
4.3 |
3.2 |
第22表 ホワイトカラー正社員に現在不足している能力
[2]産業別
(複数回答) |
項目\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
若年者層(入社後5年) |
258社 |
28社 |
135社 |
16社 |
9社 |
48社 |
22社 |
  |
コンピュータの基礎的な操作能力 |
2.7% |
−% |
1.5% |
−% |
−% |
8.3% |
4.5% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
5.0 |
3.6 |
3.7 |
− |
− |
12.5 |
4.5 |
インターネットを利用した情報収集力 |
7.0 |
7.1 |
3.7 |
− |
22.2 |
14.6 |
9.1 |
収集した情報の分析力 |
58.1 |
57.1 |
60.7 |
37.5 |
66.7 |
56.3 |
59.1 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
38.4 |
35.7 |
35.6 |
31.3 |
33.3 |
47.9 |
45.5 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
48.8 |
46.4 |
45.9 |
43.8 |
77.8 |
54.2 |
50.0 |
英語等日本語以外の語学力 |
51.2 |
57.1 |
54.1 |
25.0 |
55.6 |
52.1 |
40.9 |
論理展開力 |
56.2 |
53.6 |
52.6 |
37.5 |
88.9 |
70.8 |
50.0 |
創造力 |
40.3 |
32.1 |
41.5 |
43.8 |
66.7 |
37.5 |
36.4 |
特に不足しているところはない |
10.5 |
10.7 |
11.1 |
25.0 |
− |
6.3 |
9.1 |
中堅者層(35歳前後) |
260社 |
28社 |
136社 |
16社 |
9社 |
48社 |
23社 |
|
コンピュータの基礎的な操作能力 |
6.2% |
−% |
2.9% |
6.3% |
−% |
14.6% |
17.4% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
15.8 |
7.1 |
12.5 |
6.3 |
11.1 |
29.2 |
26.1 |
インターネットを利用した情報収集力 |
11.2 |
7.1 |
9.6 |
6.3 |
11.1 |
10.4 |
30.4 |
収集した情報の分析力 |
26.5 |
25.0 |
26.5 |
25.0 |
22.2 |
27.1 |
30.4 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
44.6 |
50.0 |
37.5 |
43.8 |
44.4 |
58.3 |
52.2 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
53.5 |
53.6 |
49.3 |
37.5 |
100.0 |
64.6 |
47.8 |
英語等日本語以外の語学力 |
64.2 |
67.9 |
68.4 |
43.8 |
77.8 |
60.4 |
52.2 |
論理展開力 |
23.8 |
17.9 |
24.3 |
12.5 |
22.2 |
31.3 |
21.7 |
創造力 |
29.2 |
32.1 |
294 |
12.5 |
55.6 |
35.4 |
13.0 |
特に不足しているところはない |
10.0 |
10.7 |
8.1 |
25.0 |
− |
8.3 |
17.4 |
中高年者層(45歳以上) |
264社 |
28社 |
138社 |
17社 |
9社 |
49社 |
23社 |
|
コンピュータの基礎的な操作能力 |
52.3% |
50.0% |
50.0% |
35.3% |
44.4% |
53.1% |
82.6% |
市販のソフトウェアを駆使できる能力 |
65.9 |
53.6 |
68.1 |
47.1 |
77.8 |
67.3 |
73.9 |
インターネットを利用した情報収集力 |
58.7 |
53.6 |
59.4 |
41.2 |
66.7 |
59.2 |
69.6 |
収集した情報の分析力 |
24.2 |
35.7 |
21.7 |
11.8 |
33.3 |
26.5 |
26.1 |
業務のIT化を構築できる技術力 |
65.5 |
75.0 |
63.0 |
64.7 |
66.7 |
69.4 |
60.9 |
ネットワーク構築等の高度な技術力 |
63.3 |
71.4 |
58.7 |
64.7 |
100.0 |
67.3 |
56.5 |
英語等日本語以外の語学力 |
70.1 |
67.9 |
75.4 |
58.8 |
66.7 |
67.3 |
56.5 |
論理展開力 |
15.2 |
14.3 |
14.5 |
5.9 |
11.1 |
22.4 |
13.0 |
創造力 |
37.1 |
50.0 |
35.5 |
17.6 |
55.6 |
40.8 |
30.4 |
特に不足しているところはない |
3.8 |
3.6 |
2.2 |
17.6 |
− |
4.1 |
4.3 |
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
「千人未満」及び「3・4千人台」の企業では全体的にみてホワイトカラー正社員の能力が不足していると感じている企業の割合が高く、具体的には「千人未満」では若年者層で「インターネットを利用した情報収集力」が14.3%と他規模企業に比し8〜11ポイント高くなっており、逆に「特に不足しているところはない」は最も低い割合となっているほか、中高年者層でも「インターネットを利用した情報収集力」が81.0%と非常に高い割合となっている。「3・4千人台」の企業でも各年代を通じて他規模企業よりも高い比率となっている項目が多く、「特に不足しているところはない」と回答した企業の割合は低く、中高年者層に至っては無となっている。
なお、「5千人以上」の企業では逆にホワイトカラー正社員の能力が不足していると感じている企業の割合は低い傾向にあり、この傾向は特に「中高年者層」のパソコンの操作能力等に顕著である。この要因としては、「5千人以上」の大規模企業では比較的早期にITシステムが導入されるなど、日々の業務に際してパソコンを使用することがかなり浸透しているといったことが考えられる。
イ 産業別
「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」ではホワイトカラー正社員の能力不足を感じている企業の割合は低く、「運輸・通信業」で能力不足を感じている企業の割合が高い。具体的には、「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」でコンピュータ操作関係の能力に不足を感じている企業の割合は若年者層ではまったくなく、中堅者層でもすべてが6.3%と10%を割っており、中高年者層では唯一コンピュータ操作関係の能力すべての項目で5割を切っている。また、「特に不足しているところはない」も若年者層及び中堅者層ではともに25.0%と回答企業の4分の1に達し、中高年者層では17.6%と2割近い比率となっているほか、いずれの年代についても他の産業に比べ不足感を抱く企業の割合が低い傾向となっている。回答企業数の最も多い「製造業」についてみると、「英語等日本語以外の語学力」で各年代ともに全産業計の割合よりも高くなっているほかはおおむね全産業計よりも低い傾向にあった。
なお、「運輸・通信業」についてみると回答企業数は少ないものの、若年者層でみると「コンピュータの基礎的な能力」や「市販のソフトウェアを駆使できる能力」は十分としながらも「インターネットを利用した情報収集力」が22.2%と2割を超えているほか、「論理展開力」(88.9%)など他の産業よりかなり高い比率となっている項目も多くみられる。また、「ネットワーク構築等の高度な技術力」については若年者で77.8%、中堅者層及び中高年者ではいずれも100.0%と回答企業のすべてが能力不足としており、「特に不足しているところはない」と回答した企業はいずれの年代についてもなかった。通信業ではIT技術の急速な発展に伴い事業内容そのものがIT関連事業にシフトしてきており、従業員に対する要求水準自体が他の産業よりも高いことが想定されることから、このような評価に繋がったものと思われる。
また、コンピュータ操作関係の能力に絞ってみると、「卸売・小売業、飲食店」では中高年者では全体的な傾向と同様となっているものの、若年者層及び中堅者層でコンピュータ操作関係の能力で不足を感じている企業の割合が高く、「金融・保険業、不動産業」では若年者層ではさほどではないが、中堅者層及び中高年者層で高い比率となっているのが目立っている。
5. IT化対応への支援策〔第23・24表参照〕
先にみたように、今日の企業活動にとってITシステムの導入は当然のような形となっている中で、その操作能力に不足を感じられる社員の存在もまた明らかとなったところである。せっかくのITシステムを有効に活用するためにも、企業ではそのような社員の能力向上に資するための施策が講じられているのではないだろうか。そこで、IT化に対応した支援策の有無及びその内容を調査した。その結果、特段の施策を「講じていない」企業の割合が28.3%と3割弱であり、残りの7割以上の企業では何らかの支援策をとっている模様である。その内容について複数回答で聞いたところ、「社内で集合研修の実施」が80.5%と最も高く、次いで「各セクションに指導責任者の配置」が40.5%となっており、その他は10%以下と低い割合となっている。
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
支援策を講じている企業の割合については、「5千人以上」では86.0%と9割近くとなっているが、「千人未満」では52.4%とかろうじて過半数となるなど規模の大きい企業ほどその割合が高かった。内容については、「千人未満」で「社内で集合研修の実施」の割合が69.7%と他規模企業と比べ低いが、「各セクションに指導責任者の配置」は45.5%と5割近い割合になっている。また、「3・4千人台」及び「1・2千人台」の企業で「各セクションに指導責任者の配置」が27.6%、31.0%と3割前後で比較的低いことが目立っている。
第23表 IT化対応への支援策の有無及び内容
[1]企業規模別
(内容は複数回答) |
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
272社 |
57社 |
35社 |
117社 |
63社 |
講じている |
71.7% |
86.0% |
82.9% |
71.8% |
52.4% |
  |
各セクションに指導責任者の配置 |
40.5 |
61.2 |
27.6 |
31.0 |
45.5 |
社内で集合研修の実施 |
80.5 |
85.7 |
86.2 |
79.8 |
69.7 |
パソコン等の購入資金援助 |
4.6 |
2.0 |
3.4 |
6.0 |
6.1 |
専門学校等社外での学習資金援助 |
10.3 |
10.2 |
10.3 |
9.5 |
12.1 |
その他 |
7.2 |
4.1 |
6.9 |
7.1 |
12.1 |
講じていない |
28.3 |
14.0 |
17.1 |
28.2 |
47.6 |
イ 産業別
支援策を講じている企業の割合については、「金融・保険業、不動産業」が86.4%と最も高く、以下「農林漁業、鉱業、建設業」の75.9%、「卸売・小売業、飲食店」73.5%の順で高かった。最も回答企業数の多かった「製造業」は69.0%と7割を切っており、「運輸・通信業」は55.6%とようやく過半数に達していた。次に内容についてみると、最も支援策を講じている企業の割合が高かった「金融・保険業、不動産業」では「各セクションに指導責任者の配置」は21.1%と低い一方で、「パソコン等の購入資金援助」及び「専門学校等社外での学習資金援助」がともに15.8%と他産業に比べ高い割合であった。「卸売・小売業、飲食店」でも「各セクションに指導責任者の配置」の比率が13.9%と低く、「社内で集合研修の実施」は88.9%であった。
また、「運輸・通信業」では回答企業数は少ないが、「各セクションに指導責任者の配置」が80.0%、「社内で集合研修の実施」が40.0%と全体的な傾向とまったく異なっていた。これは当該産業の業務に必要な技術がIT技術そのものであることから、集合研修という形態よりも、業務に必要な技術について個々のセクションごとで指導を行った方が効率的ということであろう。
第24表 IT化対応への支援策の有無及び内容
[2]産業別
(内容は複数回答) |
項目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建築業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
272社 |
29社 |
145社 |
18社 |
9社 |
49社 |
22社 |
講じている |
71.7% |
75.9% |
69.0% |
72.2% |
55.6% |
73.5% |
86.4% |
  |
各セクションに指導責任者の配置 |
40.5 |
54.5 |
48.0 |
46.2 |
80.0 |
13.9 |
21.1 |
社内で集合研修の実施 |
80.5 |
81.8 |
80.0 |
84.6 |
40.0 |
88.9 |
73.7 |
パソコン等の購入資金援助 |
4.6 |
4.5 |
3.0 |
− |
- |
5.6 |
15.8 |
専門学校等社外での学習資金援助 |
10.3 |
− |
12.0 |
− |
40.0 |
8.3 |
15.8 |
その他 |
7.2 |
− |
10.0 |
7.7 |
20.0 |
5.6 |
  |
講じていない |
28.3 |
24.1 |
31.0 |
27.8 |
44.4 |
26.5 |
13.6 |
6. 業務のIT化による人事施策への影響〔第25・26表参照〕
IT化の進展に伴い、企業における人事施策に影響はあったのであろうか。複数回答で聞いてみたところ、「特に影響はない」と回答した企業の割合が40.4%と4割を超えており、業務のIT化による人事施策への影響は少ないものといえる。次にどのような面で人事施策に影響があったのかについてみると、「新卒者の採用募集に影響があった」と回答した企業が回答企業全体のほぼ半数の49.4%で最も高かった。以下「中途採用者の募集に影響があった」が24.0%、「人事配置・異動に影響があった」が15.0%の順で続いていたが、その他では業務のIT化による人事施策への影響はあまり感じられていないようである。このように社員の採用募集についての影響を挙げた企業が多かったが、これはその募集過程の変化が大きいのではないだろうか。すなわち、かつての社員募集方法の主流は大学の就職課等に対する求人票の送付、就職情報誌への広告掲載などであり、就職希望者はそれらの情報をもとに資料請求を企業に対して行うといった形であったものが、現在は就職希望者がインターネット上で企業に直接登録を行い、その後企業側からエントリーシートや会社説明会の案内等が送られるといった形が主流となっている。このような変化が、業務のIT化による影響で社員の採用募集を挙げた企業が多かった要因なのではないかと推測される。
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
「千人未満」の企業で「新卒者の採用募集に影響があった」が37.1%と唯一5割を割っているのが目立つ。また、「5千人以上」の大規模企業では「特に影響はない」と回答した企業の割合が30.9%にとどまり、影響を感じている企業の割合が7割近くあった。
第25表 業務のIT化による人事施策への影響
[1]企業規模別
(複数回答) |
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
267社 |
55社 |
34社 |
116社 |
62社 |
新卒者の採用募集に影響があった |
0.5 |
0.5 |
0.6 |
0.5 |
0.4 |
中途採用者の募集に影響があった |
24.0 |
32.7 |
11.8 |
24.1 |
22.6 |
昇進・昇格制度に影響があった |
3.0 |
3.6 |
2.9 |
3.4 |
1.6 |
賃金制度に影響があった |
2.6 |
1.8 |
2.9 |
3.4 |
1.6 |
人事配置・異動に影響があった |
15.0 |
23.6 |
17.6 |
8.6 |
17.7 |
その他 |
4.1 |
10.9 |
2.9 |
2.6 |
1.6 |
特に影響はない |
40.4 |
30.9 |
38.2 |
42.2 |
46.8 |
イ 産業別
「運輸・通信業」で回答企業数は少ないものの、「特に影響はない」と回答した企業は33.3%と回答企業の3分の1であり、影響があったとする企業のすべてにあたる66.7%が「新卒者の採用募集に影響があった」と回答している。この産業ではITそのものが商品でもあることから、このような結果になったものであろうか。一方、「農林漁業、鉱業、建設業」で「特に影響はない」とする企業の割合が58.6%と6割近くに達し、「新卒者の採用募集に影響があった」も27.6%と唯一3割を切るなど業務のIT化による人事施策への影響は少なかったようである。
第26表 業務のIT化による人事施策への影響
[2]産業別
(複数回答) |
項目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売り・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
267社 |
29社 |
140社 |
17社 |
9社 |
49社 |
23社 |
新卒者の採用募集に影響があった |
49.4% |
27.6% |
54.3% |
52.9% |
66.7% |
46.9% |
43.5% |
中途採用者の募集に影響があった |
24 |
6.9 |
30 |
41.2 |
22.2 |
14.3 |
17.4 |
昇進・昇格制度に影響があった |
3 |
− |
2.9 |
11.8 |
11.1 |
2 |
− |
賃金制度に影響があった |
2.6 |
− |
2.1 |
11.8 |
− |
4.1 |
− |
人事配置・異動に影響があった |
15 |
13.8 |
16.4 |
5.9 |
33.3 |
16.3 |
4.3 |
その他 |
4.1 |
− |
5 |
17.6 |
− |
− |
4.3 |
特に影響はない |
40.4 |
58.6 |
35.7 |
35.3 |
33.3 |
42.9 |
47.8 |
7. IT化に追いついていけない社員
IT化の進展により、日々の仕事にもコンピュータはもはや欠かせない存在であることは明らかであるが、一方で4.でみたように年代によってはコンピュータの操作能力の不足が感じられている実態もある。このような背景のもとで、企業における人事施策の新たな課題として、コンピュータ操作に不安を感じている者の勤労意欲の維持・向上ということが考えられるのではないだろうか。そこで、業務のIT化に追いついていけない社員の有無、勤労意欲向上のための人事施策について聞いてみた。
(1) 有無と年代〔第27・28表参照〕
まず、業務のIT化に追いついていけない社員の有無についてみると、「いる」と回答した企業の割合は回答企業の80.3%で8割を超える企業で存在するという実態が明らかとなった。次にどの年代の社員でそのように感じられるのかを聞いたところ、パソコンの操作能力等で不足感を感じられている「中高年者層」がやはり圧倒的に多く、IT化に追いつけない社員がいると回答した企業の99.5%とほぼ全てという結果であった。
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
有無については、「千人未満」の企業で「いる」と回答した企業の割合が88.9%と9割近くであったのに対し「5千人以上」では70.4%であり、企業規模が大きいほど比率はその低く、小さくなるほど高いという傾向にあった。
年代については、「中高年者層」と回答した企業の割合が「1・2千人台」で98.9%だったほかは全て100.0%となっていた。また、「5千人以上」の企業で「若年者層」と回答した企業が2.6%あったのが注目される。
第27表 IT化に追いついていけない社員の有無とその年代
[1]企業規模別
(年代は複数回答) |
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
269社 |
54 |
35 |
117 |
63 |
いる |
80.3% |
70.4% |
77.1% |
81.2 |
88.9% |
  |
若年者層 |
0.5 |
2.60 |
− |
− |
− |
中堅者層 |
2.8 |
− |
3.7 |
4.2 |
1.8 |
中高年者層 |
99.5 |
100.0 |
100.0 |
98.9 |
100.0 |
いない |
19.7 |
29.6 |
22.9 |
18.8 |
11.1 |
イ 産業別
有無については、「いる」と回答した企業の割合が最も高かったのは「金融・保険業、不動産業」で87.0%であり、最も割合の低かった「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」の58.8%に比べ18.2ポイントの差であった。ITシステムの導入状況が最も進んでいた「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」ではIT化に追いついていけない社員がいるとする企業の割合が低く、逆に最も導入状況の低かった「金融・保険業、不動産業」で追いつけない社員がいる企業の割合が高いという興味深い結果であった。
年代については、「中高年者層」と回答した企業の割合が「農林漁業、鉱業、建設業」で95.2%だったほかは全て100.0%となっており、「若年者層」と回答したのは「製造業」のみであった。
第28表 IT化に追いついていけない社員の有無とその年代
[2]産業別
(年代は複数回答) |
項目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
269社 |
29社 |
142社 |
17社 |
9社 |
49社 |
23社 |
いる |
80.3% |
72.4% |
83.8% |
58.8% |
77.8% |
79.6% |
87.0% |
  |
若年者層 |
0.5 |
- |
0.8 |
- |
- |
- |
- |
中堅者層 |
2.8 |
4.8 |
2.5 |
- |
- |
2.6 |
5.0 |
中高年者層 |
99.5 |
95.2 |
100.0 |
100.0 |
100.0 |
100.0 |
100.0 |
いない |
19.7 |
27.6 |
16.2 |
41.2 |
22.2 |
20.4 |
13.0 |
(2) 勤労意欲の維持・向上のための施策〔第29・30表参照〕
IT化に追いついていけない社員の勤労意欲の維持・向上のために何らかの施策を講じているのかを聞いたところ、「特に行っていない」と回答した企業の割合は67.1%と7割近くあったが、これを勤労意欲が減退している社員はいないとみるのか、文字どおり特段の措置を講じていないとみるのかは意見の分かれるところかもしれない。その内容をみると、回答企業の割合が最も高かった「自己啓発資金の援助」でも15.3%であり、「本人の得意とする部署への人事異動」は9.7%と1割程度に留まっている。この回答結果をみる限りにおいては、企業における業務のIT化への移行段階は既に完了しており、パソコンの操作等に不安を覚える社員に対しては企業として特段の措置を講ずることはせず、不足している部分は自分で補おうとする社員には支援をするということであろう。
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
「特に講じていない」と回答した企業の割合をみると、「5千人以上」で55.3%と最も低く、規模が小さくなるにしたがってその割合は高くなる傾向にあった。施策の内容については、「カウンセリングの実施」を行っている企業は3千人未満の企業のみであった。「本人の得意とする部署への人事異動」は「5千人以上」の企業で15.8%、「3・4千人台」の企業で14.8%と10%を超えていた。
第29表 IT化に追いついていけない社員の勤労意欲向上のための施策
[1]企業規模別
(複数回答) |
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
216社 |
38社 |
27社 |
95社 |
56社 |
カウンセンリングの実施 |
2.3% |
−% |
−% |
3.2% |
3.6% |
本人の得意とする部署への人事
異動 |
9.7 |
15.8 |
14.8 |
6.3 |
8.9 |
自己啓発資金の援助 |
15.3 |
10.5 |
22.2 |
15.8 |
14.3 |
その他 |
6.9 |
18.4 |
7.4 |
5.3 |
1.8 |
特に行っていない |
67.1 |
55.3 |
59.3 |
71.6 |
71.4 |
イ 産業別
「特に講じていない」と回答した企業の割合をみると、回答企業数は少ないが「運輸・通信業」が57.1%と最も低く、「農林漁業、鉱業、建設業」が85.7%と最も高かった。「本人の得意とする部署への人事異動」で最も比率の高かったのは「金融・保険業、不動産業」の20.0%であったが、この産業はITシステムの導入状況が最も低かった産業であったこととも関係しているのであろうか。「自己啓発資金の援助」については「製造業」で21.0%と2割を超える企業で回答していた。
第30表 IT化に追いついていけない社員の勤労意欲向上のための施策
[2]産業別
(複数回答) |
項 目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
216社 |
21社 |
119社 |
10社 |
7社 |
39社 |
20社 |
カウンセンリングの実施 |
2.3% |
4.8% |
1.7% |
−% |
−% |
2.6% |
5.0% |
本人の得意とする部署への人事
異動 |
9.7 |
4.8 |
9.2 |
10.0 |
14.3 |
7.7 |
20.0 |
自己啓発資金の援助 |
15.3 |
4.8 |
21.0 |
10.0 |
14.3 |
7.7 |
10.0 |
その他 |
6.9 |
− |
9.2 |
− |
28.6 |
− |
10.0 |
特に行っていない |
67.1 |
85.7 |
61.3 |
80.0 |
57.1 |
76.9 |
60.0 |