第2部 調査結果の分析
I 就業・雇用数の動向
本年も昨年に引き続き、就業・雇用数の動向を10月1日現在で調査した。政府の度重なる景気回復策を講じているにもかかわらず、我が国の経済は一向に立ち直る気配がみられず、ついに総務省の労働力調査による平成13年12月期の完全失業率は5.6%に達し、過去最悪の数値となった。このような状況下において、各企業における雇用情勢はここ数年一進一退で推移してきており、本年の調査結果においても、今後も当面は同様な状態が続くものと思われる。
1. 常用雇用者の増減状況
(1) 常用雇用者の過去1年間の増減状況〔第1〜3表参照〕
平成12年10月から平成13年9月までの1年間における常用雇用者の増減をみると、「増やした」と回答した企業の割合は9.1%で昨年調査の5.5%、一昨年の6.9%と比べ、それぞれ3.6ポイントないし2.2ポイントの増加となっている。この割合は昨年の調査で「増やす方向」と回答した企業の割合が7.9%と一昨年の数値を2.4ポイント上回っていたが、これとほぼ見合う形となっていた。一方、「減らした」と回答した企業の割合は61.0%で、昨年調査の64.5%、一昨年調査の65.0%に比しそれぞれ3.5ポイントないし4.0ポイントの減少となっており、この数値をみる限りにおいてではあるが、企業における常用雇用者の雇用情勢はこの1年間については良好であったようにも見受けられる(ただし、本調査は、企業単位で調査しているものであって、調査に該当する雇用労働者数を直接対象としたものではなく、その数値はあくまでも調査に該当する企業の割合を示しているものであるので、念のため記しておく。)が、昨年調査で「圧縮必要」と回答した企業の割合が54.6%であったのに比べ、この1年間で常用雇用者を「減らした」と回答した企業の割合は61.0%と6.4ポイント高くなっていることをみると、企業における常用雇用者の雇用情勢は未だ予断を許さない状況といえる。
第1表 常用雇用者の過去1年間の増減状況及び今後の増減方向(総括表)
項目\回答企業数\調査年 |
平成13年 |
平成12年 |
平成11年 |
274社 |
290社 |
363社 |
275 |
291 |
363 |
増やした |
9.1% |
5.5% |
6.9% |
(増やす方向) |
6.2 |
7.9 |
5.5 |
おおむね変わらない |
29.9 |
30.0 |
28.1 |
(変わらない方向) |
30.2 |
37.5 |
30.3 |
減らした |
61.0 |
64.5 |
65.0 |
(圧縮必要) |
63.6 |
54.6 |
64.2 |
(注)上段は過去1年間の増減を、下段は今後の増減方法を示す。
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
過去1年間に常用雇用者を「増やした」とする企業は、「5千人以上」で7%(昨年4%)、「1・2千人台」が15%(同6%)で、それぞれ昨年と比べると概ね2倍に増加しているが、「千人未満」では5%(同4%)と昨年とほぼ変わらなく、「3・4千人台」では無(同8%)と昨年に比し落ち込んでいる。しかし、全体としては前記のように9.1%で昨年の5.5%より3.6ポイント増加した結果となっている。
一方、「減らした」とする企業は、「5千人以上」で67%(昨年80%)、「3・4千人台」が69%(同74%)、「1・2千人台」が55%(同58%)でいずれも昨年よりも3〜13ポイント減っている(「千人未満」は62%で、昨年とまったく同数値。)。
このように、「5千人以上」の規模の大企業では「減らした」とする企業の割合が減り、その分「おおむね変わらない」あるいは「増やした」に移行しており、この1年間における常用雇用者の雇用情勢は良好であったように見受けられる。この傾向は、「1・2千人台」の企業についても同様なことがいえるが、「3・4千人台」の企業については、「減らした」とする企業の割合は69%で昨年に比し5ポイント減少しているが、「増やした」とする企業が昨年は8%あったのに対し本年はなく、その分「おおむね変わらない」とする企業の割合が増加しており、これらの数値をみる限り「3・4千人台」の規模の企業については、雇用状況が固定化に向かっているように見受けられる。「千人未満」の規模の企業では昨年とほぼ同様の状況が続いていた。
第2表 常用雇用者の過去1年間の増減状況及び今後の増減方向
[1]企業規模別
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
274(290)社 |
57(44)社 |
35(39)社 |
118(130)社 |
64(77)社 |
275(291) |
57(44) |
36(39) |
118(131) |
64(77) |
増やした |
9.1( 5.5)% |
7( 4)% |
−( 8)% |
15( 6)% |
5( 4)% |
(増やす方向) |
6.2( 7.9) |
4( 9) |
3( 8) |
11( 7) |
1( 8) |
おおむね変わらない |
29.9(30.0) |
26(16) |
31(18) |
30( 36) |
33(34) |
(変わらない方向) |
30.2(37.5) |
26(20) |
14(28) |
31( 43) |
41(43) |
減らした |
61.0(64.5) |
67(80) |
69(74) |
55( 58) |
62(62) |
(圧縮必要) |
63.6(54.6) |
70(71) |
83(64) |
58( 50) |
58(49) |
(注)1.上段は過去1年間の増減を、下段は今後の増減方向を示す。
2.( )内の数字は、平成12年の調査結果を示す。
イ 産業別
産業別についてみても、常用雇用者を「増やした」とする企業は、どの産業についても昨年の割合と同率か、あるいは昨年を上回る比率となっている。特に「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」では、昨年は「増やした」とする企業はなかったのに対し、本年調査では一気に33%と大幅に増加し、反面「減らした」とする企業は昨年56%であったのに対し、本年調査では39%と減少しており、これらの産業についての雇用情勢は上向いたように思われる。同じような傾向は「運輸・通信業」にもみられた。
一方、「金融・保険業、不動産業」については、「増やした」とする企業が9%(昨年無)と増えているが、「おおむね変わらない」とする企業が18%と昨年調査の35%から減少し、「減らした」とする企業は昨年の65%から本年は73%と増加しており、これら産業にあっては企業ごとによる差が大きく、雇用情勢は不安定なものとなっているといえよう。その他の産業については、昨年調査とほぼ同様な結果となっている。
第3表 常用雇用者の過去1年間の増減状況及び今後の増減方向
[2]産業別
項目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製 造 業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
274(290)社 |
29(31)社 |
147(156)社 |
18(16)社 |
49(44)社 |
22(31)社 |
275(291) |
29(31) |
147(156) |
18(16) |
49(45) |
23(31) |
増やした |
9.1( 5.5)% |
4( 3)% |
5( 5)% |
33(−)% |
16(16)% |
9(−)% |
(増やす方向) |
6.2( 7.9) |
3(10) |
1( 6) |
28(−) |
16(18) |
4( 6) |
おおむね変わらない |
29.9(30.0) |
24(26) |
35( 30) |
28(44) |
27(29) |
18(35) |
(変わらない方向) |
30.2(37.5) |
28(29) |
29( 38) |
33(50) |
35(33) |
17(42) |
減らした |
61.0(64.5) |
72(71) |
60( 65) |
39(56) |
57(55) |
73(65) |
(圧縮必要) |
63.6(54.6) |
69(61) |
70( 56) |
39(50) |
49(49) |
79(52) |
(注)1.上段は過去1年間の増減を、下段は今後の増減方向を示す。
2.( )内の数字は、平成12年の調査結果を示す。
(2) 常用雇用者の今後の増減方向〔第1〜3表参照〕
昨年に引き続き本年も今後の常用雇用者の増減見込みを聞いた。その結果、常用雇用者を今後「増やす方向」と回答した企業の割合は6.2%であり、昨年調査の7.9%に比べ1.7ポイントの減少となっている。一方、「圧縮必要」とする企業は63.6%であり、昨年の54.6%に比し9.0ポイント増加するといったように、一昨年から昨年に掛けての傾向とはまったく異なった形となっていた。景気後退の流れに一向に歯止めが利かない状況の中、昨年末から相次いで大手企業で従業員の大幅な削減方針が打ち出されるなど雇用情勢に再び陰りがみえてきており、連合や日経連などでも、今春闘に向けての最優先課題としてワークシェアリングも見据えた雇用の維持を掲げるなど、常用雇用者の雇用情勢は再び厳しい局面に立たされたものといえよう。 これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
今後常用雇用者を「増やす方向」とする企業の割合が昨年よりも増加したのは、「1・2千人台」の規模の企業で11%(昨年7%)と2桁台となっているが、他の規模の企業ではすべて1桁台の割合であり、昨年よりも減少している。一方、「圧縮必要」の企業は、「5千人以上」の企業では70%で昨年の71%とほぼ同数値で変わらないが、「3・4千人台」の企業では83%とその割合は高く、昨年の64%よりも19ポイントも増加し、「1・2千人台」、「千人未満」の企業においてもともに58%と5割を大きく超え、昨年よりも10ポイント近く増加している。企業規模5千人未満の企業では、長引く景気の低迷感が雇用情勢に与える影響が大きいことが伺える。
イ 産業別
産業別では、「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」で今後常用雇用者を「増やす方向」と回答した企業が28%と昨年の無から大幅に増加しているのが目立つ一方で、「圧縮必要」と回答している産業は「金融・保険業、不動産業」の79%(昨年調査52%)を筆頭に、「製造業」が70%(同56%)、「農林漁業、鉱業、建設業」が69%(同61%)と昨年を大幅に上回っており、産業による雇用情勢の差が大きく感じられる。
2. 非常用雇用者の増減状況
長期にわたる不況により、企業の経営環境は非常に厳しい状況が続いている中、多くの企業は人員削減を含めたリストラクチャリングによる人件費コストの削減を余儀なくされている。従って、前記のように各企業とも雇用調整が行われ常用雇用者の削減を進めるとともに、必要に応じコストの低い非常用雇用者(パートタイマー、派遣社員等)を活用する企業が多くなってきている。このような状況を踏まえ、本年も昨年に引き続いて各企業における非常用雇用者の増減状況について調査した。
(1) 非常用雇用者の過去1年間の増減状況〔第4〜6表参照〕
常用雇用者と同様に平成12年10月から平成13年9月までの1年間における非常用雇用者の増減をみると、「増やした」と回答した企業の割合は28.8%で昨年の29.9%に比し1.1ポイントの減少となっているが、一昨年の21.8%からみれば7.0ポイントの増加となっている。一方、「減らした」と回答した企業の割合は21.8%で昨年の18.8%に比し3.0ポイントの増加となっているが、一昨年の31.5%からみれば9.7ポイントの減少となっている。いずれにしても全体的にみれば、一昨年から昨年に掛けての傾向とは異なっているものの、昨年とほぼ同程度の割合で推移しており、非常用雇用者の雇用状況は安定しているように見受けられる。
第4表 非常用雇用者の過去1年間の増減状況及び今後の増減方法(総括表)
項目\調査年 |
平成13年 |
平成12年 |
平成11年 |
  |
回答企業数 |
271社 |
288社 |
362社 |
過去1年間 |
増やした |
28.8% |
29.9% |
21.8% |
おおむね変わらない |
43.9 |
45.1 |
41.7 |
減らした |
21.8 |
18.8 |
31.5 |
1年前はいたが現在はいない |
− |
0.3 |
0.3 |
もとからいない |
5.5 |
5.9 |
4.7 |
  |
回答企業数 |
269社 |
290社 |
363社 |
今後の方向 |
増やす方向 |
26.0% |
29.3% |
26.7% |
変わらない方向 |
41.3 |
48.3 |
46.0 |
圧縮必要 |
25.3 |
15.5 |
22.9 |
なくす方向 |
1.8 |
0.7 |
− |
現在はいないが採用する方向 |
0.4 |
0.7 |
0.3 |
現在もいないが、今後も採用しない方向 |
5.2 |
5.5 |
4.1 |
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
企業規模別にみると、「増やした」とする企業は「5千人以上」の企業で34%と昨年の26%より8ポイント唯一増加しており、「3・4千人台」が26%(昨年36%)、「1・2千人台」が32%(同34%)、「千人未満」が19%(同22%)といずれも昨年より減少している。一方、「減らした」とする企業は、「千人未満」で24%と昨年の25%と比べ僅かながら減少したのに留まり、千人以上の企業ではいずれも増加している。特に「5千人以上」の企業では27%と昨年の12%を15ポイント大幅に増加している。
このように企業規模別についてみると、「5千人以上」の大企業は、非常用雇用者を「増やした」企業と「減らした」企業とに分散しており、企業により明暗がはっきりしているが、その他の規模の企業では、いずれも「増やした」とする企業の割合は昨年より減少しており、逆に「減らした」とする企業の割合は増加していることから、これらの企業では非常用雇用者を巡っても消極的な雇用情勢となっている。
第5表 非常用雇用者の過去1年間の増減状況及び今後の増減方向
[1]企業規模別
項目\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千 人 未 満 |
  |
回答企業数 |
271(288)社 |
56(43)社 |
34(39)社 |
119(130)社 |
62(76)社 |
過去1年間 |
増やした |
28.8(29.9)% |
34(26)% |
26(36)% |
32(34)% |
19(22)% |
おおむね変わらない |
43.9(45.1) |
39(60) |
47(39) |
45(44) |
44(42) |
減らした |
21.8(18.8) |
27(12) |
21(15) |
19(18) |
24(25) |
1年前はいたが現在はいない |
−(0.3) |
−(−) |
−(−) |
−(1) |
−(−) |
もとからいない |
5.5(5.9) |
−(2) |
6(10) |
4(3) |
13(11) |
  |
回答企業数 |
269(290)社 |
55(43)社 |
34(39)社 |
119(131)社 |
61(77)社 |
今後の方向 |
増やす方向 |
26.0(29.3)% |
27(30)% |
38(36)% |
30(31)% |
10(22)% |
変わらない方向 |
41.3(48.3) |
40(54) |
32(41) |
40(48) |
49(50) |
圧縮必要 |
25.3(15.5) |
27(14) |
24(13) |
24(16) |
27(17) |
なくす方向 |
1.8(0.7) |
6(−) |
−(−) |
1(1) |
2(1) |
現在はいないが採用する方向 |
0.4(0.7) |
−(−) |
−(2) |
−(1) |
2(−) |
現在もいないが、今後も採用しない方向 |
5.2(5.5) |
−(2) |
6(8) |
5(3) |
10(10) |
(注) ( )内の数字は、平成12年の調査結果を示す。
イ 産業別
次に産業別についてみると、それぞれの業種によって非常用雇用者の雇用状況の差異が明らかになっている。「増やした」とする産業は、「運輸・通信業」が67%、「金融・保険業、不動産業」及び「卸売・小売業、飲食店」ではそれぞれ48%、44%と5割前後の割合であったのに対して、「減らした」と回答した企業の割合は「運輸・通信業」及び「金融・保険業、不動産業」ではともに無で、「卸売・小売業、飲食店」では10%となっており、これらの産業では非常用雇用者の活用に力を入れていることがうかがわれる。その他、回答者数の多い「製造業」については、「増やした」とする企業が24%(昨年23%)、「減らした」企業が26%(同23%)と昨年とほぼ同様の結果であった。「農林漁業、鉱業、建設業」及び「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」では「減らした」とする企業の割合が10ポイント前後増えるなど、非常用雇用者の雇用情勢も厳しい状況となっている。
第6表 非常用雇用者の過去1年間の増減状況及び今後の増減方向
[2]産業別
項目\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製 造 業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サ−ビス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
過去1年間 |
回答企業数 |
271(288)社 |
29(30)社 |
144(155)社 |
18(16)社 |
9(12)社 |
48(44)社 |
23(31)社 |
増やした |
28.8(29.9)% |
10(17)% |
24(23)% |
17(12)% |
67(33)% |
44(50)% |
48(55)% |
おおむね変わらない |
43.9(45.1) |
38(37) |
46(51) |
39(50) |
33(50) |
42(39) |
52(33) |
減らした |
21.8(18.8) |
35(26) |
26(23) |
33(19) |
−(17) |
10(7) |
−(6) |
1年前はいたが現在はいない |
−(0.3) |
−(3) |
−(−) |
−(−) |
−(−) |
−(−) |
−(−) |
もとからいない |
5.5(5.9) |
17(17) |
4(3) |
11(19) |
−(−) |
4(4) |
−(6) |
今後の方向 |
回答企業数 |
269(290)社 |
29(31)社 |
143(155)社 |
18(16)社 |
9(12)社 |
47(45)社 |
23(31)社 |
増やす方向 |
26.0(29.3)% |
3(10)% |
22(23)% |
11(25)% |
67(42)% |
45(56)% |
39(42)% |
変わらない方向 |
41.3(48.3) |
31(45) |
42(55) |
39(38) |
33(50) |
42(31) |
52(46) |
圧縮必要 |
25.3(15.5) |
42(26) |
31(18) |
28(19) |
−(−) |
11(7) |
9(6) |
なくす方向 |
1.8(0.7) |
3(−) |
1(1) |
11(−) |
−(8) |
−(2) |
−(−) |
現在はいないが採用する方向 |
0.4(0.7) |
−(3) |
1(−) |
−(6) |
−(−) |
−(−) |
−(−) |
現在もいないが、今後も採用しない方向 |
5.2(5.5) |
21(16) |
3(3) |
11(12) |
−(−) |
2(.4) |
−(6) |
(注) ( )内の数字は、平成12年の調査結果を示す。
(2) 非常用雇用者の今後の増減方向〔第4〜6表参照〕
近年、非常用雇用者の雇用はリストラ等によって削減した常用雇用者の補充として、又は人件費の節減の一環として、その雇用は増加してきたが(前記のとおり本調査は回答企業数の割合を用いた数値調査ではあるが)、必ずしも年を追うごとに進んできているものではなく、一進一退の雇用情勢であるようである。そこで本年も昨年に引き続き、今後の非常用雇用者の雇用の動向について調査した。
全体としては、過去1年間の増減状況と同様の傾向となっており、今後「増やす方向」とする企業の割合は26.0%で昨年の29.3%に比し3.3ポイント減少しており、一昨年の26,7%と比べても僅かながら減少している。一方、「圧縮必要」とする企業の割合は25.3%で昨年の15.5%に比し9.8ポイントの大幅な増加となっており、一昨年の22.9%からみても2.4ポイントの増加となっている。また、今後非常用雇用者を「なくす方向」とする企業の割合が1.8%と一昨年の無、昨年の0.7%と比べ僅かずつではあるが、増加してきていることなど、非常用雇用者についても常用雇用者同様にその雇用情勢は厳しい見通しとなっている。
これらの状況を企業規模別及び産業別にみると、以下のとおりとなっている。
ア 企業規模別
各規模の企業とも今後の非常用雇用者の雇用について「圧縮必要」とする企業の割合は20%台であり、昨年と比べていずれも10ポイント前後の増加となっている。一方、「増やす方向」とする企業の割合は「千人未満」を除く規模の企業では27〜38%の間で昨年と同程度の割合で推移しており、非常用雇用者の雇用動向についても厳しい状況となってきている。特に「千人未満」の規模の企業ではより慎重な姿勢が感じられる。
イ 産業別
次にこれらを産業別についてみても、非常用雇用者の過去1年間の増減状況と同様に業種によって差異が出ている。つまり、今後非常用雇用者を「増やす方向」とする企業は「運輸・通信業」(67%)、「卸売・小売業、飲食店」(45%)及び「金融・保険業、不動産業」(39%)の3業種でその割合が他の産業と比べて大幅に高くなっている。同産業については、今後「圧縮必要」とする企業の割合が「運輸・通信業」では無、「卸売・小売業、飲食店」及び「金融・保険業、不動産業」では10%前後となっており、業務の性質上からか、過去1年間の雇用動向と同様に、今後も非常用雇用者の活用が拡大していくものと思われる。
その他の産業についてみると、「農林漁業、鉱業、建設業」については、「圧縮必要」が42%と昨年の26%に比べ16ポイントの増加、「製造業」についても31%と昨年の18%に比し13ポイント増加している。一方、「増やす方向」については、いずれも僅かながらの減少となっており、これらの産業については、今後の非常用雇用者の活用は消極的な模様となっている。
また、「電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業」については「増やす方向」が11%と昨年の25%に比し14ポイント減少し、「圧縮必要」については28%と昨年の19%に比し9ポイント増加するとともに、今後は「なくす方向」とする企業が11%(昨年は無)もあった。この産業については、常用雇用者の今後の増減方向において記したように、今後常用雇用者を「増やす方向」の企業の割合が28%と昨年の無から一気に3割程度に増加し、反面、「圧縮必要」とする企業は昨年の50%から本年は39%と11ポイント減少するなど、非常用雇用から常用雇用を主体とした経営方針に切替えているように見受けられる。